2019年9月20日(金)

肝はパターン分析、伝説的選手の「感性」AIに実装
AIと創るスポーツ新時代(2):LIGHTz 國井佳奈子

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2017/10/6 6:30
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スポーツイノベーターズオンライン

前回は、LIGHTzが開発するAI(人工知能)技術「ORINAS(オリナス)」を、スポーツ分野でどのように展開できるかについて紹介しました。

フェンシング界のレジェンドである太田雄貴氏。北京五輪のフルーレ個人で銀メダル、ロンドン五輪のフルーレ団体で銀メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロ五輪後に現役を引退=共同

フェンシング界のレジェンドである太田雄貴氏。北京五輪のフルーレ個人で銀メダル、ロンドン五輪のフルーレ団体で銀メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロ五輪後に現役を引退=共同

今回は、フェンシング界の世界的なレジェンドである太田雄貴元選手の試合解析の事例から、「熟練者の思考やまなざしを丁寧に紡ぎ上げる」というORINASのコンセプト実現の核となる"感性"に焦点を当てます。

LIGHTzでは、AIを活用して製造業やスポーツなど様々な分野のスペシャリストの知見を次世代に伝えていく事業に取り組んでいます。例えば、スポーツ選手のスキルを説明しようとすると、「ビュッ」「バーン」のような擬音語や、「目が覚めるようなスイング」など、曖昧な表現が多くなりがちです。そのため、スキルを継承しようにも選手の優れた技能は属人的になりやすく、選手個人の中に眠ってしまうことがほとんどでした。

では、この状況を打破し、いわゆるレジェンドと呼ばれる選手のプレーを若手選手が参考にできる形で残すためにはどうすればいいでしょうか。

■客観的事実のみでは感性伝わらず

最近は、センシングや画像解析などの技術進歩によって、選手の動きや試合経過のデータを取得し、プレーのすごさを客観的な数字で観られるテレビ中継も増えてきました。例えばバレーボールの中継では、その日のアタックの成功率や、スパイクの最高到達点などの情報を、ほぼリアルタイムに知ることができます。

こうした客観的事実の積み重ねと分析が、プレーを向上するために重要な役割を果たすことは間違いありません。ただ、客観的事実だけでは誰もがそれを"まね"できるようにならないことも確かです。プレーを支える技を後進に伝えるために大切なことはもう1つあります。それが、"感性"です。「人の主観的な感性を起点にすること」が、ORINASの最大の特徴になっています。

主観的な感性を取り入れることは、決して客観的なデータ分析に逆行するわけではありません。センサーなどで取得した多くのデータを統計的に分析し、客観的な特徴や事実を導き出す方法ではデータによる裏付けが得られる一方で、独自のノウハウを持つ選手や監督のような専門家の解釈とは異なる結論を導き出す場合もあります。客観的事実と感性の両輪を用意することで、より深くプレーを分析することが可能になるはずです。

そこでORINASでは、選手自身が感じている試合の流れや、試合中の特徴的なパターンに着目し、それをAIとして学習させることで選手の主観を可視化することに挑戦しています。例えばバレーボールの場合、相手チームのポジショニングをこのAIに入力すると、レジェンド選手ならどんなアタックを想定し、どこで守るべきと考えるかを出力します。

つまり、誰でも専門家の知見を合わせ持った解釈ができ、学びを得られるようになるのです。そうすることによって、熟練者の思考を次世代に伝えることに大きく貢献できると考えています。

■レジェンドの直感的思考と判断

では、ORINASに学習させる"感性"とは具体的に何を示すのでしょうか。感性という言葉のイメージは、人によって異なると思います。LIGHTzでは専門家の知見を体系化する上で重要な感性を、「彼らが絶対に外せない大一番で技を決めてくる、直感的な気づきと判断」と定義しています。

これはスポーツに限らず、どんな分野でも共通で、要所で的確な判断を下し、成果を積み上げてきた人がその道のレジェンドと呼ばれる存在ということでしょう。重要な場面で、何が解決のポイントだと気づき、判断し、動いたのか。この個人によって異なる直感的な思考や判断を「感性」と表現しています。

選手の感性がスポーツにおいて重要な役割を果たす。このことに私たちが気づき、スポーツビジネスにAIで参入するきっかけとなったのが、フェンシングの太田雄貴元選手との出会いです。私たちは2015年12月から、日本スポーツアナリスト協会の要請の下、リオデ五輪を前にした太田選手(当時)の試合を分析しました。

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