元代表エース 北の大地に君臨 バスケ折茂武彦(上)
レバンガ北海道代表兼選手

2017/4/29 6:30
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元日本代表のエース。46歳にして現役。その経歴からサッカーの三浦知良になぞらえ「バスケットボール界のカズ」と呼ばれることもある。さぞ日ごろから自己管理や節制を徹底しているのでは、と早合点すると肩すかしを食らう。

昨秋には日本人初の国内リーグ9000得点をマークした=共同

昨秋には日本人初の国内リーグ9000得点をマークした=共同

衰え感じつつ「まだ戦える」

折茂武彦は次々と無頓着な言葉を放つ。「ストレッチなんかしない」「個人練習はしない」「オフは一切、体を動かさない」。昨秋、日本人初の国内リーグ9千得点を達成し、今季もBリーグ1部のレバンガ北海道で全55試合に出場。シュートの精度の高さを誇るベテランは、自分の内なる声に忠実に生きてきた自負がある。シーズン中にシュート練習をしないのは「試合のための練習でないと意味がないから」。

2カ月のオフにジョギング一つせず、チーム始動後の走り込みで塗炭の苦しみを味わうのが恒例。「つらいのが分かっていて休んじゃう」のにも事情がある。「シーズンが終わると体も疲れるけど、勝たなければ、結果を残さなければ、というのにもっと疲れる」

バスケ界の誰より重圧を感じてきた。日大卒業後から14年プレーしたトヨタ自動車では不動のエース。「チームのオプションの1位だった。まず折茂がどう動いてというところからチームを作ることが多かった」

出場時間が減った37歳。新天地のレラカムイ北海道(現レバンガ)に移ると、再び若いプロクラブの屋台骨に。「自分がやらないと絶対勝てないというのが強かった。すごいのを背負っちゃって、毎日すごい重たくて。勝ち負けにとらわれすぎて、周りのことを考えられないこともあった」

中学時代にコートに足を踏み入れてから「バスケを楽しいと思ったことは一度もない」とまで言う。球を蹴る喜びを今も全身で発散するカズとは正反対だ。求道者のような競技人生をいつまで続けるのか。「やめるタイミングを完全に失ったのは事実」と話す。

40歳になった頃、衰えを感じた。「若い時は頭で考えた瞬間に(コート内の)いたい場所にいられる。今はコンマ何秒よりかなり大きなずれがある」。その落差を埋めるべく、全体練習では若手と同じだけ走り、脂肪をつけぬため1日1食で過ごすことも増えた。今季は長年の流儀を少し変え、関節の可動域を伸ばす練習も。体と頭の歯車が再びかみ合い、「全盛期よりパフォーマンスは完全に落ちているけど、まだ戦える」と実感する。

「だから本当に引退を考える時は、もう勝負の世界にいたくないというのが先に来るのかなって」。世界でも珍しいクラブ代表との兼務という重責の中でも、その気配はまだ感じない。

発足1年目のBリーグが草創期のJリーグと比べてやや足りないものが1つ。長らく世界で勝てないためか、日本の男子バスケの選手は総じて淡泊との指摘は多い。折茂は違う。25年前にカズらが発していた野性的な匂い。そこは折茂とカズとのもう1つの共通点かもしれない。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊4月24日掲載〕

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