自販機バトル キリン抜け出すか

2017/4/21 8:46
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キリンビバレッジは今月、無料対話アプリのLINEを使っている消費者に、同社の自販機が近くにあることを自動で知らせるサービスを始めた。割引ポイントもつける。業界で初めて有力プラットフォームと連携し、コンビニエンスストアより1本あたりの利益が大きい自販機事業をテコ入れする。清涼飲料メーカーのシェア争いが一層激しくなる。

キリンビバレッジの自販機運営子会社、キリンビバレッジバリューベンダー(東京・中野、岩田実社長)は13日、スマートフォン(スマホ)のLINEをかざすとポイントがたまるサービス「タピネス」を始めた。

LINEアプリを起動した状態でタッチすれば接続され、ポイントサービスを利用できる

LINEアプリを起動した状態でタッチすれば接続され、ポイントサービスを利用できる

1本買うと1ポイントがLINEのシステムの中にたまる。15ポイントためると1本無料で買える。キリンビバ全体の自販機27万台のうち、同社の系列運営者が持つ11万台のなかの2万台で2018年4月までにポイントサービスが利用可能になる。

自販機が近くにあると知らせる「LINEビーコン」を活用している。

自販機に内蔵されたビーコンは短距離無線通信のブルートゥースを使い、近くでLINEを立ち上げている人にみずから情報を発信する。

LINEを使っている最中に、画面の上部に「近くにキリンの自販機がありますよ」と表示する。ビーコンが反応する範囲は約10メートルで、消費者が周囲を見渡せば、自販機が視野に入るだろう。

LINEは6600万人のユーザーがいる。こうした有力プラットフォームサービスと結びついた自販機のポイント戦略はまだ現れていない。

キリンビバレッジバリューベンダーの岩田社長は似たサービスはあると話しつつ、一線を画していると説明する。

プラットフォームとの連携という点で似ている誘客策は、自販機台数16万台の伊藤園と位置情報ゲーム「ポケモンGO」との連携。1800台の自販機がゲームのアイテムをもらえたり他のプレーヤーと戦ったりできる場所になった。だがポイントサービスはない。

ポイントサービス開始にあたり、自販機98万台で首位のコカ・コーラを意識した。15本買うと1本無料の交換割合はコカの自社アプリ「コーク オン」と同じだ。

だがコカの場合、専用アプリをスマホに入れる必要がある。キリンビバはLINEのアプリが立ち上がっていればよい。

岩田氏は清涼飲料販売における自販機の立場は苦しいと言う。「自販機の数はここ20年ほぼ横ばいだが、コンビニエンスストアは6割増えた」

今回のLINEとの協業は、潜在的な顧客基盤を一気に広げた。岩田社長は自動で膨大なLINEユーザーを誘えることについて「この気楽さは画期的」と話す。

キリンビバは16年にLINEと協業を始めていたが、飲料を買うとLINEスタンプがスマホに送られてくるものだった。利用できるのは数十台しかなかった。

LINEは16年からビーコンを使ったサービスに力を入れた。阪急百貨店では化粧品売り場にボタン型ビーコンを置き、押すとLINEに化粧品情報などが示される。ただ、今回のようにLINEアプリにポイントがたまるサービスは初めて。LINEは「企業の要望に合わせて技術を活用する」と説明している。

清涼飲料のキリンビバはキリングループ内で低収益とみられていた。15年12月期の営業利益率は1.5%だった。

リニューアルした「生茶」のヒットで16年12月期に4.5%まで高まったときには社内に驚きの声があがった。16~18年の中期経営計画で、最終年度に3%を目標としていたからだ。

だが、キリンホールディングスの磯崎功典社長は「もっと高められる」と話す。コンビニなど店売りよりも価格の安定した自販機の稼働率引き上げに期待をかける。

伸びない自販機市場のシェア争いのなかで、強力なネットワークを手にしたキリンビバ。コカ・コーラ、47万台で2位のサントリー食品インターナショナル、そのあとに続くアサヒ飲料や伊藤園とのサービス競争が激しくなるのは間違いない。

(企業報道部 朝田賢治)

[日経産業新聞4月24日付]

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