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「代打・村田」を考える 監督がとるべき大人の対応

巨人の開幕オーダーを見て「おや?」と思った人は多かったのではないか。不動の三塁手だった村田修一の名がなく、代わって「5番・三塁」に入ったのは今季加入した元楽天のケーシー・マギー。昨季25本塁打、81打点でチーム2冠、三塁手でベストナインにも輝いた村田がスターティングメンバーから外れた事実に、改めてプロの世界の厳しさを見る思いだった。

代打で本塁打を放つ巨人・村田=共同

4月1日、対中日2回戦の解説で東京ドームを訪れた私は「心中いかばかりか」と思い、試合前に村田をつかまえて話をした。「気持ちは大丈夫か」と尋ねると「僕も大人ですから。大人の対応でやりますよ」。沈んだ表情ではなかったので、とりあえずは安心した。

ベテランとの相互理解は?

日本代表のコーチを務めた2002年の日本・台湾交流大会でメンバー入りしていたのが、当時日大の村田だった。あのとき20歳そこそこだった若者がもう36歳。本当に時の流れは早い。

村田は昨季、3割2厘と打率も合格点の成績を残しているが、それでも開幕戦の先発メンバーに入ることができない。もし私が現役時代に村田の立場に立ったとしたら、はたして耐えられるだろうかと考えてしまった。

開幕カードということで慌ただしく、高橋由伸監督にじっくり話を聞けなかったので、代わりに今季の起用方針について江藤智打撃コーチに聞いてみた。開幕戦は三塁がマギー、一塁には阿部慎之助が入ったが、江藤コーチいわく「阿部も全試合はもたないし、マギーもそうでしょう。そういう意味では、村田との3人でうまくローテーションしながら一塁と三塁を守ってもらう、ということじゃないでしょうか」。

村田はその後も代打要員となっているが、現役時代の終盤を暗黒時代の阪神で過ごした私からすると、たとえ代打でも毎年のように優勝を争うチームにいられる幸せはあると思う。巨人は開幕5連勝と絶好のスタートを切ったから、ある意味納得できている部分もあったのではないか。高い給料を払ってマギーに来てもらった手前、開幕からスタメンで使わなければ、という心理が高橋監督に働いたことは容易に想像できる。

高橋監督(左奥)ら首脳陣はベテランと互いに理解できているか=共同

問題は負けが込んできたり、阿部やマギーが打てなくなったりしたときで、村田とすれば「何で俺をスタメンで使わないんだ」となる。そこで大事になるのが、監督やコーチが日ごろからベテランをリスペクトしてその考えに耳を傾け、相互理解ができているかどうか。首脳陣は、選手から不平や不満が出るのは当たり前と思っていなければいけない。3割を打ってベストナインまで取った選手を外すのだから、なおのことその覚悟が要る。

選手起用の意図、自ら伝えて

この先、巨人が不振でがたがたっとなったときに、3人のうち誰かが不平を言い出すかもしれない。そのときこそ高橋監督の腕の見せどころ。選手起用の意図を、コーチから伝えさせるのでなく、自ら説明するようにしてほしい。

よく「監督が使ってくれない」とすねた態度をとる選手がいるが、すねるのもやる気の表れだと私は考える。選手は試合に出たくて仕方がないのだから。そういう選手を「あいつは生意気な態度をとったからチームの方針に沿わない」とメンバーから外すようなら、あまりに短絡的だ。

最大70人の支配下登録選手の誰もが貴重な戦力で、特に1軍選手は1人でも欠けると痛手になる。そういう選手を「生意気だ」と突き放すのではなく、いかにやる気を持ってもらうかを首脳陣は考えた方がいい。監督やコーチとは決して偉い職業なのではなく、選手以上に「大人の対応」が求められるのだ。

中日の新人京田は楽しみな若手=共同

中日は引き分けを挟んで開幕5連敗と出だしからつまずいたものの、楽しみな若手が現れた。日大からドラフト2位で入団した遊撃手の京田陽太だ。チームでは1999年の福留孝介(現阪神)以来という開幕の遊撃スタメンの座を射止めたというので注目したところ、守備範囲が広くて肩も強く、確かに魅力がある。打撃も磨けば光るものがあり、これならなかなか結果が出なくても、我慢して使っていって間違いではないと思った。

どのチームにも類いまれなる原石といえる選手、多少の失敗には目をつぶってでも使い続けたくなる選手がいる。一昔前では西武の秋山幸二がそうだった。米国の教育リーグに武者修行に出した秋山を広岡達朗監督が次代のスターと見初め、レギュラー三塁手に抜てきしたのは85年。どれほどエラーをしようが使い続けた結果、秋山は前年までのプロ4年間でわずか4本だった本塁打を、その年だけで40本放ってみせた。

「こいつを使うのはしょうがないな」と同僚も納得させられる選手が京田であり、阪神でいえば北條史也がそれに当たる。昨季、まだできあがっていないスイングながら2割7分3厘をマークした事実が北條の打撃センスを物語る。今季はスイングが格段によくなり、一年を通じて出たらどれだけの数字を残すのかと楽しみにしていたら、早くも開幕2戦目で代打を出された。開幕戦と合わせて8打数無安打と結果が出ていなかったことが首脳陣とすればネックになったのか。

阪神の北條は今季、スイングが格段によくなった=共同

キャンプから鳥谷敬とポジション争いを繰り広げた北條に首脳陣が遊撃の開幕スタメンの座を与えたことは「今年のショートは北條でいく」との意思表明のはず。それが2戦目で途中交代とは、少々しびれが切れるのが早いのではないか。昨季、金本知憲監督は日々の調子に応じて選手を取っかえ引っかえし、スタメンは実に126通りに上ったという。早々と北條に代打を出したところを見ると、今年もオーダーをころころ変えることになりはしまいかと、少々心配になる。

選手の力量見極め、辛抱できるか

不振の時期は誰にも訪れる。そこで監督が考えるべきは、その選手が年間を通じてどれだけの成績を残せるのかということ。その見立てがしっかりしていれば、少々打てなくなったくらいではスタメンから外さないという選手がチームに5~6人はいるもの。彼らを使い続ければ、おのずとスタメンも固定されていくはずだ。

「今は不振でも、そのうち復調するはず」と監督が我慢して使っていれば選手は意気に感じ、信頼関係が厚くもなる。この監督は誰を辛抱強く起用しているか、選手の見立てはしっかりしているか。ファンの方々には、観戦の幅を広げる意味でもそうした視点を持つことをお勧めしたい。

(野球評論家)

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