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浅田真央の幸せな引退と元アスリートのその後
編集委員 北川和徳

(2/2ページ)
2017/4/14 6:30
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浅田さんが引退を表明した翌日、アスリートのセカンドキャリアを考えるセミナーに顔を出した。アスリートのキャリア支援事業を展開する山愛(本社・東京)やパソナ(同)の担当者や元アスリートたちが登壇し、現状や課題を説明してくれた。

「何も悔いはない」と言って引退できるアスリートはほとんどいない=共同

「何も悔いはない」と言って引退できるアスリートはほとんどいない=共同

実際には浅田さんのように「悔いはない」と心から言い切って引退できるアスリートなどほとんどいない。突然の戦力外通告や契約の打ち切り。競技生活をまっとうできなくなって引退に追い込まれる。たくさんの転職希望アスリートの相談を受けている山愛の藤井頼子氏は、まず夢を絶たれた喪失感を癒やし、それから次のステップに進むためのキャリアトランジションへのケアが重要で、そこをクリアして初めて就職に向けてのサポートに入れるのだという。

パソナでアスリートサポート業務を担当する菊池康平氏は、浅田さんの会見を見て「スケートをやりきったので生まれ変わったらスケート以外のことをやりたい、と言えるのはすごいです」とメールをくれた。

引退後を意識して

20年五輪・パラリンピックに向けてスポーツ界は景気のいい話題があふれているが、アスリートのセカンドキャリアに関しては深刻さが増している。プロ野球だけでなく、今やJリーグは3部まで拡大。バスケットボールのBリーグもスタートした。プロ選手は増える一方だ。多くは無名で、引退すれば広告価値などない元スポーツ選手。プロ化が進むということは、引退後に所属企業に残る道がなくなるということでもある。

では、元アスリートであるということは、転職に関して不利なのか。スポーツだけをやってきたアスリートは、狭い世界しか知らない、基礎的な知識が不足している、などという見方も根強い。あくまで私見だが、それはどんな分野でも共通する問題ではないかと思う。スポーツに限らず、勉強ばかり、芸術ばかり、遊んでばかり、といった偏りが、狭い世界の常識にとらわれることにつながることは否定できない。

一方で、スポーツに打ち込むことで、コミュニケーションやセルフコントロール、課題への処理対応などの各能力を鍛えることができるという。浅田さんの会見を見て、あらためてその価値を実感した。正直なところ、14歳の頃の彼女が、こんな立派な対応のできる大人に成長するとは想像できなかった。もちろん、彼女の競技生活との向き合い方は、普通の元アスリートと比較できるものではないのだが……。

取材をしていると、一般的に豊富な海外経験を持つアスリートほど、柔軟な思考を持ち、視野の広い考え方ができる傾向があると感じる。セミナーでは元アスリートから「日本ではグラウンドやコートで競技以外のことを考えるなという指導が当たり前になっている」という意見が相次いだ。バスケットボール女子の元日本代表、中川聴乃氏は「引退後を考えると、競技の枠を超えて人と交流して幅広い視野を持つことが大切です」と訴える。ただ、日本のチームスポーツではそうした行動が指導者から非難される現実もあるという。

アスリートのセカンドキャリアに関しては、スポーツ庁や日本スポーツ振興センター(JSC)、日本オリンピック委員会(JOC)なども重要な課題として、さまざまな取り組みを展開している。

ただ、最も大切なのは日本のスポーツ界の現場の意識や考え方が変わることなのだと思う。

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