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街中の原子炉が再稼働 近大、逆風下で人材育成(関西サイエンスマガジン)

国内で研究用の原子炉を持つ大学は関西にしかない。近畿大学と京都大学だ。このうち近大の原子炉が4月12日、3年ぶりに再稼働した。東京電力の福島第1原子力発電所の事故で2013年に新規制基準が施行されてから、研究用の原子炉が再稼働するのは初めて。原子力産業に逆風が吹くなか、人材育成につながると期待される。

「5年前に学長に就任したとき、なぜ原子炉が街のど真ん中にあるのか疑問だった」。近大の塩崎均学長は同日開いた記者会見の冒頭、こんな感想を漏らした。塩崎学長は医学部出身で、原子炉がある大阪府東大阪市の近大原子力研究所とはキャンパスが異なる。同研究所は近大で在校生が最も多く、周囲に住宅が密集する東大阪キャンパスにありながら、大学内でもあまり知られていない存在だ。

「14時46分、原子炉起動しました」。12日午後、原子炉の施設内に女子学生の声が響いた。3年ぶりに始まった学生実習で、核燃料が連続的に反応する「臨界」を起こすため、制御棒が引き抜かれた瞬間だ。

近大の原子炉は国内初の大学原子炉として1961年に運転を始めた。高さは約2メートルで直径は約4メートル。核燃料には商業用原子炉と同じウラン235を使うが、出力は最大1ワットと豆電球1個分くらい。炉心の周囲は砂と水が入った巨大な構造物で覆われ、ウランから発生する中性子などを遮る。100万キロワット級の商業用原子炉と異なり、冷却機能が万が一失われても外部へ放射性物質が漏れる恐れは全くない。

12日の学生実習には8人の近大学生らが参加した。原子炉の運転を体験した理工学部の島津美宙さんは「すごくワクワクして緊張しました」と笑顔を見せた。今後はがんの治療に使う計測技術の研究開発を進めるという。

近大は国内で最初に再稼働した研究用原子炉を有効利用するため、九州大学や名古屋大学、福井大学などからも学生の実習を受け入れる予定だ。近大原子力研究所の伊藤哲夫所長は「本当の原子炉を動かして学んだ経験が原子力の安全を維持する教育につながる」と話す。

京大も大阪府熊取町にある原子炉を早ければ5月にも再稼働する。福島原発の事故後、原子力を担う人材不足は厳しさを増している。原子力は発電だけでなく、医療など応用分野は幅広い。関西にある2つの大学原子炉が、日本の原子力の将来を占うといっても過言ではない。

(文・竹下敦宣、写真・淡嶋健人)

 関西にはけいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)や神戸医療産業都市、京都大学や大阪大学などのほか、大手企業の研究機関が集積する。関西の先端技術や研究を、独自の視点で切り取った写真と文章で毎月伝える。

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