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クラウド・車載機器の連携が生む「新・企業相関図」

自動運転でグローバル開発競争(下):自動運転が作る未来(12)

日経BPクリーンテック研究所

自動運転車の開発において、新たな二つのトレンドが生まれている。一つは、「完全自動運転時代」を見越した開発テーマの推進。もう一つは、常時ネットに接続している「コネクテッドカー」ならではの特性を活用した技術の適用である。

今回は日経BP総研 クリーンテック研究所が2017年3月に発行した『世界自動運転プロジェクト総覧(増補改訂版)』のデータを基に、コネクテッド技術で特に注目されている「Cloud-to-Car」を取り巻く業界動向を解説する。

車両センサー情報収集で提携進む

Cloud-to-Carは、自動運転車向けにクラウドと車載機器を連携させる技術である。Cloud-to-Carの恩恵を受ける技術領域としては人工知能(AI)と地図/道路情報収集がある。どちらも個々の車両とクラウドでの学習/収集を相互に活用しあうことで、全体の学習/収集効果を高めることができる。

Cloud-to-Carの実現で中心的な動きをしているプレーヤーは大きく2種類ある。第一はクラウド地図をベースに道路・交通情報を提供する位置情報ベンダー。ドイツHEREとオランダTomTomが、その代表だ。

第二はクラウドとの連携機能を備える車載機器を提供するメーカー。こちらの代表は米NVIDIA(エヌビディア)、イスラエルMobileye(モービルアイ)、米Intel(インテル)である。

最近目立っているのは、道路情報収集の領域での企業提携だ。中でも車両に付けたセンサーが取得した各種情報を基に道路・交通情報を生成し、それをリアルタイムにクラウドに送信してビッグデータ化するための提携活動が本格化している。車線規制や交通規制、速度制限などの情報はリアルタイム性が求められることに加えて、ビッグデータ解析の信頼性を高めるためには大量のデータが必要となる。こうしたことから、自動運転向けのクラウド地図を作る際は、できるだけ多くの走行車両からリアルタイムに交通・道路情報を取り込むことが重要になる。

各社がCloud-to-Car関連の企業提携に積極的なのは、自らが主体的にデータ収集できる車両を増やしたいと考えることに加えて、他社が収集したデータも自社のデータと統合して扱えるような環境を作ることに前向きであるからだ。

例えばMobileyeは同社が開発した車載機器を用いたCloud-to-Car技術「REM」の普及を推進しており、ドイツVolkswagen、米GM、日産自動車、米Lucid Motors、米NIO、ドイツBMWなど、さまざまな自動車メーカーと個別に提携してREM技術の浸透と収集データの拡大を図っている。自動車メーカー側にしても、Mobileyeの自動運転支援技術を入手でき、Mobileyeが構築するクラウド道路情報「Roadbook」が活用しやすくなるというメリットがある。

MobileyeはHEREとも提携を交わしており、HEREの3次元デジタル地図である「HERE HD Live Map」とRoadbookの統合をはじめとする協調作業を始めている。Mobileyeがどのような業種のどの企業と協力関係にあるのかを示す「ポジションチャート」(図1)を見ると、自動車メーカー、自動車部品サプライヤー、位置情報ベンダーなど、さまざまな事業領域の企業と提携を進めていることがわかる。

このように、Cloud-to-Carを用いたクラウド地図/道路情報の整備は、情報を囲い込んで競う領域ではなく、相互の情報を持ち寄って全体の情報精度を高める協調領域になりつつある。

台風の目はNVIDIA、Intel

クラウド領域での情報収集・共有活動は協調領域となりつつあるものの、その実現を推進する同業のプレーヤー相互の競争関係は激しさを増している。特に自動運転技術の心臓となる車載コンピューター分野での動きは急だ。

画像認識技術をベースとする自動運転支援で実績を持つMobileyeが多くの自動車メーカーとの協業をベースにリードしていた感があったが、2016年後半以降、多くの自動車関連企業と自動運転開発で共同開発プロジェクトを立ち上げたNVIDIAが猛追している。

NVIDIAは中国Baidu、TomTom、HERE、ゼンリンなどの地図ベンダーとはCloud-to-Car関連の技術提携を交わし、自動車メーカーのドイツAudi、ドイツDaimler、トヨタ自動車とはAI技術を活用した自動運転車の開発で個別に提携している。

また、自動車部品サプライヤーのドイツZF、ドイツBosch、自動車メーカーのスウェーデンVolvo Cars、Tesla、トラックメーカーの米PACCARなどとは自動運転車向け車載コンピューターを提供するなどの協力関係を結んでいる。NVIDIAのポジションチャート(図2)を見ると、Mobileye同様、自動車メーカーを中心にさまざまな事業領域の企業と提携していることがわかる。

そして、ここに来て存在感を高めているのがIntelだ。Intelが自動運転開発に名乗りを上げたのは2016年7月。BMW、Mobileyeと共同で自動運転開発に参加することを表明した。2017年1月には、自動運転車の開発促進を目的とする新たな製品ブランド「Intel GO」を発表。Intelは、「自動運転車は一日当たり4テラバイトものデータを処理する"動くデータセンター"のようなIoT(モノのインターネット)機器である」と見ており、この実現に向けてCloud-to-Car技術やコンピューティングパワーを提供する考えだ。

Intelは技術企業への投資も活発だ(図3)。2016年8月にディープラーニング(深層学習)に最適化したソフトウエアとハードウエアを開発する米Nervana Systemsを、2016年9月にはディープラーニングやコンピュータービジョン向けのSoC(System on a Chip)を開発する米Movidiusを買収。2016年10月には投資子会社であるIntel Capitalがイメージセンサーの新興企業であるフランスChronocamに出資し、2017年1月にはHEREの株式の15%を取得した。

世界を驚かせたのは2017年3月のMobileye買収だ。153億ドルという金額だけでなく、両企業の提携企業が自動運転プロジェクトの推進という観点においてうまく相互補完されていることが目を引く(図4)。自社の強みと他社の強みを見極め、惜しみない投資をエンジンに、モビリティとIoTという巨大市場に船出した格好だ。

自動運転に取り組む企業のポジションチャートを見ていると、これまで自動車産業とは距離のあった事業領域の企業との協業・提携が進んでいることがわかる。Intel、NVIDIAのほかにも、米IBM、米Microsoft、米Qualcommなどの名前を頻繁に見かけるようになった。

自動運転が作る未来は、自動車産業とモビリティ産業だけでなく、IT/クラウド企業はもちろん、インターネットに関連するすべての企業に新たな事業機会と新たな競合/協業企業、あるいはフレネミー(友人と敵を組み合わせた造語)を用意することになりそうだ。

(日経BP総研 クリーンテック研究所 林哲史)

[参考]日経BP総研 クリーンテック研究所は2017年3月31日に「世界自動運転プロジェクト総覧【増補改訂版】」を発行。世界で先行する5つの共同プロジェクト、50のキープレーヤーを徹底調査した。詳細はhttp://nkbp.jp/cti1612d

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