2018年12月17日(月)

アイデアは若手に任せろ 日本車初エアバッグ開発者
CTO30会議(10)

(2/2ページ)
2017/5/2 6:30
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――本質を捉えること以外にイノベーションに必要なことは何でしょうか。

小林 コンセプトです。プロジェクトリーダーを務めた人たちは「良いコンセプトを作れれば、必ず良い商品・技術ができる」と口を揃えます。良いコンセプトは物事の「違い」を生み出します。「差」は一瞬で追いつかれてしまいますが、「違い」は簡単に真似することはできません。

――イノベーションの種をどうすれば見つけられるでしょうか。

写真2 熟慮することの大切さを語る小林氏(撮影:新関雅士)

写真2 熟慮することの大切さを語る小林氏(撮影:新関雅士)

小林 まず、できない理由を考えることをやめることが大切です。「あんなもの売れない」「ここが問題だ」と言う人に限ってイノベーションは起こせない。宗一郎氏も、「なぜダメかを考える暇があったら、どうやって解決するかを考えろ」と、よく怒鳴っていたものです。できない理由が頭に浮かんだら、それを解決する方向へと切り替えなければいけません。

では、その種をどうやって見つけるか。答えは、技術ではなく、どんな"こと"をしたら人々に喜んでもらえるかを突き詰めて考えることです。宗一郎氏は「研究所は技術の研究をするところではない。人間の研究をするところだ」と言ってました。人間の心を研究し、人間が求める価値を見つけることが大切なわけです。価値が見つかったら、それをどのように達成するかを考えます。技術はそのための手段でしかありません。

企業の存在意義は新しい価値を生み出して、世の中の人々に喜んでもらうこと。こう言うと、誰もが同意します。しかし、「では10~20年先の主要な時代価値を3つ挙げろ」と質問すると、大抵の人は答えられません。それは、真剣に考え、議論したことがないからです。潜在的に求められている価値を見つけるためには、本質をつかむために、とことん議論するしかありません。

ホンダには、とことん議論する手法として「ワイガヤ」があります。3日3晩、徹底して話し合う場です。これを繰り返して、本質を見つけ出していくわけです。私がいた頃は1人が平均して年4回、参加しました。20回参加して白帯、議論をリードする黒帯には40回以上参加する必要があると言われています。

価値を見つけるために、もう一つ大切な考え方があります。「三現主義」です。現場へ足を運び、現物を見て、現実を知る。そこから、何が大切なのか、何があればみんなが喜ぶのかといったことを見い出すわけです。

例えば、今、世の中の課題は何かと尋ねると、多くの人が高齢化と答えるでしょう。だとすれば、高齢者が望むものが、これからの時代の新しい価値になり得ます。にもかかわらず、「おばあちゃんの原宿」と言われる巣鴨の地蔵通商店街(とげぬき地蔵)に行ったことがある人は必ずしも多くありません。行ったことがあっても、1度や2度が大半。それでは高齢者の望むものは分かりません。何度も繰り返し訪ねて、腰を据えて観察すべきです。現場に足を運んで初めて気がつくことは多いのです。

創造はねつ造の一歩手前です。「確かにそういうことあるよな」といった暗黙知を見つけること、それが新しい価値のヒントになります。既に存在しているものでは創造とは言えません。かといって、まったく無いことを言ったらウソになります。「無いに近いけれど、あってもおかしくない」というところがポイントです。

――CTOはイノベーションを生み出すために、どういう役割を担えばいいですか。

小林 先ほども述べましたが、アイデアを出すのは若手に任せた方がいいのです。そのためにCTOは、若手がアイデアをどんどん出せるための環境を整えるべきです。出てくるアイデアのうち8~9割は、他愛のないものかもしれません。でも、それでもいいのです。今のことは若手にしか分からないのですから。

アイデアが出てきたら、CTO(最高技術責任者)がやるべきことは、その若手に本質的な質問を投げかけることです。若手が答えているときの態度(型)や目を見ることで、それがダイヤの原石なのかどうかを見分け、判断することがCTOの役割なのです。そして、若手が目を輝かせて3回言ってきたら、最後にはだまされてやることが重要です。

――最後に、イノベーションを起こすために最も必要なものは何ですか。

小林 これは誰に聞いても同じ答えが返ってきます。イノベーションを起こすために最も大切なものは"想い"です。やはり実現したいという担当者の想いが無ければ、イノベーションは実現しません。宗一郎氏の言葉を借りると、「失敗することを恐れるより、何もしないことを恐れろ」です。

(聞き手=日経BP総研 クリーンテック研究所 菊池珠夫)

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