2019年7月19日(金)

守・破・離への道(岡田武史)

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複合型スタジアムへどんどん膨らむ「妄想」

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2017/4/10 6:30
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風呂敷を広げるほど大変なのは資金調達。昔のように公的資金をどかんと入れてハコモノをつくれる時代ではない。計画の主体をどうするか、というのも悩ましい問題で、スポーツ振興くじ(toto)からの助成を受けるには株式会社ではダメらしい。助成を受けるためにスタジアム建設のためのNPOを組織することはできるが、NPOにすると今度は企業などから投資を受けて利益を還元することができなくなってしまう。あちらを立てればこちらが立たず、というか。

資金集めは大変だが、楽しさや喜びを感じる部分もある

資金集めは大変だが、楽しさや喜びを感じる部分もある

それで今は両方の「いいとこどり」ができないか、と考えている。メインスタンドとピッチはNPOを組織してtotoの助成金や寄付金の受け皿にして建設し、他の部分は企業などの投資を元手に建設するというような。

少しでも自分たちの足で立って…

資金集めは大変ではあるけれど、同時に楽しさとか喜びを感じる部分もある。映画づくりなどでクラウドファンディングの手法が採り入れられるようになったように、作り手の情熱と、つくるものに意義や価値を認めてくれる人がいれば、広範に出資者を募れる時代でもある。必死になってとんがったアイデアを出して実現可能な事業計画を練って世の中に示せば、そういうチャレンジに賛同してくれるところがあるのではないか。

東京オリンピック・パラリンピックも近づき、いろいろな場所でいろいろな省庁の官僚や政治家の人と話すことが増えたが、ある人が「岡田さんがやろうとしていることは公共そのものですね。公共とは政治や役所がやること、という概念を変える必要があるのかもしれませんね」といわれたことがある。

目指すところが認められているような気がする一方で、私は逆に日本のスポーツ界には「お金のことは口にするな」みたいな雰囲気が昔から連綿とあって、いまだにスポーツとビジネスを絡めて話すことに抵抗があるのを何とかする必要の方を感じてしまう。20年東京五輪の施設整備費を巡るごたごたも「オリンピックなんだから、いくらかかってもいいから公的資金を使って、施設をつくってくれて当たり前だろう」というようなスポーツ界の甘えの方をどうしても感じてしまうのだ。

剣道のように精神世界を充実させて自分を黙々と鍛えることは、それはそれで素晴らしいことだと思うけれど、スポーツならではの感動や夢のある世界を広範囲に届けたり、伝えたり、それにふさわしい舞台をしつらえようとしたりしら、おカネがかかるのは絶対に避けられないこと。そのおカネは口を開けて待っていても誰も持ってきてくれないことに、日本のスポーツ界もいい加減に気づいた方がいいのではないだろうか。

私自身は、政府が掲げた600兆円という国内総生産(GDP)達成のためにスポーツを産業化しなければ、と思っているわけではない。目的はあくまでも強いサッカークラブをつくり、クラブの理念に沿ってスポーツを通じて人づくり、街づくりに貢献することである。それを誰かにおんぶに抱っこでやるのではなくて、少しでも自分たちの足で立ってやれるようにしたいのである。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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