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守・破・離への道(岡田武史)

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複合型スタジアムへどんどん膨らむ「妄想」

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2017/4/10 6:30
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我々の計画の強みは複合型スタジアムを建てたいと思っている土地が、いわゆる「公園」ではないことだ。日本のあちこちにある多くのスタジアムは運動公園の中につくるために「公園法」に引っかかり、制約だらけの建物になってしまう。日本中、どこに行ってもスタジアムのつくり、取り巻く環境が似通っているのは公園法に縛られて「金太郎あめ」みたいになってしまうからだ。

それに比べたら、こちらの予定地はまったくのフリー。おかげでどんどん私の「妄想」も「こんなことがしたい」「あんなこともできるのではないか」と膨らんでしまう。

資金集めと集客という難問

難問は資金集めと集客だ。後者でいえば、人口16万人の今治市で毎試合、1万5千人のスタジアムを満員にできるのかどうか。東予の四国中央市、新居浜市、西条市を巻き込んでも人口は50万人弱程度。瀬戸内海を挟んで対岸の尾道市や三原市からも見にきてもらうくらいの戦略を立てないとコンスタントに満員にできないのではないかと心配している。

岡田さんはスタジアムを「スポーツ」や「健康」をテーマに交流人口を増やす拠点にしたらどうかと考える

岡田さんはスタジアムを「スポーツ」や「健康」をテーマに交流人口を増やす拠点にしたらどうかと考える

そのためにはチームが強いだけではダメで、イタリアの強豪ユベントスのように、スタジアムそのものに足を運びたくなる魅力を持たせる必要を感じている。ユベントスはただの陸上競技場からショッピングモールを併設した複合型のサッカー専用スタジアムに変えてから急激に集客と売り上げを伸ばした。100マイル(約160キロ)離れた遠来のお客さんの比率が10%から55%に急増したのは、試合を見るためだけの空間から試合の前後もスタジアム周辺にとどまり、家族や友人や仲間と半日ほど過ごせる空間につくり変えた効果だったとされる。

では、我々が目指す複合型のスタジアムはどんな価値を伴ったものなのか。協議会にはイオン関係者もいて、既にあるモールとうまく連携させるのは当然のこととして議論している。私にはさらに、試合のない日はスタジアムが閑散としているのは当たり前という日本の常識に挑戦したい気持ちがある。そのためにはスタジアムを「スポーツ」や「健康」をテーマに交流人口を増やす拠点にしたらどうかと思っている。

例えば、スタジアムの建屋に大学病院の診療所が入る。別の階にはトレーニングセンターやデータセンターや宿泊施設も設置。FC今治のスポンサーであるLDHと共同でエグザイルのダンス教室も開校する。どれもこれもまだ妄想の域を出ないのだが。

個人の健康状態をウエラブル端末でチェックする時代は既にきている。「朝食はこんなものを食べました」「昼食はこう」と申告すると「夜はこういうメニューにしてください」「食後にこういう運動をしてください」というアドバイスが端末を通じて送られてくる。そういう日々の自己管理とは別に、年に数回は湯治と、しまなみ海道のサイクリングやサッカー観戦などをセットにした健康診断をスタジアム内の医療施設で受けてもらう。そうやって絶えず人が出入りする場所にスタジアムをつくりこんでいく。

もちろん、サッカーの強さも大事。FC今治がJリーグでしっかり戦えるようになり、代表選手も出せるようになれば、日本だけでなくてアジア各地から指導者が今治のメソッドを学びにくる。選手も今治のユースでプレーしたいという子が全国から集まってくるかもしれない。ジュニアユースやユースの大会を開いて参加選手のホームステイ先に地元のおじいちゃんやおばあちゃんになってもらうようなこともできるかもしれない。

そういう交流の拠点に常にスタジアムがある。そういう街づくりが実現できたら「人口は少ないけれど妙に活気があるな」「妙に人の出入りが活発だな」と驚かれるような、にぎわいのある場所に変えていけるかもしれない。若者に「ここで暮らしてもいいかも」と思わせるような場所にできるかもしれない。

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