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野球道具への工夫が生む「プロの心構え」

練習拠点を新たに舞洲(大阪市此花区)に移してのシーズンが始まり、舞洲サブ球場のこけら落としとなった2軍公式戦にも勝利することができました。素晴らしい施設群に恵まれたこの環境をどのように自分たちでアレンジして、より使い勝手のよいものにしていくかが大事。そんなことに思考を巡らせていると、現在の2軍選手の恵まれた道具事情がふと気になりました。

舞洲サブ球場のこけら落としとなった2軍公式戦に勝利し、インタビューを受ける選手たち(3月25日)

新球場、室内練習場、選手寮が隣接した新拠点は敷地内を移動しやすく、広くなった室内練習場では同時に8人ほどが打撃練習をすることも可能になりました。「やってやろう」という気持ちをかき立てられます。

自分たちの色にどう染める?

ただ、どんなに完璧なものを造ってもらっても、人間には「もっとここをこうしたい」という願望が生まれてくるものです。例えば、新築の家でも、お気に入りの新車でも、使っていくうちに家具の配置を変えたり小物を買い足したりして、より自分好みになるように工夫するでしょう。濃密な練習ができる新しい拠点をどうやって自分たちの色に染めていくのか。それを考えるのが楽しみです。

与えられたものを、いかにしてよりよいものに変えていくか。あまりにも野球道具がそろいすぎた今の2軍の環境は、選手たちがこうした考えを養う妨げになっているのではないかと、少し疑問を感じています。

私がプロ入りした頃、2軍の選手たちはバットを自分で買っていました。お金がなくなって道具に困ることのないよう、購入資金の積み立てをしていたものです。

野球道具に携わる日本の職人さんは非常に優れた技術を持っていて、選手からのどんなリクエストにも応えてくれます。1軍でバリバリ活躍する一流選手たちがこうした職人さんの手掛けたバットやグラブを使い、ファンの喜ぶプレーを見せるのは素晴らしいことだと思います。ところが今は、2軍の選手でも道具は全て無償提供してもらえます。手型から作ったオーダーメードのグラブが届きますし、バットも工場に行って思い通りの形に削ってもらうことが可能。そうした待遇が2軍にまで浸透することは、道具に頼りすぎることにつながるのではないかと危惧しています。

米国、自分が道具に合わせる文化

舞洲の新拠点で選手の練習を見守る田口2軍監督(左から2人目)

私が8年間プレーした米国には、道具を自分に合わせてもらうのではなく、自分が道具に合わせていくという文化が根付いています。大リーグにいる選手でも、使っているのはグラブならば150~200ドルぐらいの市販品。当たり前のようにそういう環境で育ってきたので、彼らは与えられた道具をどんどん自己流にアレンジして、自分の体になじむようにつくり込んでいくわけです。

例えば、既製品のグラブのポケット部分を極端に浅くして、まるで板のように平らな面にしたものを使っている内野手もいました。片手では捕れないんじゃないかと思うような形状です。捕球するというよりも当てるという感じで、打球がポーンとグラブに当たったと思ったら、既にもう右手に球を持ち替えているのです。これも、どうしたら併殺を取れるだろうかと、自分なりに考えを突き詰めていった結果でしょう。

スパイクにしても同様です。足型を合わせる選手は、大リーグには今でもほとんどいないと思います。足の形にしっくり合うよう、既製品のひもの締め方や通し方を変えたり、かかとに当たって違和感のある部分の革を少し自分で切ったりして、動きやすいスパイクをつくり上げるのです。小指が当たって痛いからと、小さな穴を開けてしまう選手さえいます。

試合後に打撃練習をする選手たち。右後方は室内練習場

翻って今の日本球界は、欲しい物が何でもオーダーして手に入る時代で、ハングリーさに欠けているとも映ります。「弘法筆を選ばず」ではないですが、どんな道具が来ても「俺色に染めるぞ」というぐらいの気概が欲しいとも感じています。

下積み時代にこそ必要な習慣

野球道具を自分にフィットするようにつくり込んでいく過程で、おのずと道具に興味を持つようになります。野球人として、実はそこが一番大事なことではないでしょうか。私自身、現役時代はバットを握ったときにグリップがちょっと太いなと感じたら、自分で皮1枚ほどの厚さを削って、紙やすりで仕上げ、指にしっくり合うように整えていました。

自分のプレーを支え、苦しいときに助けてくれる商売道具を人に任せて頼りきりにするのではなく、自分で責任を持って体になじむようアレンジしていく。下積みの若い時分にそうした習慣を身につけることで、道具に対して強い感謝の心が生まれるでしょう。それが、野球でメシを食っていくうえで、まず求められる心構えだと思っています。

(オリックス・バファローズ2軍監督)

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