スマイルJの戦うFW アイスホッケー中村亜実(上)

2017/4/9 6:30
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アイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」で中村亜実(西武)はちょっと異色の存在だ。体格差をスピードとスタミナで補い、2大会連続の五輪出場を決めたチームにあって、このFWの任務は「相手ゴール前のバトル」。外国人DFと正面から渡り合う重労働を引き受けて、味方のシュートコースをつくったり、混戦からパックを奪って得点を狙ったり。ゴールをこじ開けるために、地味でつらい脇役に徹する。

2月の平昌五輪最終予選では2ゴールを決める活躍を見せた(奧の23番が中村)=共同

2月の平昌五輪最終予選では2ゴールを決める活躍を見せた(奧の23番が中村)=共同

162センチ、64キロは大柄とはいえないのに「ほかのFWより体重はあるので」と朗らかに話す。相手反則で数的優位となるパワープレーになると、このウイングはGKの前に立つ。GKの視界をふさぐ邪魔者は、相手の標的にもなる。「手や肘がとんでくる。(2月の)平昌五輪最終予選(北海道苫小牧市)ではあごが2回外れそうになった。でも私はゴール前から離れない。ゴール前の石になる」

五輪最終予選では2得点に加え、体を張ってエースの久保英恵(西武)らの躍動を支えた。第1戦のオーストリア戦、先制した久保の隣には相手を引きつける中村がいた。第2ピリオドには、GKがはじいたパックを体に当てて奪い、勝ち越し点につなげた。

第2戦のフランス戦で追加点を挙げた久保が言った。「GKの前にいた中村が『打ってくれ』という目をしたから打った」。個々が役割を全うしたチームは最終予選の3試合で13得点。課題の得点力は4年前のソチ五輪最終予選(9得点)のころより高まった。

速くタフにゴールもぎとる

かつての中村は泥臭い役回りに励むFWではなかったという。所属する西武の監督、八反田孝行は言う。「自由奔放に点を取りに行くタイプだった。いろいろな挫折もあった中で、チームのために何をするのかを考えられる大人の選手になった」。昨季は世界選手権のメンバーから外れる悔しさを味わった。「あまり点が取れてなくて。スタミナ面の課題もあったかな」と中村。昨年7月、山中武司の代表監督就任が復調への転機となった。

コーチとして代表を見ていた山中は中村のしぶとさを買っていた。「小さな日本選手の中で、ゴール前で戦う姿勢を一番見せるのが亜実。こぼれ球にとっさに反応してパックを浮かせて決める技術もある」と山中。「数字には表れにくいけれどオレは亜実のプレーが好きだし評価している。ゴール前のバトルの第一人者を目指そう」という山中の言葉に中村は奮い立った。

スピードとスタミナで上回っても、ゴール前の球際で負ければ結局、得点は奪えない。大型選手のいない日本の泣きどころでもあった分野でこのFWが格闘し得点力アップの重要なピースとなった。「この役割は私にしかできないと思って、覚悟を決めてやっている」。GKの肩口を破るきれいなシュートは得意技なのに、披露する機会は減った。その技術は、混戦からゴールをもぎとる場面で生かすつもりだ。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊4月3日掲載〕

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