紙おむつ再生 ユニ・チャームの挑戦

2017/3/30 6:30
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ユニ・チャームが大人用の使用済み紙おむつから原料のパルプを取り出す技術を開発した。オゾンで滅菌・漂白する仕組みで、厚生労働省の衛生基準を業界で初めてクリアした。リサイクルシステム定着とコスト削減に向けて鹿児島県志布志市で回収や設備の試験を始めており、2020年ごろに再利用を目指す。

同社は今月、おむつをオゾン処理する技術で特許を取った。

使用済みの大人用紙おむつを処理して取り出した上質パルプ

使用済みの大人用紙おむつを処理して取り出した上質パルプ

特殊な薬剤でおむつを消毒するとともに分解する。そこから、菌や不純物がまだ残っている低質パルプをとりだす。低質パルプはオゾン反応設備に入れる。

オゾンは低質パルプを滅菌・漂白する。パルプには排せつ物を吸収する高分子吸収体が含まれており、反応設備でふたつを分離。おむつの中で水分を閉じこめているポリアクリル酸など異物をとりのぞく。これで再び使える上質パルプがとりだせる。

工学博士の宮沢清CSR本部長代理は「雑菌と臭いのないパルプになる」と話す。

厚労省は生理処理用品に厳しい基準を設け、おむつメーカーは基準を順守している。これまでは排せつ物や菌が高分子吸収体やポリアクリル酸に付いてしまい、基準をクリアする再生技術はなかった。

オゾン処理システムで再生した上質パルプは大腸菌など菌類がなくなり、基準をクリアした。

ユニ・チャームは2016年11月、同市でオゾン処理システムの試験を始めた。同市は一般廃棄物のリサイクル率が76%にのぼり、市単位で全国1位。ただ、高止まりの状態にある。埋め立てゴミにおむつが多く含まれるといい、両者の思惑が一致した。

廃棄物を回収・管理する「そおリサイクルセンター」(鹿児島県大崎町)に、オゾン処理設備を設けた。志布志市の396ブロックのうち4ブロックの住民に無料で回収袋を配り、週2回集めている。システムに改良を加え、現在の処理速度は試験開始時の半分になった。

同市での試験の目的は、回収からオゾン処理までの流れの確認で、まだ実際に商品にリサイクルはしていない。

目標は、20年までに同市が位置する大隅半島の近隣の自治体を巻き込んで1日4トンのおむつを回収できるようにすることだ。分量が確保できれば、商品への再利用に道筋がつく。

試験のなかでは、オゾン処理によってパルプが若干失われた。それでも、4トンのおむつを回収すれば、数百キロの上質パルプをとりだせると試算している。

紙おむつの原料となる木材から取り出す新しい原料パルプは1キロ数十~数百円。上質パルプを5千キロ集めて再利用した場合、原材料費を最大数百万円カットできる。

使用済み紙おむつの再利用によって、環境面のメリットが生まれる。

ユニ・チャームによると、大人用紙おむつの年間生産量は50億枚あり、重さにすると30万トンにのぼる。高齢化の影響で過去10年間に6割増え、今後も増加が見込まれる。

自治体のゴミ焼却場で可燃ごみを1キロ燃やすと、税金が平均43円必要になる。温暖化ガスも排出される。宮沢氏はこのままだと「環境リスクや焼却費用はこれから増える一方になる」と話す。

東京都市大学環境学部の伊坪徳宏教授がまとめたところでは、オゾン処理システムを使えば、使用済み紙おむつ1トンの処理につき、水を約6トン節約できる。温暖化ガスは3割減らせる。伊坪教授は「ごみ問題や気候変動問題に貢献するビジネスモデルになり得る」と語る。

同社は大隅半島を拠点として仕組みを築いた上で、全国でのリサイクルシステムの定着を狙っている。今後、ごみ問題を抱える自治体と交渉を始める。回収には一般家庭の協力が欠かせず、リサイクルの意義を理解してもらう取り組みも重要になる。

(企業報道部 宇都宮想)

[日経産業新聞 3月30日付]

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