2019年2月23日(土)

中外製薬、免疫細胞のがん治療効果高める抗体

2017/3/23 6:30
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中外製薬は、がんの攻撃能力が高い免疫細胞とがん細胞を引き合わせる物質を開発し、ヒトの胃がんなどを移植したマウスで治療効果を確認した。この物質は抗体といい、2本の腕が免疫細胞とがん細胞をたぐり寄せて、双方の距離を近づける。免疫細胞が、がん細胞を死滅させるのを助ける。米国でまず胃がんや食道がんを中心に臨床試験(治験)を始めた。最新のがん免疫薬が効きにくいがん向けに実用化を目指す。

研究に用いるがん細胞を増殖する(中外製薬鎌倉研究所、中外製薬提供)

研究に用いるがん細胞を増殖する(中外製薬鎌倉研究所、中外製薬提供)

免疫細胞の働きを利用する試みは、皮膚がんの一種や肺がんでオプジーボなどがん免疫薬の高い治療効果が知られる。

開発した抗体は、様々な種類の免疫細胞のうちで攻撃力が高いT細胞が持つ「CD3」分子と、肝臓や胃、食道のがんが持つ「GPC3」分子に付く。

T細胞とがん細胞を抗体が橋渡しするような形になり、T細胞の攻撃ががんに向かいやすい。

T細胞のCD3分子に抗体が付くと、がんへの攻撃力がより高まるという。

ヒトの胃がんなどを移植したマウスに抗体を1回投与すると、60日後にはがんがほぼ消えた。投与しないとがんの体積が増えた。

免疫細胞ががん組織に入り込みにくく、がん免疫薬が効きにくいタイプのがんを持つマウスでも、増殖をある程度防げた。

2016年8月から米国で胃がんや食道がんの125人を対象に、治験を始めた。

今後の研究開発によって十分な治療効果を確認できれば、これまでのがん免疫薬が効かない患者にも作用が期待できる。従来は治す手段が限られたがん患者を救える可能性がある。

がんの治療薬は、体内の病原体や異物を取り除く免疫の仕組みを利用したがん免疫薬に注目が集まっている。皮膚がんの一種や肺がんなど向けの「オプジーボ」や「キイトルーダ」が代表格だ。ただ、オプジーボでも例えば肺がんの治療効果は患者の3割程度にとどまる。免疫細胞とがん細胞の距離を縮めるという今回の戦略は、新たな治療法に道を開く可能性がある。

健康な人の体の中でも、無数のがん細胞が生まれている。がん細胞は様々なたんぱく質を表面に出している。がん免疫薬はこうしたたんぱく質を狙い、免疫細胞で激しく攻撃する。

ただ、がん細胞には免疫細胞の攻撃をかわすたんぱく質がある。オプジーボなどは、この仕組みを取り払い、免疫細胞の攻撃力を高める。

一方、今回の抗体は別のルートでがんを攻撃する。免疫細胞を抗体を介して結合するがん細胞の近くにとどめ、付近のがん細胞を死滅させる。

体内の免疫細胞を使う薬を目指すだけに、今後は安全性と効果のバランスを検証していく必要がある。

(草塩拓郎)

[日経産業新聞 3月23日付]

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