/

[FT]iPhone10周年モデルに向け動き出すアジアの供給網

Financial Times

アジアのサプライチェーン(供給網)に青信号が点滅している。工場と投資家が、革新的な新型スマートフォン(スマホ)になると予想される米アップルと韓国サムスン電子の新製品向けに準備を進めているためだ。

ガラスから音響部品、移載機――ごく微細な部品をマザーボードに設置できる産業用ピンセットのような実装機――まで、あらゆるものを手掛けるメーカーが熱狂している。

「昨年は、中国メーカーが入り込む大きな余地があった」。HSBCのアナリスト、スティーブン・ペラヨ氏は、アップルの「iPhone(アイフォーン)」の販売減と、発火事故が相次いだサムスンの「ギャラクシーノート7」のリコール(回収・無償修理)に言及して、こう語る。「だが、サムスンとアップルは今年、手ごわい存在になるだろう」

新型スマホには法外な値札が付くと予想されている――発売10周年を記念する新型iPhoneの価格は1000ドルに達する可能性がある。また、アップルはOLED(有機EL)パネルへの切り替えを新型モデルで示すことになる。OLEDは色彩と解像度を高め、端末側面にかけてディスプレーを曲げられるよう設計されたものだ。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)がほのめかしたヒントは、拡張現実(AR)部品に対する一定の期待も生んだ。ゴールドマン・サックスのアナリストらは先月のリポートで「iPhone10周年モデルの重要な差別化要因になると思われる強力なAR機能」の舞台が整ったと書いている。

しかし、高い期待は株価高騰を引き起こし、機器マニアから喝采を集めたものの、9月の新型スマホ発売に先駆けて動き出したサプライチェーンへ制約をかける要素に懸念も高まっている。

OLEDの確保に走れ

最も厳しい分野が、アップルが発売するとみられる新型iPhoneの3モデルのうち少なくとも1つに採用される可能性が高いOLED画面だ。英コンサルティング会社IHSマークイットによると、OLEDは昨年販売されたスマホ全体の3分の1前後にすでに採用されている。

OLEDはサムスンのスマホとタブレット端末の大多数に使われている。画面が見やすいほか、エネルギー効率が高く、動画、ゲーム、VR(仮想現実)への反応が速い。幅と重量が小さめで端末内のバッテリーのスペースを大きくできるといった利点がある。

サムスンの早期採用は、供給の用意が後押しした。IHSマークイットによると、系列会社のサムスンディスプレーは2016年第3四半期に小型・中型OLEDパネルで96%の市場シェアを誇っていた。

サムスンとの特許紛争を契機に、アップルは同社の供給基盤をサムスングループから距離を置き多角化する決意を強めることになった。IHSマークイットのアナリスト、ウエイン・ラム氏に言わせると「サプライチェーンがアップルの求めに応じている」。

液晶表示装置(LCD)技術の旗を長年掲げてきたジャパンディスプレイでさえ、姿勢を変えることを余儀なくされた。同社は2016年末に、OLED分野へ進出するため、政府系ファンドから6億4000万ドルの資金支援を受けた。「(顧客の)ニーズに対応するためにOLEDの開発を加速する」。本間充会長兼CEOは当時、こう語っていた。

投資銀行ジェフリーズのアナリスト、レックス・ウー氏によれば、別のダークホースは、中国の天馬微電子グループ、維信諾顕示技術(ビジョノックス)、信利とともに生産能力を積極的に拡大している中国ディスプレーメーカー、京東方科技集団(BOE)だ。だが、アナリストらは、中国企業がすぐに大きなシェアを獲得する可能性は低いと話す。「OLEDには、従来よりずっと専門知識が必要で、ラーニングカーブ(学習曲線)が長い」とウー氏は指摘する。

OLEDには多額の投資も必要だ。BOEはあるOLEDプロジェクトに1億4500万ドルつぎ込んでおり、さらに数十億ドルを複数の新工場に投じていると報じられているが、年末までに生産を拡大できないだろう。そのうえ「サムスンがOLED向けの装置と機械の市場を押さえている」(ペラヨ氏)。

そうなると、すでに重圧がかかっているサプライチェーンのボトルネックが悪化する恐れがある。「次世代スマホはあまりに大きく変わるため、部品不足や生産のぶれが生じるリスクがある」とペラヨ氏は付け加える。一方、ほかのアナリストは、最新のiPhoneの魅力が希少価値で高まるだけだと反論する。

ファーウェイは部品生産を内製化

アップルの主要サプライヤーにとっては、新端末は高い値札に便乗するチャンスだ。野村グループによれば、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコンで知られる)は、iPhone1台に100ドル以上の部品を搭載しており、原材料費全体の45%を占めている。

野村国際(香港)のアナリスト、李佳伶(アン・リー)氏は、部品を混合した平均販売価格は今年下半期に前年比で20%以上上昇する可能性があると予想している。最上位OLEDスマホにおけるフォックスコンの支配的な役割が理由だ。このため、端末1台当たりのフォックスコンの市場シェアは昨年の67%から2017年の64%へ低下するものの、同社がiPhoneから得る売上高は今年17%増加するとリー氏は試算している。

一番の売れ筋モデル向けに進められている技術革新には、ガラスの下に搭載できる指紋センサー(ホームボタンが不要になる)や、音声認識を中心とした人工知能(AI)の利用拡大が含まれる。これらすべてがサプライヤーに発注されるわけではない。販売台数で世界第3位を誇るスマホメーカーの華為技術(ファーウェイ)は、音声認識技術でライバルに追いつこうと部品生産の内製化を進めている。

ファーウェイは、アップルの「Siri(シリ)」の中国語版を独自開発することを目指し、開発部隊を中国・深圳に置いている。昨年9月にドイツ・ベルリンで発表した新型スマホ「Mate9」は米アマゾン・ドット・コムの音声応答機能「アレクサ」を搭載している。

より基礎的な分野では、香港に上場しているASMパシフィックテクノロジーの株価が年初から30%近く高騰している。アップルは回路基板を変更するとみられ、1000個ほどある部品すべてを所定の場所に配置するためのASM実装機に対する需要を押し上げている。

ファーウェイによるソフトウエア開発の動きは、アップルとアジアの携帯端末メーカーとの違いを浮き彫りにする。サムスンなどのアジアメーカーの多くは、アップルに大きく先んじてデュアルカメラやOLED画面といった追加機能を取り入れていた。

「非アップル勢は常にハードウエアで先を行く」。台北に拠点を構える市場調査会社DRAMエクスチェンジのアナリスト、呉雅婷(アブリル・ウー)氏はこう話す。「だが、ソフトウエアの部分では、アップルが常に上を行く」

By Louise Lucas in Hong Kong

(2017年3月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン