2019年5月25日(土)

エボラ退治へ血清製剤 ウマで抗体作る

2017/3/13 6:30
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バイオ企業のアンジェスMGは、ウマの体内で作ったエボラウイルス用の抗体が効果を示したと2月に発表した。ウマの血をろ過して有効成分を取り出した血清製剤が、ウイルスを無効にしたのだ。抗体づくりにDNAワクチンが使われ、古い血清製剤と新旧の技術が融合した。今春にも動物実験に入る。成功すれば日本の医療ベンチャーの実力を世界に示せる。

エボラ出血熱はアフリカで大流行し、収束まで1万人を超す死者を出した(2014年のリベリア首都モンロビア=ゲッティ共同)

エボラ出血熱はアフリカで大流行し、収束まで1万人を超す死者を出した(2014年のリベリア首都モンロビア=ゲッティ共同)

米国と国境を接するカナダのサスカチワン州。その南部にあるサスカチワン大学は、人間や動物の感染症について研究し、生きたエボラウイルスを扱える世界有数の設備を持つ。アンジェスはここで一つの成果を出したと発表した。開発した製剤がエボラの働きを止めたのだ。

「エボラ出血熱にはまだ有効といえる治療薬がなく、開発の緊急度が高い」。山田英社長は強調する。

2014年に西アフリカのシエラレオネやリベリアで大流行し、16年1月に収まるまで2万8千人に感染し、1万1千人が亡くなった。

世界で複数の企業が抗ウイルス薬やワクチンを開発中だ。ただ、実用化されているのは富士フイルム傘下の富山化学工業が開発した、化学合成してつくる低分子の医薬品「アビガン」くらい。それでも効かない場合が多いことがわかっている。

アンジェスが開発しようとしているのは、古くからある血清製剤というタイプの薬だ。毒を弱くしたり無害にしたりしてある病原菌や毒素を、動物に注射。動物の血液を精製して、体内で作られた抗体を取り出す。ハブ毒素や破傷風などの血清製剤が知られている。

同社はサスカチワン大でウマから作った血清製剤を使い、生きたエボラウイルスに結合して働きを止める効果を試験管で確認した。次は、サルを使った動物実験で効果を確認するという。年内に実験のデータをまとめる予定だ。

血清製剤という手法は古いが、それを実現できた裏には先端のDNAワクチンの技術がある。

ウマで抗体を作るときに、エボラウイルスを直接入れることはできない。万が一、人間に感染すれば、大流行するリスクがあるからだ。そのリスクを回避するうえで、DNAワクチンの技術が生きている。

DNAワクチンは、エボラウイルスの遺伝子の一部を構成する核酸でできている。体内に注射すれば、ウイルスが持つたんぱく質を作らせることができる。ウイルス本体ではないので、感染しない。

このたんぱく質がウマの体内でできると、ウマの免疫が異物と判断し、抗体を作る。抗体を酵素で断片に加工し、有効な部分を取り出して製剤にする。

DNAワクチンは、アンジェスが昨年12月に提携した米バイオベンチャー、バイカル(カリフォルニア州)の技術で作った。

動物実験で有望なデータが得られれば、アンジェスは技術を製薬大手に売却するという。

というのも、動物実験のあとに人間の臨床試験を進めるとなれば、アビガンのエボラ患者向け試験を主導したフランス政府機関やアフリカ諸国と連携する必要があり、資金面などのハードルも高いからだ。

提携しているバイカル社に製造を委託する選択肢もある。同社は血清製剤設備を持っており、年1万~2万人分のエボラ血清製剤が製造できる。最短3カ月で製造し、備蓄も可能だ。

ウマから採れる血清製剤は100人分程度。製造コストはほかの血清製剤とほとんど変わらない見込みだ。

アンジェスはエボラ出血熱の予防目的で、人間に直接注射するDNAワクチンも開発している。人間の体内の免疫機能を高めて、エボラウイルスをやっつける。初期段階の臨床試験では投与した健常な人のうち80%でエボラ抗体ができた。

ただ、DNAワクチンは投与してから抗体が作られるまで4週間程度かかるため、感染予防用であって救命には使えない。血清製剤の方が、開発の優先度合いが高いと同社は判断している。

(企業報道部 野村和博)

[日経産業新聞3月13日付]

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