/

色気出して迷走したレスター、監督解任で原点回帰

昨季、イングランド・プレミアリーグで奇跡の初優勝を飾り、センセーションを巻き起こしたレスターが今季は下位に沈んでいる。5連敗の後の先月23日、クラブはついにラニエリ監督を解任した。

そのとたんにチームは生き返り、リバプール、ハルを相手にともに3-1で連勝した。シェークスピア・コーチを昇格させ、暫定監督に就けてからは戦い方がはっきりした。

守備に基盤、優勝時の感覚共有

守備を基盤にする昨季の形に戻したという表現が正しいと思う。悪いときは各自がバラバラだったが、いまは優勝時の感覚を選手たちが共有できている。

それでは、なぜ昨季の王者が残留争いに巻き込まれるほど、おかしくなってしまったのか。

今季は欧州チャンピオンズリーグ(CL)に初出場し、試合日程が過密になった。それ以前に守備の要だったMFカンテがチェルシーに移籍した。しかし、低迷の原因はそれだけではないだろう。

ハードワークが持ち味のチームなのに、得点源のバーディー、マレズのマークをはがしてあげる周りの動きがなくなった。これでは相手がポイントを絞りやすい。マークを分散できず、集中するので2人はかなりナーバスになっていた。

バーディーはDFラインの裏でパスをもらい、スピードを生かして一気にゴールを襲うタイプ。一度、右のマレズにボールを預け、左で縦に走るバーディーに配球するというパターンができていた。

やることが単純だから、相手に研究されると苦しい。左に展開されないようなプレスのかけ方をして、出球を遅らせる。パスが思うように来ないから、バーディーが下がって受けるシーンが増えた。

マレズも同じで、引いて受けようとする。結果的にバーディーもマレズも後ろ向きでパスを受けることになる。ともに、斜め前を向いてパスを受けないと力を出せないタイプだ。攻めが硬直するのは当然だった。

「こんなサッカーでいいの」という勘違い

昨季24得点のバーディーは今季、まだ7得点(監督交代後のリバプール戦で2得点するまでは5点)、昨季17得点のマレズは4得点。

チーム全体の得点は昨季、全38試合でリーグ3位の68点だったが、今季は27試合でリーグ17位の30点に激減している。

チャンピオンになったことによる勘違いもあったと思う。大物選手がいるわけでもないのに、優勝して変なプライドができてしまったのではないか。

昨季は無我夢中で泥臭いサッカーに徹していたのに、堅守速攻という単純な戦術に疑問を持ち、「優勝チームがこんなサッカーでいいの?」と言い始めたのではないか。

もっとスマートに試合を進めたいという色気を出して、愚直さが薄くなった。その結果、戦い方の統一感がなくなった。

ラニエリ監督はおそらくアトレチコ・マドリード(スペイン)のシメオネ監督のような厳しい人ではないので、選手が勝手なことをしても試合から外したりしない。結果的に自由を与えてしまった。

もしかしたらラニエリ監督自身にも、もう一段上のレベルのサッカーを目指そうという気持ちがあったのかもしれない。堅守速攻ばかりでなく、戦術に幅を持たせたいと考えるのは自然だろう。

岡崎は誰かのミスをカバーする汗かき役としてチームを救ってきた=共同

振り返ってわかる岡崎の重み

しかし、ラニエリは手をかえ、品をかえができる監督ではないと思う。昨季のレスターがそうだったように、メンバーをある程度、固定し、セオリーをしっかり植えつけ、ぶれずに戦うタイプだ。

弱いチーム、上を目指すチームを預けると力を発揮する監督だと思う。今季はスリマニ、ムサら新戦力を加えたが、残念ながら使い切れなかった。

プレミアリーグを制したからといって、世界のトップクラスの力を持ったチームではない。昨季はチェルシー、マンチェスター・シティー、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプールというビッグクラブが総崩れする幸運にも恵まれた。

振り返ってみると、昨季のレスターはカンテと岡崎慎司に救われていた部分がかなりある。2人の汗かき役が誰かのミスをカバーし、大きなミスにしないようにハードワークしていた。

今季はカンテがチェルシーに移籍し、岡崎の出番が減った。岡崎が前線で相手を追い回し、パスコースを限定する。あるいはMFと相手を挟みこんで、ボールを奪う。

攻撃時には最初にパスを預かって、つぶれながらも何とかバーディーにつなげる。その攻守にわたる働きがいかに重要だったかを、ラニエリ解任後、先発に戻った岡崎自身が証明している。

2連勝で、降格圏の18位との勝ち点差は5に開いた。残りが11試合あるが、いまの感じだと残留できると思う。

慣れた戦術に徹しレベル向上は来季に

守備が計算できるようになったのが大きい。昨季を知るシェークスピア・コーチを暫定監督として、優勝時のようにやらせてみたのが正解だった。

選手はいま、居心地のいい状態でプレーしている。そもそも、このチームにできることはこれしかない。切羽詰まった状態なので、変な色気を捨て、監督の言うことを素直に聞き入れたのだろう。

新監督として大物のマンチーニ(元マンチェスターC監督)やホジソン(元イングランド代表監督)の名が挙がっているが、いまは暫定監督のままでいいのではないか。

より高いレベルのサッカーをシーズン途中にやろうとするのは無理がある。やりなれた戦術に徹したほうがいい。新監督を迎えてレベルアップを狙うのは来季でいいと思う。

それにしてもカンテはすごい。無名選手だったのに、チェルシーに移籍し、レギュラーを確保した。コンテ監督が攻撃陣にも守備をさせているが、結局、相手ボールを引っ掛けて奪っているのはカンテだ。

首位チェルシーがこのまま逃げ切れば、カンテは違うチームで2年連続の優勝を味わう。そうなったら、チェルシーの陰のMVPと言っていい。

(元J1仙台監督)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン