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ヤマトの宅配総量抑制「賛成」約8割

第311回解説 編集委員 木村恭子

今回の調査は、皆さんに身近な宅配便に関するテーマを扱ったからか、3800人を超える多くの電子版の読者がご参加くださいました。

ヤマト運輸が、深刻化する人手不足対策として、宅配便の引き受けを抑える検討に入ったことに対し、「賛成」の立場の読者が約8割に上りました。

また、宅配便の配達員の長時間労働の原因だと指摘されている夜間の時間指定の配達や再配達についての改善策をお聞きしたところ、「有料のオプションにする」(36.9%)との意見が最も多く、さらに、インターネット通販で広まる商品の当日・翌日配送サービスについては、もともと必要としていない読者が5割近くを占めました。

皆さんからいただいた意見を総括しますと、宅配業界の共通の課題となっている宅配便の急増や深刻化する人手不足への対応については、(1)利用者側は「サービスはコスト」という認識を持つ(2)通販会社側は料金の過度な値下げを求めない(3)宅配会社側はIT化を進め配達員の待遇改善につとめる――といった声が多く見受けられました。

ヤマトの宅配便が荷受けの総量抑制を検討していることに賛成する(78.7%)読者の多くは、「配達員の仕事量の増加は気になっていた」(57歳、男性)、「最近ドライバーに疲れた様子が見受けられる」(65歳、女性)などとして、総量抑制が検討される流れについては意外感がないようです。

中には「ミスや過労による非効率等を招きかねません」(56歳、女性)といった指摘や「従業員保護の観点からやむを得ない。ただ、日本の宅配サービスはサービス過剰と感じるため、単に数量を減らすだけでなく、サービスや価格の是正等、全体を考慮して対応したほうがよい」(37歳、男性)として、荷物の総量規制だけでなく、宅配サービス全体の問題として検討する必要性を訴えるコメントもありました。

さらに「最大手であるヤマト運輸が引き受け抑制の検討に入ることをきっかけに、荷主・宅配事業者・消費者が、過剰サービスを見直すことにつながればよいと思う」(52歳、女性)、「便利さの行き過ぎを、国民全体で、ここらで考えるべきだ」(79歳、男性)として、今回のヤマトの動きが、国民が宅配便との付き合い方を考える契機になることを望む声も少なくありませんでした。

一方、総量抑制に「反対」(16.4%)の立場を取る読者は「頼んで断られても困る」(52歳、男性)といった不安とともに、高齢者からは「買い物に出かけるのが次第に困難になっているので、宅配は非常にありがたいシステムです」(86歳、男性)として、総量規制後の不利益を懸念する声もありました。

また、経営上の問題を指摘した読者も。

「サービス業として、人手不足を理由にした役務提供の制限は安直な考え。多くのユーザーに支持されているのだから、サービス維持を前提とした方策をもっと検討すべきだ」(45歳、男性)

「輸送は重要なインフラなので、拒否ではなく解決すべきだ。たとえ値上げしても」(34歳、男性)

ヤマトが宅配便の荷受けの総量抑制を検討する背景には、荷物の急増とともに人手不足の深刻化がありますが、「人手不足だけで言うなら、待遇を良くしないと人も集まらない」(42歳、男性)として、配達員の処遇改善の必要性の指摘もありました。

回答者の内訳
回答総数3826
男性90%
女性10%
20代以下4%
30代11%
40代21%
50代27%
60代26%
70代11%
80代以上2%

中には「まずは儲ける機会を失うこととなり、今までビジネスモデルの変革を放置していた経営者の怠慢と感じる。私はヤマト運輸の株主ではないが、もし株主であったなら怒りを感じることだろう」(52歳、男性)と、お怒りの様子の読者も。

ただ、宅配便の取扱数が減ったとしても、必ずしも減益にはならないケースもあります。たとえば、佐川急便の場合、2014年3月期の宅配便取扱数は約12億2千万個と前期比1割減となりましたが、営業利益は同40%増の433億円に改善しました。

一方、ヤマトの宅配便取扱数は10年間で5割増ですが、人手不足と人件費の高騰などで利益が減り「利益なき繁忙に陥った」(2月24日の日経朝刊)といわれています。

この原因としては、割引料金が適用されるネット通販会社などの大口顧客の存在が挙げられ、宅配便の平均単価が下がっていることが利益を圧迫しているとの指摘があります。

実際、佐川急便の利益改善は、13年にネット通販大手のアマゾン・ドット・コムの宅配から撤退したことが奏功した形です。ヤマトの総量抑制を是とする読者からも「アマゾン等が上得意の立場で強気の値引きを求めていた背景があるのだろう」(38歳、男性)として、大口顧客の割引制度などのビジネスモデルの変更を提案する意見が少なくありませんでした。

配達員の長時間労働の原因となっている夜間の時間指定の配達や再配達による配達員の長時間労働への対応策として、現在無料で行っているこれらのサービスを「有料のオプションにする」と答えた読者の多くは、夜間配達や再配達を「コスト」だと考えています。

「コンビニ受け取りは、運送会社の手間をコンビニに押し付けているだけ。宅配ボックスの設置や管理のコストは誰が負担するのか。いずれにしても、かかるコストは受益者負担で」(31歳、男性)

「高いレベルのサービスを求めるのであれば、それに見合ったコストを負担するのは当然」(60歳、男性)

さらに、有料で増収になった分を「配達員の待遇改善に使う」(74歳、男性)との案も。

次に多かった「近所のコンビニなどで受け取れるようにする」(29.2%)を答えた読者からは、「独身者や(子どもがいない共働き夫婦の)DINKSの人に、夜間指定や再配の依頼が多い傾向が考えられますので、近隣のコンビニでの受け取りが安心で確実だと思います。宅配ボックスはスペース、コスト、安全性等別の課題も浮上し設置は限定的でしょう」(63歳、男性)と、利用者目線での意見が寄せられました。

中には「時間指定の幅が広すぎて、交通渋滞とか色々あるとは思いますが、14時~16時指定が、13時55分に配達にきていて、14時に帰宅してもすでに再配達の用紙がポストの中に(あった)」(58歳、男性)との実体験を踏まえ、在宅での再配達を望まない読者も。

3番目の「宅配ボックスの設置を推進する」(28.2%)を選んだ読者からは「駅前受け取りステーションで再配達を減らす」(65歳、女性)といった提案や、「法律などで家屋の新築時への設置義務付けや助成金を出すなど積極的に推進したほうがよい」(37歳、男性)との要望も寄せられました。

インターネット通販で購入した商品を当日や翌日に配送してくれるサービスの必要性をお聞きしたところ、「もともと不必要」と答えた読者が48.6%に上り、「そんなに急ぐものはほとんどない」(35歳、女性)、「過剰サービスと思います」(62歳、男性)との読者がほとんどでした。

しかし、「この利便性は後戻りできないので、適正料金を払って利用し続けたい」(44歳、男性)として、積極的に利用している読者も存在し、「料金が上がっても必要」との答えは21.8%を占めました。

この項目を選んだ読者の中には「サービスに見合った価格設定をすべきだ。サービスを止めるのは本末転倒」(45歳、男性)との思いを抱いている人もいます。

そこで「以前から、郵便は速達がある。それと同じ。それ相応の料金にすればよい」(31歳、男性)といった提案もありました。

ただ、現在、当日・翌日配送のサービスに肯定的な読者の中には、「料金が上がったら不必要」との立場をとる人も27.1%存在し、「必要でありがたいこともある。兼ね合い・斟酌(しんしゃく)・案配の問題」(52歳、女性)と、サービス内容と料金とをてんびんにかけている姿が垣間見られました。

今回のヤマトの労使間の議論は、成長著しいネット社会とは反比例の、成長を抑制する流れだと受け止めている読者もいらっしゃいましたが、人手不足が深刻化している現実が、「至れり尽くせり」のサービス業のあり方の見直しを迫っていることは確かだといえましょう。

今回の調査(25~28日)にご協力いただいた読者の皆さんによる安倍内閣の支持率は63.7%でした。前回調査73.9%よりも10.2ポイント減となりました。

ちなみに、日本経済新聞社とテレビ東京による2月24~26日の世論調査の内閣支持率は、1月の前回調査と比べて6ポイント下がって60%でした。

2日の日本経済新聞朝刊「視点・焦点」面では、ヤマトの宅配サービスの見直しに関して特集しています。併せてお読みください。

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