2019年9月17日(火)

「自動運転車の実用化は間近」の大いなる錯覚

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2017/3/31 6:30
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■トラックで190kmの完全自動運転

このように自動運転は、既に長い年月をかけ多額の資金を投じて研究開発が進められており、膨大な実験データが蓄積されている。そして現在においても、年々投資額を増やしつつ開発が進められ、ますますデータ蓄積が進んでいる。

米国では、各地で実証実験を行うための公道使用許可も下りた。5万本のビールを運ぶトラックで120マイル(190km)に及ぶ完全自動運転に成功したとのニュースは記憶に新しい。日本でも通行止めをした道路ではあるが、2016年11月に初めての公道実験が行われている。2017年に入り、国家戦略特区の枠組みの活用などにより公道実験を可能とするような動きも表面化している。

技術的視点だけで言えば、既に平均的なドライバーより事故率が低く、経産省の掲げた目標の達成も現実的であると想定できる。

完全自動運転車の効果は大きい(図1)。自動車の運転は人間が必ず拘束される業務であり、自動車自体は稼働可能であったとしても待機時間や休憩時間を考慮する必要がある。そのため人件費がコスト要因として大きい。鉄道などと異なり小回りが利くため陸路の輸送手段としての市場規模が大きいため、単に効率化の観点だけでみても非常に大きい効果が期待できる。

図1 完全自動運転の実現による効果

図1 完全自動運転の実現による効果

高価値化の視点からも意義が大きい。不注意や酒酔いなどのヒューマンエラーによる事故の減少だけでなく、高齢化や過疎化が進んでいる日本では、地方での交通手段の不採算化や交通サービスの撤退や減少による利便性の低下、近年急増している高齢者の自動車事故などの社会問題の解決にも大きく寄与するはずだ。

■法整備などが進まないとAIは学習できない

このように研究開発が進み、経済的、社会的にも大きな効果が期待されるため、完全自動運転車は今やAIの旗手と言える。そうした期待値の高まりにより、自動車メーカーやIT(情報技術)企業も開発計画を"前のめり"気味に発表し、世間も今すぐにでも実用化するかのように錯覚している。だが、世界においても日本においても、実用化、そして商用化はまだまだ先と言わざるを得ない、と筆者は考えている。

なぜなら、技術的問題だけが商用化のハードルではないからだ。発生率をどんなに低く抑えられたとしても、事故は決してゼロにはならない。事故につながる切迫した事態に対してどのようなアクションをすべきなのか、その事故の倫理的、法的な責任の所在はどこか、という点についての法制度の整備が必要となるためである。

機械学習はあくまで過去のデータ、すなわち既に起きたことから学習する機能である。今までに無いケースには対応できないため、様々な切迫した事態における交通法規などに基づく対処をAIに学習させる必要が生じる。

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