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勇気感じる筒香の決断 商売道具へのこだわり

DeNAの筒香嘉智がバットの設計を変えたと聞いた。1月、岐阜県養老町のミズノテクニクスの工場に足を運び、芯の位置をわずかに下げた新しいモデルを削ってもらったという。

筒香は昨季、本塁打と打点の2冠に輝いている。マイナーチェンジであっても、バットの芯の位置を変えるのには勇気が要る。ましてや好成績をもたらしたバットをいじるのは大きな冒険だろう。だが、成功体験に甘んじることなく、さらなる進化を追い求める姿勢こそが、筒香をタイトルホルダーにしたのだとも思う。

WBC見据えての変更か

バットの設計を変える筒香の試みに、さらなる進化を追い求める意欲を感じる=共同

以前、筒香のバットを握らせてもらったことがある。いかにも長距離打者らしく、重心がかなり先にあるモデルだった。詳しいことはわからないが、ボールが飛ばないといわれる3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も見据えての変更かもしれない。いずれにしてもすごいことをやっている。

長さ、重心、バランス、素材、グリップの形状に太さ。バットは様々な要素が絡み合ってできている。自分に合うものを見つけるまでには時間がかかる。昔はある程度の実績がないと自分用のモデルなどつくってもらえなかった。若かった僕はいろいろな人のバットを借り、理想の一本を模索した。落合博満さんは三冠王にふさわしい最高級のバットを使っていた。最終的には中日のチームメートだったレオ・ゴメスのバットを基本に、自分なりの微調整を加えるようになった。

現在、素材は外国産のメープルが主流だが、僕は国産のアオダモにこだわっていた。外国産メープルは堅く、バットをボールにぶつけるような打ち方には向くのだろうが、しなりが感じられない。大リーガーに多いホワイトアッシュというのもあるが、これはしなりすぎる。国産アオダモはその加減がちょうどいいのだ。いまでは資源が希少になり、値段も張る。プロフェッショナルモデルだと1本5万~6万円以上すると思う。僕はメーカーの協力もあり、最後までアオダモを使わせてもらえた。

筒香同様、僕もミズノのバットを使い続けたが、養老工場には行かなかった。職人さんと話しながら削ってもらうと、どうしても「最も飛ぶバット」に行き着いてしまうからだ。理屈では、重心を先端に近づければ、より遠心力が働いて飛距離は伸びる。だが、理論のうえで飛ぶバットと実際に振りやすいバットは違う。1996年に本塁打王を取った後、さらに飛ばそうとバットを変えたがヘッドの返りが悪くなり、重心を元に戻したということもあった。

バットは結局、振ってみないとわからない。春季キャンプではお試しがてら少ない本数で2~3種類を用意してもらい、最も合うものをそのシーズンのモデルとしていた。僕は極力新しいバットを使いたいタイプだったので、しょっちゅう新品を下ろしていた。天然素材だから中には合わないものもある。そういうものは練習に回してしまうので、シーズン100本以上は使っていた。個人差はあるが、レギュラークラスの選手ならシーズン50本は下らないだろう。

試合では他人のバットを借りることもあった。例えばあまり得意でない内角を中心に攻めてくる投手が出てきたら、短いバットを借りる。それでホームランを打ったことが何度もある。

主軸を担う筒香(中央)らWBC日本代表が強化合宿をスタートさせた=共同

練習用のマスコットバットも人それぞれだ。パワーアップのために重いものを振る人もいるが、僕は軽めのバットが好きで、試合用が920グラムなら練習でもプラス40~50グラムまで。10グラム違えば感覚は変わる。練習だからといって重いものを振りすぎると、感覚が狂ってしまうのだ。

バットと反対、グラブ替えず

バットとは反対にグラブは替えなかった。ファーストミットは広島などで活躍した小早川毅彦さんのモデルを参考にしたもので、10年間使った。バットほどのこだわりがなかったということもあるが、グラブは手になじむまでに時間がかかり、ちょくちょく変えるのはハードルが高い。その代わり、試合に出ているときは毎日手入れをしていた。

グラブに求めたのは薄くて柔らかく、疲れないように軽いこと。実はこれ、なかなかやっかいな注文だ。薄くて堅いもの、厚くて柔らかいものは珍しくないが、薄さと柔らかさを両立させるのが難しい。バット同様、無理を聞いてくれたメーカーに感謝している。

(野球評論家)

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