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インフォステラ、衛星アンテナの共有めざす

宇宙ベンチャーのインフォステラ(東京・渋谷、倉原直美社長)は人工衛星と通信する地上アンテナのシェアリングサービスを開発する。衛星会社は自前でアンテナを設置する必要がなくなり、アンテナ会社は稼働率が高まる利点がある。小型人工衛星の打ち上げが世界規模で急増するなか、アンテナ不足を解消し通信費を下げることで宇宙産業の拡大を後押しする。

「宇宙通信のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を目指す」。石亀一郎最高執行責任者(COO)は力を込める。

インフォステラは既存の衛星向け地上アンテナのネットワークを作り、低コストで衛星運用会社に提供する。米アマゾン傘下のクラウドサービス、AWSの登場でネット企業が自社でサーバーを持たずに済むようになったように、衛星運用会社のアンテナ設置・メンテナンスの負担を軽減する。

仕組みはこうだ。まず地球上にある大学や研究機関などが所有する無数のアンテナに自社開発のデータ変換器を導入。次に各アンテナをインフォステラが運営するクラウドサーバーとつなぐことで、衛星運用会社は各アンテナを通じて衛星からの画像データなどを取得できるようにする。

今夏には十数カ所のアンテナを結んだサービスを試験的に始める。衛星運用会社には予約、オンデマンドの2種類の料金体系でサービスを提供。アンテナ所有者には稼働分の売り上げの一部を還元する事業モデルを検討している。

世界的に珍しい衛星アンテナのシェアリングサービスに取り組む背景に人工衛星の急増がある。衛星の小型化で1基当たりの製造コストが数億円と100分の1程度に下がり、2014年には超小型人工衛星の打ち上げ数が年100基を超えた。

現在の衛星ビジネスの課題は衛星を打ち上げるロケットの不足で、数年待ちの状態が続いている。米スペースXなど新興企業の台頭で低コストで打ち上げられるようになれば「衛星の需要は爆発的に伸びる」(石亀COO)。

次の課題となるのが通信環境だ。現在は衛星運用会社が自社でアンテナを設置する場合が多く、建設コストは1基当たり1億円程度に上る。衛星がアンテナの上部を通過して通信できる時間は1日10~20分程度で、残りは稼働していない。衛星向け通信を提供する企業は北欧に2社あるが、価格が高止まりしていて、衛星ビジネスの参入障壁となっている。

アンテナが稼働していない時間を共有すれば通信資源を有効活用できると考え、16年1月にインフォステラを設立した。倉原社長は衛星の地上システムのスペシャリスト。内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択された超小型衛星「ほどよし」プロジェクトの地上システム開発マネージャーを務め、衛星管制システム世界大手の米インテグラルシステムズでは放送・通信衛星8基の衛星管制システムを構築した。

昨年秋にフリークアウトや米ベンチャーキャピタルの500スタートアップスなどから6000万円を調達。今夏のサービス開始に向けてソフトウエアの開発を急ピッチで進めている。今後は大型の資金調達を計画しており、自らアンテナの設置・運営に乗り出す考えだ。

16年11月に宇宙活動法などが成立し、民間企業の宇宙開発事業への参画のルールが整った。農業や災害対策、港湾のコンテナ管理など衛星画像の需要が高まり、日本でも衛星ビジネスへの新規参入の増加が予想される。

インフォステラの地上アンテナへの取り組みは一見地味だが、成長する宇宙産業を陰で支える役割を果たそうとしている。

(企業報道部 阿曽村雄太)

[日経産業新聞 2月23日付]

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