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ソフトバンク傘下の「善しあし」 英アーム幹部に聞く

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2017/3/21 2:00
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日経テクノロジーオンライン

 売上高約1800億円の企業を約3兆3000億円の巨額買収――。ソフトバンクが2016年7月に発表した、英国の半導体設計企業ARM(アーム)の買収は、世間をあっと驚かせた。今なお、買収によってどのようなシナジーが生まれるのか、さまざまな臆測があるのも事実である。そこでソフトバンクが主催したイベント「pepper world 2017」(2017年2月8~9日に東京で開催)の基調講演などのために来日した、ARM幹部のIan Ferguson氏(VP Worldwide Marketing and Strategic Alliances)に、ソフトバンクグループ傘下になって良かったこと、逆に困ったことなどについて聞いた。

――最初に、ソフトバンク傘下になって良かったことと、困ったことを聞きたい。

Ian Ferguson氏(写真:日経テクノロジーオンライン)
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Ian Ferguson氏(写真:日経テクノロジーオンライン)

Ferguson 良かったことは株主が1社になったことだ。ソフトバンクに買収される前、株主は4万人を超えており、さまざまな要求を聞かなければいけない上、四半期ごとに決算レポートを出す必要があった。

 買収後は、株主は1人(1社)になった。その株主は短期的な利益よりも長期的なビジョンを重視しており、四半期ごとの決算レポートは重要でなくなった。ソフトバンク傘下になって長期的な視点で動けるようになり、例えばここ半年、思い切った買収をしてきた。

 ソフトバンクが、アームの技術を世界に広めることに積極的なのは有難い。孫正義氏は「IoT(モノのインターネット)時代には1兆個の機器がネットにつながる。その機器にはアームのCPUコアを集積したICが載る」と述べている(注:アームはプロセッサーの心臓部であるCPUコアの設計に特化した企業)。機器やシステム、サービスを扱う企業の傘下に入り、これまでよりもずっと深く、顧客に必要なものを考えられるようになった。

■経営層の一部が他社に流出

 一方、課題もある。主に2つだ。第1の課題は、アームの顧客の中にNTTドコモなど、ソフトバンクの競合企業があることから生じた。例えば、競合企業は機密情報がソフトバンクに漏れるのではないかという懸念を持った。機密保持契約(NDA)を結ぶ相手はソフトバンクでなく、今まで通りアームであることを説明した。つまり、アームと顧客との関係はソフトバンク傘下になっても変わらないことを、顧客に説明する必要があった。

 第2の課題は、有能な人材の流出を防ぐことだ。ソフトバンクは43%ものプレミアを付けてアームの株式を買い取った。自社株を持っているアームの社員の中には資金を得て、独立したいと考える人もいるだろう。

 実際、CFO(最高財務責任者)は「上場企業で働きたい」と言ってアームを去った。また、Executive Vice PresidentだったThomas Lantzsch氏は、米Intel(インテル)に移った(現在はIntel Senior Vice President兼General Manager of Internet of Things Group)。

 ただし、このような移籍があったのは経営層がほとんどで、顧客にとって重要なエンジニアはあまりいない。エンジニアは、先ほど述べたように、長期的な視点で開発に取り組めるようになったことや、ソフトバンクがアームの技術を広めることに積極的なことで、買収前よりもむしろやる気を出している。

■ロボットがさまざまなデータや情報を収集

――pepper world 2017の基調講演では、IoTとロボットの関係を議論した。改めて、あなたがその関係をどう考えているかを聞きたい。

Ferguson IoTの視点では、ロボットは「エッジノード」(IoTシステムの端末)の1つと言える。pepper(ペッパー)のようなヒューマノイドロボットはヒューマンインタフェースを備えたエッジノードで、さまざまなデータや情報を人から集めるのに有効である。一般に、人は、技術が丸見えになることを嫌う。ヒューマノイドロボットは、技術を人の目から直接は見えなくする効能を備えている。

 ロボットにはヒューマノイドだけでなく、工場のラインに並ぶ産業用ロボットなどさまざまなものがある。ロボット全体を考えると、その役割で一番重要なのは、効率化と言える。例えば、以前は人が行っていた作業をロボットが担うことで、効率化が図れる。工場の製造ラインに並ぶロボットだけでなく、病院の受付役になったpepperも効率化に寄与する。

ロボットで工場を効率化(図:ARM)
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ロボットで工場を効率化(図:ARM)

 効率化と共にロボットの役割で重要なことは、人の安全を確保することだ。例えば、火災現場など、人が近づきがたい場所でも作業ができる。ロボットの概念を広げると、次のようなシステムも人の安全確保に寄与している。米カリフォルニア州オークランドに設置された「銃声検知システム」である。街のあちこちにマイクを取り付けてあり、銃声をキャッチすると、警察や救急車が派遣されるようになっている。

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