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「運動してもやせない」 人体はやりくり上手

日経サイエンス

ジムに通っても、ジョギングしてもなかなかやせない──。多くの人に経験があることだろう。それは努力不足というよりも、私たちの身体の仕組みそのものによるところが一因かもしれない。

生活様式が違っても消費量はほぼ一定

米ニューヨーク市立大学や米アリゾナ大学などの研究者はアフリカのタンザニア北部のサバンナで暮らすハッザ族と一緒に暮らして、彼らの毎日のエネルギー消費量を詳しく調べた。ハッザ族は野生の動植物を食料に暮らしている昔ながらの狩猟採集民。男たちは手製の弓矢を携えて毎日何キロも獲物を探し回り、女たちは野イチゴなどの植物を探しに行く。

そうした毎日を送っているハッザ族であれば、現代の都市生活者よりも多くのカロリーを燃やしているだろうと考えられた。ところが調査の結果、毎日のエネルギー消費量は欧米の成人とほぼ同レベルであることがわかった。

先進諸国にまん延する肥満は車社会や家電製品の普及などによって、毎日の消費エネルギーが減ったことが一因との見方もあるが、そうした便利な近代的生活をしている欧米人と、肉体的にきつい毎日を送っているアフリカの狩猟採集民のエネルギー消費量が同じということは、一体どういうことなのだろう?

体内でエネルギー割り当てを自動調整

近年の研究から、私たちの身体には、日々のエネルギー消費を抑えながら高い身体活動レベルを実現する仕組みが備わっているらしいことがわかってきた。人体が目立たない日常業務に費やしているカロリーを節約することで、身体運動にあてる余力を生み出している可能性がある。

細胞や臓器が生きていくのに必要な日常の保守業務は多くのエネルギーを食っており、この部分を節約すれば日々のやりくりに余裕が生まれ、1日あたりの総カロリー消費を増やさなくても身体運動にエネルギーを振り向けられるとの見立てだ。例えば運動すると、免疫系が発動する炎症反応が弱まる場合が多いほか、エストロゲンなど生殖ホルモンのレベルが下がることは、そうした仕組みが働いているためなのかもしれない。

ハッザ族を調査したニューヨーク市立大学のハーマン・ポンツァー博士は、こうした身体の仕組みは、ヒトが大きな脳などの独自の形質を獲得する過程で生み出されたのではないかと考えている。

(詳細は25日発売の日経サイエンス2017年4月号に掲載)

日経サイエンス2017年4月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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