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逆襲のカギは機動力 中日が磨く「相手が嫌がる野球」

昨季、19年ぶりのセ・リーグ最下位に沈んだ中日が逆襲に向けて虎視眈々(たんたん)と牙を研いでいる。「野球は走ることから」を持論とする森繁和新監督が掲げた旗印は「機動力野球」。練習はじめのベースランニングから陸上競技場を使った夕暮れの走り込みまで、日々たっぷりと汗を流している。

キャンプ初の対外試合となった12日の韓国・ハンファ戦。変化は早くも見て取れた。二回、中前打で出塁した堂上直倫が大きなリードで相手バッテリーに重圧をかける。際どいタイミングのけん制球を何度ももらいながら、果敢に二塁へスタート。ベースのだいぶ手前でタッチアウトに終わったが、過去9年でわずか4盗塁、お世辞にも俊足とはいえない28歳の変貌がチームの意識改革を物語っている。

三回、一塁走者の遠藤一星は大きなリードでけん制悪送球を誘った。四回、代走に出た快足ルーキーの京田陽太(日大)は中堅左への浅い安打で一塁から三塁を陥れ、次打者の内野ゴロで生還した。チームリーダーの平田良介が二塁走者になった時にはベンチから「もっとリード取れるぞ~」の声が飛ぶ。リードを広げた直後に飛び出した浅い中前打で三塁を回ると、捕手のタッチを巧みにくぐり抜けた。

積極的走塁を随所に見せての大勝

積極的な走塁が随所に見えての大勝という初陣に森監督も相好を崩した。「やってきた方向(で結果)が出たのはうれしい。こちらの求めるものを選手たちが理解してくれている。これまでは堂上が出塁して3回も4回もけん制をもらうことなどなかった。(盗塁は)もう少し速く走ってほしいが、ああいうことをしているうちにスタートのタイミングもはかれるようになるし、相手バッテリーも打者に集中できなくなる」

昨年の中日は得点力不足に泣いた。チーム打率2割4分5厘、89本塁打はいずれもリーグワースト。優勝した広島の約半分の60盗塁と機動力にも乏しくては得点のにおいはしてこない。リーグ最少の500得点は必然の結果だった。「ヒット3本で1点も入らない野球をしていた。今年は自分たちがされたら嫌なことをしていく」と森監督は繰り返す。

てこ入れのキーマンが今季就任した前オリックス監督の森脇浩司内野守備走塁コーチだ。独自に収集したというデータの一部をさらりと披露した昨年秋の就任会見は振るっていた。「走者一塁から単打で一、三塁になったケースは12球団トップの広島が47%、中日は28.8%で9位だった。これを10%あげることができれば、外野フライという凡打が犠飛に変わり、併殺崩れや内野ゴロでも1点が入る。具体的な結果がほしいわけだから、具体的な練習が必要だ」

個人の能力に負うところが大きい打力や長打力に期待をかけるのではない。現状の打力でも、走塁への意識を変えることで得点力のアップは可能という発想だ。

キャンプのメニューにもその意図は表れている。練習はじめに組み込まれることもあるベースランニングやフリー打撃と並行しての走塁練習では、リードの取り方やベースの回り方など細かな部分を繰り返し確認する。外国人も投手陣も例外はない。京田は「蛇行せず、一直線で塁間を走るようにということや、実戦でのスタートの切り方など大学では言われなかったことを指摘される」と話す。

全体練習の後には隣接する陸上競技場での走り込みが待っている。新加入の守護神候補ホルヘ・ロンドンは「投手に走り込みが大切という考え方は(出身地の)ベネズエラでも同じだけど、これほど走るのは初めて」と苦笑いするが、森監督はお構いなしだ。「キツイことを乗り越えられない選手はいらない。できなければ向かなかったとあきらめ、日本を去ってもらうだけ」。さすがは渉外担当を兼ねるこわもての監督。自ら連れてきただけに遠慮がない。

行動すれば、理解や成功がついてくる

もちろん、走ることへの意識だけですべてが好転するわけではない。12日の練習試合ではけん制死や暴走気味の判断ミス、サインの見落としなども出た。

緊張感が増す公式戦で、同じようなリスクを負ったプレーができるとも限らない。だが「現段階では選手の行動に変化が出ていることが尊い」と森脇コーチは説く。「最終的な理想は選手が理解して行動し、高い確率で成功すること。しかし、とりあえず行動することを繰り返すうちに、理解や成功がついてくるという部分もある。走塁のような細かいことを小さなことと思うか大事だと思うかが大きな差を生む。微差は大差なんです」

昨年、下馬評の低かった広島は「無駄なアウトをなくそう」を合言葉に快進撃を演じ、独走でゴールテープを切った。幸い、長打の打てるクリーンアップ候補アレックス・ゲレーロ(ドジャース)は順調にキャンプを送り、日に日に評価を高めている。京田、遠藤のほか2年目の石岡諒太ら足を使える期待の若手もそろってきた。ただでさえ地力の拮抗したセ・リーグだ。中日が「第2の広島」とならない保証はないだろう。

(吉野浩一郎)

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