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ゴルフ外交に透けるトランプ氏の思惑

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

"Business before pleasure"(遊ぶ前に仕事)

米国には、そんな言い方がある。

ドナルド・トランプ米大統領と安倍晋三首相は、10日に首都ワシントンDCで首脳会談を行ったあと、翌日はトランプ大統領の別荘があるフロリダ州パームビーチでゴルフを楽しんだ。

11日、米フロリダ州でゴルフを楽しみ、ハイタッチする安倍首相とトランプ米大統領(同大統領のツイッターより)=共同

首相とゴルフ場で合うそれなりの意図

仕事をしてからゴルフ――。二人は古い言い回しに従ったかに映るが、安倍首相がそのつもりでも、トランプ大統領はそう考えていないかもしれない。おそらく彼にしてみれば、"Business before business"(ビジネスの前にビジネス)。これまでの言動を振り返っても、トランプ氏はゴルフをビジネスと割り切っているふしがある。

選挙前もテレビ番組に出演すると、それをほのめかした。

「ゴルフコースで親友をつくることができるとこれまでに何度も言ってきたが、ゴルフがなければ、まとまらなかった商談がある」

もちろんビジネスと外交は違うが、トランプ氏が安倍首相と会うのにわざわざゴルフを選んだのは、それなりの意図が含まれていると考えたほうがいい。

トランプ氏は選挙前、バラク・オバマ前大統領が、ゴルフをしすぎだと批判してきた。それでいて、いきなり大切な日米外交の場をゴルフコースに設定したのは皮肉だが、トランプ氏はこう主張するだろう。私のゴルフはオバマ氏のそれよりも戦略的だ、と。

貿易、為替…ターフの上の神経戦

実際、先ほど紹介したテレビインタビューでは、大統領になることを見越した上でこう明言している。

「ゴルフばかりすべきじゃない。でも、ゴルフをするとしたら、それを通じて国の利益になるよう利用すべきだ」

トランプ氏としては、貿易、日米同盟、為替といったそれぞれ神経質な問題を、自分のホームフィールドに誘い込んで、有利に話し合いを進めたいと考えたか。

結果としてトランプ氏が自分のペースに巻き込むのか、安倍首相がアウェーで粘って譲らないのか、その見通しを論じるのは難しいが、ひとつ、オバマ氏の名誉のために書き添えると、彼は、英国のデビッド・キャメロン前首相とゴルフをしたこともあったが、決してそれを政治の駆け引きに使うことはなかった。

 いや、必要がなかったというべきか。彼は、ゴルフに対して敬意を抱いていた――多くの米国人がそうであるように。

安倍首相は1月、神奈川県茅ケ崎市で今年初めてのゴルフを楽しんだ=共同

ちなみにオバマ氏は、過去4年間で、306~330回はラウンドをしたと報じられているが、友人と一緒のことが多く、政治的なプレッシャーから一時的に逃れ、心身ともにリフレッシュする目的だったとされる。そうやってオンとオフの切り替えをしてきたのだ。

かといって、トランプ氏が、「ゴルフはビジネス」だと言っていることを否定するつもりはない。彼は世界中に20近いコースを所有し、実際にビジネスをしてきた。また彼は選挙中、自分は「政治家ではない」と主張し、支持を訴えた。

投票した人も彼のビジネスマンとしての資質に大国のかじ取りを託した。彼がこれまで、ゴルフを通して商談をまとめて来たのであれば、そのスタイルを貫くことこそを、支持者は望んでいるのかもしれない。

トランプ氏、どんな豪腕みせるか

問題は、その手が通用するのかどうか。トランプ氏はビジネスも外交も同じだと考えているかもしれないが、果たしてそうか。

大統領になって3週間、彼は息をつく暇もなく大統領令を連発し、様々なところで歪(ひず)みを生んでいる。彼の強引なやり方は、怒りを招き、米国社会の分断を導く結果にもなっている。ビジネスの手法を政治に持ち込んだ結果がこれだとしたら、外交でも摩擦を生みかねない。

彼が、自分は政治家ではなく、ビジネスマンだと胸を張るのなら、安倍首相とのゴルフ会談は、その腕の見せどころ。得意なゴルフ場で、どんな落としどころを見つけられるのか。成功と評価されれば、トランプ氏のゴルフ外交は、向こう4年間、彼の切り札となるかもしれない。

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