社外のオフィスで子供預かり 働く場所や時間、自由に

子供を預かるキッズスペース付きのサテライトオフィスが好評だ。働き方改革の一環として社外で働く「リモートワーク」を多くの企業が認め始め、子供を預けながら働く方法の一つとして注目を集める。労働者人口が減るなか、子育て世代の働く場所や時間の自由度を高め、能力を最大限に引き出す狙いだ。
リクルートホールディングスはキッズスペース付きオフィスを東京都港区に開いた。同社としては初めて。不動産サービスのザイマックスが運営する施設にあり、グループ従業員は自由に使える。営業は平日午前8時から午後8時まで。ブース席が15、インターネットを使った会議ができる部屋が2つあるほか、複合機やロッカーも備え付ける。保育士などの資格をもったスタッフが常駐。最大19人の子供を受け入れることができる。保護者の仕事中は専用スペースで読書をしたり、遊んだりして過ごす。
仕事に集中、子供もそばに
リクルートは昨年からリモートワークを本格導入している。グループ企業で働く渡辺真吾さんはキッズスペース付きサテライトオフィスを使ったひとり。これまで関わっていたプロジェクトが完了し、リモートワークがしやすい環境になった。渡辺さんは午後1時30分から午後6時30分まで使い、「仕事に集中でき、子供もそばにいて快適。近々、また使ってみたい」と話す。
リクルートの施設は未就学児だけでなく、小学生も受け入れる。小学校入学後、放課後に過ごす場所を見つけられない「小1の壁」にぶつかり、退職したり時短勤務を選択するなど働き方の変更を迫られる親も多い。仕事に充てる時間が減り、成果を出せない可能性もある。子供が早く帰宅する時期や休校時、子供の習い事の送迎の前後の時間を使っての利用などを想定している。
リクルートがキッズスペース付きのサテライトオフィスを始めたのは「こうした施設が、仕事にどういう影響を与えるかを確かめる実験的な意味もある」(広報担当)という。2月1日から川崎市にも同様の施設を開設した。
リモートワーク、IT普及が後押し
リモートワークが広がってきたのはIT(情報技術)技術が普及してきたことが一因だ。インターネット環境が整い、業務用としてスマートフォン(スマホ)を貸与する企業も増えている。勤務するオフィスと同水準の通信環境があれば、業務遂行に問題は少ない。ザイマックス不動産総合研究所(東京・千代田)によると、過去1年間でオフィス以外の働く場所として整備が進んだのは「在宅勤務制度」や「自社の支社や支店」という回答に次いで、「モバイルワークオフィス」が多かった。同社の中山善夫社長は「モバイルワークオフィスが働き方改革の受け皿の一つとなっている」と指摘する。
関西でもシェアオフィス運営のウィメンズフューチャーセンター(奈良市)が、JR奈良駅から徒歩2分の場所でキッズスペース付きオフィスを運営する。登録会員数は約300人。女性起業家の利用が多いが「リモートワークにも活用してほしい」(同社)。
人材確保が喫緊の課題となっている企業が在宅やサテライトオフィスでの勤務を認める動きは加速している。キッズスペース付きサテライトオフィスの開設は始まったばかりで、潜在的な需要を拾い上げられるかが今後の課題となる。
フリーランスの利用も
シェアハウスを運営するTAKE-Z(東京・台東)のキッズスペース付きオフィス「RYOZAN PARK大塚」(同・豊島)には1時間かけて通う利用者もいる。企業に勤めている人のほか、フリーランスの人も使う。料金は「フリーアドレス」の席で週5日利用した場合、月5万2千円(税抜き)。「専用ソフトを使って社内会議をしている人もいる」(TAKE-Zの竹沢徳剛社長)
みずほ証券の石沢卓志上級研究員は「教育産業など、より多くの企業が加われば裾野が広がる」とする。働き方が多様になっている今、主流の一つにまで昇華できるか。継続的な取り組みが必要となる。
(斎藤公也)
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