/

アカデミー賞を占う 『ラ・ラ・ランド』が圧勝か?

NIKKEI STYLE

第89回アカデミー賞の授賞式が2月26日(現地時間)に催される。1月24日(同)に発表されたノミネートでは、『ラ・ラ・ランド』が14部門(歌曲賞に2曲がノミネートされているのを2部門とカウントした)で候補になり、史上最多タイの記録を打ち出した。他を大きく引き離しているが、対抗するのはどの作品か。候補作の見どころを中心に、賞の行方を解説する。

ノミネートの段階で圧倒的な強さを見せるのが、最多14部門にノミネートされた『ラ・ラ・ランド』。ロサンゼルス、女優を目指す女性と自分の店を持つことを夢見るジャズピアニストの恋を、ロマンチックな歌やダンス、ジャズ音楽を交えて描くミュージカル映画だ。

監督は『セッション』で脚光を浴びたデイミアン・チャゼル。アカデミー賞では近年『シカゴ』『レ・ミゼラブル』が作品賞を受賞またはノミネートされているが、どちらもミュージカル劇の映画化。本作は映画オリジナルであり、作品賞受賞作『巴里のアメリカ人』のような「往年のハリウッド製ミュージカル映画の復活」と高く評価されている。

近年のアカデミー賞レースは、最多部門にノミネートされた作品とそれに次ぐ作品、2つあるいは3つが接近している展開が多かった。今回は『ラ・ラ・ランド』に次ぐ作品に6部門の差をつけている。しかも14部門の候補は『イヴの総て』『タイタニック』に並ぶ史上最多タイ。アカデミー賞の前哨戦、ゴールデン・グローブ賞では作品賞(コメディ・ミュージカル部門)、監督賞など史上最多7冠に輝いている。アカデミー賞で圧勝する可能性のある「頭一つ抜けた大本命」だ。

8部門ノミネートが2作品

『ラ・ラ・ランド』に対抗するのはどの作品か。8部門は2作。ひとつは『ムーンライト』。ゴールデン・グローブ賞でドラマ部門の作品賞を受賞している。マイアミの貧困地域を舞台に、黒人少年の成長を少年期、ティーンエージャー期、そして大人と3つの時代構成で描く。麻薬中毒者の母親との確執、父親代わりとなる麻薬密売人との交流、学校でのいじめ、男らしさが求められる黒人コミュニティー――骨太な題材を扱いつつ、色彩豊かな映像や静かな音楽を交えてゆったりとしたテンポで進む。アート性の強い感動ドラマに仕上がっている。

もうひとつは『メッセージ』。世界各地に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意思疎通をはかるためにアメリカ軍に雇われた言語学者ルイーズは、物理学者イアンとチームを組み、彼らの目的や、どこから地球にやってきたのかを探っていく。原作はアメリカSFファンタジー作家協会が選ぶネビュラ賞受賞作の短編小説『あなたの人生の物語』。独創性にあふれたストーリー展開、家族愛や「人生とは何か」というテーマ、幻想的なビジュアルで大人の鑑賞に堪えうるSFファンタジー感動作として評価されている。

6部門の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は俳優のアンサンブル演技が高く評価されており、俳優部門では最も多い3部門(主演男優、助演男優、助演女優)でノミネートされている。ボストンで便利屋として働く主人公は兄の死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。そこで彼は自分が16歳になる兄の息子の後見人に選出されたことを知る。自分に甥が養育できるかという不安や過去の悲劇と向き合っていく。

非白人俳優が7人候補に

昨年、アカデミー賞の俳優部門候補者が2年連続で白人だけだったことをきっかけに、アカデミー協会に批判が向けられた。そこで協会では、女性と非白人のアカデミー会員数を増やした(人数は不明)。その効果からか、今年は俳優部門の非白人候補が一気に7人に増えた(デンゼル・ワシントン、ルース・ネッガ、デブ・パテル、マハーシャラ・アリ、オクタビア・スペンサー、ナオミ・ハリス、ビオラ・デイビス)。

部門別で最も熱い戦いとなりそうなのが、主演女優賞だ。最有力は、ゴールデン・グローブ賞のドラマ部門で受賞した『エル(原題)』のイザベル・ユペールと、コメディ・ミュージカル部門で受賞した『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン。この2人に迫るのが1度受賞した『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』のナタリー・ポートマンと、『マダム・フローレンス!夢見るふたり』の大女優メリル・ストリープだ。

世界中の映画ファンが注目する授賞式はロサンゼルスで2月26日(日本時間27日)に開催される。

(ライター 相良智弘)

[日経エンタテインメント! 2017年3月号の記事を再構成]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません