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マンUとマンC、手間取る新監督の戦術浸透

今シーズンの開幕前、イングランドのプレミアリーグはともに大物監督を迎えたマンチェスター・シティーとマンチェスター・ユナイテッドが優勝を争うものと予想していた。しかし、ともにチームの形を整えるのに時間がかかり、首位チェルシー(勝ち点59)から引き離されている。(記録は24節終了、5日現在)

対照的なポグバとイブラヒモビッチ

マンチェスターUは昨季までチェルシーを率いていたモウリーニョ監督が就任。基本的に守備をがっちり固めて相手の特徴を消すスタイルなので、大枚をはたいて獲得したMFポグバが窮屈そうにプレーしている。

約束事をうるさく言われ、柔軟に動くことを許されていないのだろう。奔放で何をするのか予測がつかないポグバのダイナミズムが出ていない。もともと戦術的な理解が高いほうではないから、萎縮しているのかもしれない。

当初はトップ下に近いところに置かれていたが、ここへきて3列目でキャリックやエレラと組むようになり、落ち着いてきた。このほうが後ろから飛び出していくポグバの持ち味が出るだろう。

同じく新加入のFWイブラヒモビッチはすんなりチームにはまった。それは彼が非常に賢いオールラウンダーだからだ。中央に張る、サイドに流れる、中盤に引いてパスを受けてさばく、ということを相手の出方によって使い分ける。

あれだけの体があったら普通はポストプレー専門になるものだが、そうならない。プレーがワンパターンでないので、相手にとってはつかみどころがない。

35歳にもかかわらず、タフなプレミアリーグでも通用する頑健さを保ち、リーグ2位タイの15得点。ちょっとでもコースが空いたら、すかさずシュートを放つ得点感覚はやはりただ者ではない。

イブラヒモビッチと縦に入れ替わってくれる選手がトップ下にいると、攻めがもっとダイナミックになるが、その相棒がいまのところ見つかっていない。

新加入のMFムヒタリャンもポグバと同様、当初は萎縮していたような感じがする。しかし、だいぶチームに慣れ、攻めに変化をつけるコマになってきた。ボールを積極的に預かり、ちょっとずらしてラストパスを出す。

約束事を多くつくるモウリーニョのような監督のもとでは、プレーしながら「ここまではやっていいんだ」「これは許される」という感覚をつかんでいくしかない。

そうやって自分の持ち味を発揮し、結果を出せば、モウリーニョ監督が「それはダメ」とは言わないはずだ。結果を出しながら、許される範囲を広げていけばいいのだと思う。ポグバにしてもムヒタリャンにしても、信頼を勝ち得れば、もっとできるはずだ。

現在、首位のチェルシーから勝ち点14差の6位。しかし、昨年10月にチェルシーに敗れた後は15戦続けて負けがない。ある意味ではモウリーニョの戦術が浸透してきている。イブラヒモビッチを生かして、上位陣では少ない得点(36得点)をいかに増やしていくかがポイントになる。

マンチェスターCはバルセロナ(スペイン)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)で独特のスタイルを築いたグアルディオラ監督を招へい。勝ち点49(チェルシーと10点差)で3位につける。

イングランド向きにアレンジ必要

シーズン開幕当初は自由を与えられた攻撃陣が自在に動き、気持ちよくプレーしていたが、このところ混沌としてきている。デブルイネもシルバも新戦力のサネも自分で何とかしようと勝手にプレーしている。

トップのアグエロまでが中盤に引いてしまい、ノートップの状態でみんなが同じことをしている。ボール保持を大事にするのはわかるが、結局、ペナルティーエリアの外でボールを回しているだけで、相手に脅威を与えられない。

どうも中央が混み合いすぎて、手詰まりになっている。ウイングが中央に切り込んで、その外側をSBがオーバーラップすることが多いのでカウンターを食いやすい。プレミアリーグの相手はどこも攻めが縦に速いので、一発の逆襲速攻でゴールに結びつけられる。失点が29と多いのはそのせいだろう。

グアルディオラ監督がスペイン、ドイツで築いてきた自由度の高いポゼッションサッカーをイングランド向きにアレンジする必要がある。幸い、1月にデビューした新戦力のガブリエルジェズスが得点能力の高さを見せている。

クロップ監督が就任2年目のリバプールはその戦術がだいぶ浸透してきた。いいときは高い位置のプレスでボールを奪い、瞬時に攻めに出て、狭いところを崩す。

しかし、その手がうまくいかないときに、次に何をするかが見えない。みんなが同じテンポでプレーしているのも気になる。

ここ5戦で勝利がなく、下位のスウォンジー、ハルに敗れた。得点はリーグ最多タイの52点を記録しているが、失点も30と多い。

攻めの中心になるコウチーニョ、フィルミーノはうまいが、プレーが淡泊で、「何が何でも」という執念が足りないように映る。自分が楽しければそれでいいという感じで、ふらふらしている。

クロップ監督が率いたドルトムントでゴールを量産したレバンドフスキ(現バイエルン・ミュンヘン)のように、苦しいときに何とかしてくれるFWがいれば、だいぶ変わるだろうが……。

チームにパワー付け加える必要

マンチェスターCのグアルディオラ監督とリバプールのクロップ監督がプレミアリーグに新しい風を吹き込んだのは間違いない。そのうえで2人が結果を出すには、チームにパワーを付け加える必要があるのかもしれない。

勝負強さが欠けるという点ではアーセナルも同じ。サンチェス、エジル、ウォルコットら役者がそろっているが、大事なところで星を取りこぼす。

ベンゲル監督がきれいなサッカーで勝つという哲学を守っている以上、仕方がないことなのかもしれない。4-2-3-1のシステムを守り、自分たちのサッカーにこだわる。

今季のチェルシーのように相手によって戦い方を変えることはない。あっさり星を落とすのはそのためで、そこにベンゲル監督の限界があるような気がする。2連敗で4位(勝ち点47)に落ちた。

面白い存在なのが、勝ち点50で2位に浮上したトットナムだ。アルゼンチン人のポチェッティーノ監督が率いているにもかかわらず、トップ6では唯一、古き良きイングランドサッカーの香りを残している。

前線にケーン、アリ、孫興民、エリクセンら才人がそろい、縦に速く、肉弾戦をいとわない。私が好きなタイプではないが、「これこそイングランド」という感じで、豪快な攻めは気持ちがいい。

失点はリーグ最少の16。首位チェルシーより負けが少なく(2敗)、ホームでは10勝2分けとまだ負けていない。

順位を整理すると、残り14節でチェルシーと2位トットナムの差が9、3位マンチェスターCとの差が10、6位マンチェスターUとの差が14。

チェルシー、逃げ切る可能性高く

このままチェルシーが逃げ切る可能性が高い。何しろイタリア人のコンテ監督は現実的で、勝利を最優先して何でもする。

格好をつけず、5バックにして逃げ切り態勢をとったりもする。マンチェスターC、リバプール、アーセナルは監督がスタイルにこだわり、ほかの形を頑として受け付けないが、チェルシーは勝利のために割り切って自分たちの形を捨てる。

今季は力のあるトップ6が上位にそろっているだけに、今後、勝ち点1を確実に拾えるかどうかが大事になってくる。だからこそコンテ監督の現実路線がものをいう。

チェルシーがつまずくことがあると、波に乗れば強いリバプールかと思っていたが、ちょっと苦しくなってきた。チェルシーは昨季の不振で欧州チャンピオンズリーグ(CL)の戦いがないので、プレミアリーグに集中できるところがまた強みになる。

(元J1仙台監督)

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