2018年8月15日(水)

アキッパ 家の駐車場、1台から貸します

2017/2/1 9:20
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 人口減少や生活スタイルの多様化を背景に、大量生産、過剰サービスのビジネスモデルが曲がり角に来ている。代わりに台頭してきたのがシェアリングエコノミー。新企画「点検シェアリング」では、単独利用から共同利用への転換で生産性や利便性を向上させる企業の取り組みを追う。第1回は駐車場シェアの先駆け、akippa(アキッパ、大阪市)。

「akippa(アキッパ)」で駐車場として貸し出している自宅前のスペースで、利用者(左)と話すオーナー(兵庫県西宮市)

「akippa(アキッパ)」で駐車場として貸し出している自宅前のスペースで、利用者(左)と話すオーナー(兵庫県西宮市)

 2016年12月18日。兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場から徒歩10分ほどの民家に、オレンジ色のオープンカーが止まった。運転しているのはこの家の主ではなく、香川県に住む中村邦夫さん(59)。この日開催される全日本大学アメリカンフットボール選手権大会「甲子園ボウル」決勝戦を観戦するため、娘と朝から駆けつけた。

■会話通じ得意客

 「いつも駐車場探しで苦労する」ため、約3週間前からネット検索していたところ、アキッパを見つけた。「1日1080円と周辺駐車場に比べて安く、なにより試合後に駐車場が混雑しないのがいい」と満足そうだ。

 しばらくすると、駐車場オーナーの黒岩優さん(80)が家から出てきて、立ち話が始まった。「コミュニケーションをとることでリピーターになってくれる人もいる」。お互いの顔が見えやすいことで生まれる安心感も、シェアリングの魅力のひとつだ。

 イベントの多い甲子園に近い黒岩さんの自宅スペースはまさに一等地だが、駐車できる台数はわずか1台。黒岩さんは、数年前まで2台もっていた車を1台手放し持てあましていたところ、アキッパの「候補地探索」の営業マンから駐車場オーナーになりませんかと声をかけられた。

 通常、このような極小スペースは、コインパーキングの対象にはならない。利用者が通りすがりに「空車」のサインを確認してとめるというスタイルが一般的で、十数台を収容できるようにしなければ固定客がつかないためだ。自動精算機や監視カメラ、車止めなどフル装備の設備投資をするにはあまりに非効率で、採算が合いにくいという事情もある。

 だが、アキッパは、これを逆手に取った。「通りすがり」の「不特定多数」という利用者を「時間を守る予約客」と再定義することで、駐車場に不向きのスペースのシェアに成功した。予約客なら、1台だけ、昼間だけ、夏休みの期間だけ、今月は12日と15日と30日だけ、といった貸し手の条件に合わせたマッチングが可能だ。

 スペース所有者が駐車場オーナーになるハードルは極めて低い。予約で利用者の属性が分かっているため、過度な監視システムや車止めは不要。決済もクレジットカードによるオンラインの事前決済で料金が未回収になるリスクがない。たった1台分のスペースがあれば、それをネット経由でアキッパのサイトにデータ登録するだけで収入源にできる。

 黒岩さんの場合、繁忙期の夏には月20件ほどの利用があり、16年は年間約24万円の利益が出たという。

■安い料金も利点

 利用者にとってもメリットは大きい。大型イベントで混雑が予想されるエリアでも駐車スペースが事前に確保できる。利用料は場所によるが、1日数百円から数千円と通常のコインパーキングより3~5割程度安い場合が多い。最近では15分30円からと小刻みで使える料金設定を取り入れたことで、コンビニの仕入れ作業や企業の営業訪問、期間限定の商業施設の改装作業など、使い方の幅が広がった。

 アキッパがサービスを開始したのは14年。現在数万人いる利用者のうち約9割が個人だが、サービスが浸透するにつれ、スペースの貸し手に変化が出てきた。金谷元気社長によると「想像以上に駐車場を提供したい法人が多い」という。現在、トヨタレンタカー、住友商事九州旅客鉄道(JR九州)などがアキッパのサイトに登録し、保有する駐車場を一般に開放している。

 登録駐車場の数は現在首都圏や関西を中心に8900拠点。所有権を考えない場所の数だけでみれば、パーク24の「タイムズ」、三井不動産リアルティの「三井のリパーク」に次ぐ3位となっている。「駐車場台数ではなく拠点の数で勝負する」(金谷社長)として、17年中に現状の2倍強の2万拠点に引き上げる目標を立てる。

 アキッパが先がけて市場を作った空きスペースのシェアリングサービス。最近はパーク24、三井不動産リアルティの大手2社が参入するなど、競争が激化する気配だ。「大手は拡大スピードも早い」と金谷社長は危機感を隠さない。先駆者から追われる立場へ。これまで以上の知恵と機動力が求められそうだ。

(大阪経済部 西岡杏)

[日経産業新聞 2月1日付]

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