2019年3月20日(水)

豊作貧乏を克服 米IBM、知財収入急回復

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2017/1/30 6:30
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米IBMは2016年に8088件の米国特許を取得し、年間の特許取得件数で過去最高を更新した。かつて半導体技術が大半を占めた特許も今では人工知能(AI)やクラウドコンピューティングなどのソフトウエア技術が主流だ。「豊作貧乏」と揶揄(やゆ)された知的財産関連の利益も立て直しが進み、急回復の兆しをみせる。IT(情報技術)の巨人の復活には「知財」が欠かせない。

ジニー・ロメッティCEOは、8000件超の特許をもたらした従業員たちをたたえる=AP

ジニー・ロメッティCEOは、8000件超の特許をもたらした従業員たちをたたえる=AP

「8000件を初めて超えた記録的な特許を取得した従業員を誇りに思う」。今月9日、IBMのバージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)は、こうコメントした。特許取得数は前年より10%増加し、米企業の特許取得数ランキングで24年連続でトップとなった。

けん引したのは、IBMが知財注力4分野に掲げる「AI」、「クラウド・コンピューティング」、「ヘルスケア」、「セキュリティー」。16年の特許でも、AI関連の特許が1100件超と全体をけん引した。

中でも進んだのがヘルスケア分野でのAI活用だ。画像で心臓の形状や挙動の特徴を判別して、心臓病の表情を分類するAI技術を開発した。

そのほかにも、人間の声や周囲の音を認識して聞き分ける補聴器を開発。訓練を施すと煙警報器などの音を識別できるAI技術を用いて、一部の音を増幅したり遮断したりするスマート補聴器を開発したという。

16年のランキングでは米国勢ではアマゾン・テクノロジーが14位と前年の26位から大きくランキングを上げたほか、グーグルも5位で、IT分野で老舗のIBMを追走する。

「知的財産の利益にドライブがかかってきた」(IBMのマーティン・シュロッター最高財務責任者=CFO)。IBMが19日に発表した2016年12月期決算で知財関連利益は16億3100万ドル(約1900億円)と前の期比2・4倍に急増した。クラウドコンピューティングの普及で「メーンフレーム(汎用機)」やコンサルティングなどの既存事業が低迷し、四半期ベースで19四半期連続の減収が続くなか、知財関連は一定の業績の下支え要因となった。

IBMの知財関連利益は00年に年間16億6400万ドルを稼ぎ、その後も同利益は安定的に10億ドル前後で推移した。

当時、IBMの知財関連利益の柱は半導体だった。IBMは同社の経営を支え続けたメーンフレームの機能のカギを握る半導体の開発に力を入れてきた。

IBMはさまざまな企業から半導体の知財関連利益を得てきたが、13年ごろから知財関連利益全体の減少に拍車がかかり、15年には00年の6割減の6億8200万ドルにまで落ち込んだ。

低迷の理由は主に2つ。1つはIBMの半導体の技術がライセンス供与などを通じてある程度、業界に行き渡った。

2つ目は半導体の製造事業の売却だ。14年10月に半導体製造部門を米半導体製造受託会社に売却することで合意した。業績の変動が大きい半導体事業から次第に距離を置き、半導体関連の知財も社外に流出した。

今回、IBMは本格的に知財利益の立て直しにあたり「(IBMにとって)商売の規模が縮小している分野に目をつけた」(シュロッターCFO)という。比較的最近の技術でも、IBMにとってもはや経営資源を積極的に投入しない分野の技術は外部にソフトウエアのコードを早々に開放するなどして収入を得るとの考えだ。具体的な分野は明らかにしていないが、仮想化技術、データベース、コンピューターの基本ソフト(OS)などとみられる。

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