2019年2月20日(水)

キャッシュレス社会で米国の先を行くインド

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2017/1/27 6:30
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■日常の手続きが格段に楽に

インドはつい先日、別の革新的なシステム「インディア・スタック」の運用も開始した。これは複数のシステムが相互接続された安全性の高いデジタルインフラで、国民は住所や銀行の取引明細、診療記録、職歴、納税申告などの個人データを保管・共有できる。利用者はどの情報を誰に共有するかを管理し、生体認証を使って電子署名を行う。

携帯電話のアカウント開設を例に挙げよう。通信会社は利用者のIDと信用履歴を確認しなくてはならないので、これはどの国でも煩雑な手続きだ。インドでは、政府が求める書類を全て用意するのに数日かかることも多い。だが、インディア・スタックの一環である新しい「本人確認」手続きを使えば、親指の指紋か網膜をスキャンするだけで本人確認は完了し、数分でアカウントが開設される。診療履歴でも同じだ。必要に応じて医者や診療所と履歴を共有できる状況を想像してほしい。これは米国でも可能なはずだが、信頼できる中央当局が取り組んでいないので実現していない。

インディア・スタックは融資方法も変えるだろう。現時点では、一般的な農村部の住民は信用履歴や確かな認証情報がないため、零細事業のための融資を受けられない。だが今後は、銀行の取引明細や公共料金の支払い、生命保険証書などの情報を自分のデジタルロッカーから取り出せば、認証データに基づいて融資がほぼ瞬時に承認されるようになる。これは米企業が使っている信用評価サービスよりもオープンな制度だ。

インドのモディ首相は昨年11月、腐敗や偽札への対策として五百ルピー札と千ルピー札を全て廃止すると発表し、国内に衝撃を与えた。廃止された紙幣の総額は流通している通貨全体の約86%に及ぶ。この動きはインド経済を混乱に陥れ、苦痛をもたらし、広く批判された。それでも、長期的には確実にメリットをもたらす英断だった。デジタル通貨の促進とインド経済の近代化を加速させるからだ。

ノーベル賞を受賞した米経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏は1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、「メリットがコストを上回る」ため、モディ氏が進める通貨の段階的廃止とデジタル経済への移行に米国も追随すべきだと指摘した。米国をはじめ世界中で問題となっている格差と腐敗についての話題では「米国のような国はデジタル通貨に移行できるし、そうすべきだと固く信じている。そうすればこの種の腐敗を追跡できるようになる。プライバシーとサイバーセキュリティーという重要な問題はあるが、大きなメリットがあるのは確かだ」と強調した。

米国はまだキャッシュレス社会には移行できないが、シリコンバレーや国が発展途上国から学べることは多くある。

By Vivek Wadhwa(米カーネギーメロン大学シリコンバレー校フェロー、米デューク大学起業・研究商用化センター研究担当ディレクター)

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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