VR、適用分野広がる 認知症の症状も体感

2017/1/25 6:30
保存
共有
印刷
その他

仮想現実(VR)の活用が医療分野でも広がっている。映像の世界に入り込んだような感覚が得られるVRの強みを生かし、統合失調症や認知症で見られる症状を体験できるコンテンツが登場した。ヘッドマウントディスプレー(HMD)を使い、患者の実体験に基づく幻聴・幻覚などを見せる。周囲から見えにくい精神疾患の症状の理解につなげる。

昨年8月、リクルートホールディングスは自社研修でシルバーウッドのVRコンテンツを使った

昨年8月、リクルートホールディングスは自社研修でシルバーウッドのVRコンテンツを使った

米ジョンソン・エンド・ジョンソン製薬部門の日本法人、ヤンセンファーマ(東京・千代田)は統合失調症の症状を知るVRコンテンツ「バーチャルハルシネーション」を作成した。段ボール製の組み立て式ヘッドセット「ハコスコ」と、アプリを入れたスマートフォン(スマホ)を使って見せる。映像は上下左右に180度まで頭を動かして見られる。

同コンテンツでは統合失調症で見られる症状の一部、幻聴を体感できる。「生活音に重なって聞こえてくる幻聴」「過度におだててくる幻聴」など代表的な症状ごとに4つのエピソードを用意した。

「軽蔑、嘲笑、命令してくる幻聴」では、大学浪人中の架空の人物になる。コンビニエンスストアに入って店内を見ていると「おまえって大事なところでうまくいかないタイプだよな」「かわいそう」といった声が耳に入る。店員や他の客たちに蔑まれているように感じる。

同社は昨年6月に同コンテンツを制作した。もともとあったCG(コンピューターグラフィックス)版とは別にVR向けに実写版で新たに作った。統合失調症の患者や家族が集まる集会、医療従事者向けのセミナーで公開している。VR関連イベントでも提供し、内容に多くの人が衝撃を受け「ツイッター」などの交流サイト(SNS)で話題を集めた。

同社によると、国内の統合失調症の患者数は80万人にものぼる。だが症状が周囲から見えづらく、他人からはなかなか理解できない。同コンテンツで理解を深め、偏見を減らす狙いだという。

高齢者住宅を運営するシルバーウッド(千葉県浦安市)は、認知症の症状を体感するVRコンテンツを開発した。患者の監修を受け、幻覚など実際に表れる症状に近い状態を再現する。スマホを着用して使う韓国サムスン電子のHMD「ギアVR」を使って臨場感のある映像を見せる。

エピソードは現在全4話ある。第2話「私をどうするのですか」では、介護士が3階建てのビルの屋上から自分を落とそうとする。下を見ると地面が遠く、思わず足がすくむ。しかしふと気がつくと、彼らは自分を車から降ろそうとしているだけ。実際によくあることだという。

昨年12月に完成した第4話は認知症の20%を占める「レビー小体型認知症」の症状を体感できる。家の中に突然見ず知らずの人が現れて消えるといった幻覚を見せる。うつ病などと誤って診断されやすく、症状を知ってもらい認知を広げる狙いだ。

「症状の体験が、患者との接し方を変えるきっかけの変化や周囲の理解につながれば」(同社)と考えて制作を決めた。介護士の集まりや就活イベントなどで提供する。今後は介護士の客観的な視点から認知症を捉えるVRコンテンツの制作も企画する。すでにリクルートホールディングスが昨年8月、シルバーウッドが運営する千葉県船橋市内のサービス付き高齢者住宅で同コンテンツを使った自社内の研修を実施している。

(企業報道部 池下祐磨)

[日経産業新聞 2017年1月25日付]

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]