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いつも山頂を 亡き師匠が語った稀勢の里との秘話

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2017/1/25 6:30
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「稀勢の里が幕下のとき、巡業で(まだ幕内に上がる前の)白鵬とぶつかった。(何度も)これから当たるから、今が大事だよと言ったことがある。『立ち合いで当たるふりをして、バーンといなしてみろ』と。すると白鵬はもんどり打った。強くなる人は、負けた相撲を忘れない。もしかして立ち合いで変化するかも、いなすかもと、そういう恐怖感を植え付けなくてはいけないと言った。本人は何でそんなことを言うんだろうという感じだったけれど、僕は3~5年後のことを考えていた」

04年11月、新入幕を果たし、九州場所の番付表を手にする稀勢の里=共同

04年11月、新入幕を果たし、九州場所の番付表を手にする稀勢の里=共同

04年に18歳3カ月で新入幕、しこ名を「稀勢の里」と改めた。06年には19歳11カ月の若さで新小結に。大関昇進への期待が高まったが、三役で足踏みが続いた。

「どうみても(06年秋場所で右上手を引き初めて)朝青龍に勝ったあたりから、まわしを取るようになった。再三注意しているけれど、あれは取りにいったのではなく、たまたま右上手が引っかかっただけ。右上手を取っても、芸がないですよ。技がない。上手を取ったら、お客さんがワーッと沸いて、あとは完全に勝てるというものでもない。はっきり言ったんですよ。おまえは無駄な相撲を随分とっている、何番損したかと。きれいに勝ちたい、格好よく勝ちたい、そういうのが心の中に見える」

「プレッシャーに弱いのはダメ」

「やはり稀勢の里の相撲は、自分の体力を生かした、直線的な相撲ですよね。突き押し、押し突き、押し切れなくても、突ききれなくても、あとは前まわしを頂くような感じで攻める。もしくは左が入ったら、一気におっつけながら出る。とにかく相手に構えをさせない、速攻相撲というか、まわしを取ったとしても自分に有利なまわしの取り方をする。二本差されて、抱えて、こらえてこらえて、やぐら投げをして勝つような相撲ではない」

「若くして関取に上がった。まだ10代だったからね、かなり重圧があったと思うよ。それはいつも心の中で感じていました。『そういう道を歩いていかないといけないから、それらしく生きなくてはいけない』。そういう話をいつもしました。稀勢の里は往々にして重責に弱い。親方や世間からの期待感がないときは自由自在に、奔放に力を出せる。プレッシャーに弱いのはダメ。自己解析していくとか、努力をしないといけない」

重圧に打ち勝ち、親方が亡くなった直後の11年九州場所後に大関とりが成就。持ち前の馬力や突き押し、左おっつけに加え、親方が案じた四つ相撲も右上手を引けばぐっと安定感を増し、ついに綱に上り詰めた。まな弟子への苦言が多かった親方も、10年九州場所で横綱白鵬の連勝を63で止めた一番を話す姿は誇らしげだった。

「(前人未踏の69連勝の記録を持つ)双葉山の領域に行かせていいものかと、夜中の2~3時まで、2年半分くらい(白鵬の映像を)見て自分なりに考えた。朝、2人で話して、『白鵬はテレビに出ていて、背中、お尻、体を見ても、いつ稽古をしているんだと。おまえは勝てる。チャンスと思わなくてはいかん』と何点か注意を与えた。(立ち合いで)張ってくるか、かちあげてくるだろうけれど、我慢して脇を固め、あごを引いて突き押しでいってみろと。押していくと(白鵬は)必ず右から差していくから、そのときにおっつければいい。右手を抜いて、体を左に移していつも泳ぐから、そこを下から浮かせるようにすれば、さっと下がるはずだと。下がったらチャンスだから、頂くようにまわしを取ればいい。間違いなく、立ち合いがうまくいけばいけるからやってみろと。最後に何があってもガッツポーズはするなよ、報道の人が来ても『何かありましたか』と平静にいけと」

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