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真っ向勝負 ぶれぬ姿勢 稀勢の里の相撲道(上)
相手、たまらず変化

2017/1/24 2:30
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「変化」といい、「注文」という。立ち合いで相手の虚を突く奇策の数々は、相撲の常道を外れた外連(けれん)とみなされる。稀勢の里の一直線ないちずさが、そういう脇道へと相手を追いこんでしまうのか。あの白鵬も稀勢の里戦では度々変化気味に立っている。

稀勢の里(奥)の態度はだれが相手でも変わらない

稀勢の里(奥)の態度はだれが相手でも変わらない

2013年夏場所14日目の全勝対決。白鵬は左へやや動く立ち合いでペースを握り、激闘を制した。15年春場所は右に動くと、真っすぐ突っ込む稀勢の里を軽く突いて転がした。批判を受けると「あれは変化じゃない。みなさん、もっと相撲を勉強して」と抗議した。

力は認める。だから正面衝突はしたくないけれど、あまりに純で、すれたところのないこの人気者にはどうしても負けたくない。かつて双葉山に迫る連勝を稀勢の里に止められた大横綱の胸にはそんなやっかみ混じりの意地があり、それで体がつい動いてしまうのか。

稀勢の里の周囲には、敬意や対抗心といった感情が混然と渦巻いているように見える。実力を認める日馬富士は頻繁に出稽古に足を運ぶ。昨年秋場所で初優勝した豪栄道は「(稀勢の里が注目され)悔しかった」と負けん気をあらわにした。

同じ二所ノ関一門の琴奨菊も強烈な対抗心を隠さない。大関陥落となった大不振の初場所もこの一番だけは別人の気迫をみせ、稀勢の里に唯一の黒星をつけている。

稀勢の里の態度はだれが相手でも変わらない。初日から千秋楽まで小細工なし。22日の優勝インタビューでは「自分の相撲を信じて、もっと稽古して強くなりたい」とファンに誓った。「自分の相撲」とは、注文相撲とは無縁の真っ向勝負にほかならない。

だから、16年春場所の琴奨菊戦は周囲を驚かせた。当たった直後、右に動きながら突き落とし。琴奨菊をあっさり横転させ、八角理事長(元横綱北勝海)を「あんな稀勢の里、みたことがない」と仰天させた。「今までが正直すぎた」と不問に付したのは、小才の利かない稀勢の里の正直さを尊くも思い、歯がゆくもあったからだろう。

真っすぐ突き、真っすぐ押すが、白鵬や日馬富士が多用する"打撃技"は好まない。優勝5回の浅香山親方(元大関魁皇)は「相手は恐怖を感じない分、稀勢の里は(白鵬や日馬富士よりも)くみしやすい。格下に取りこぼすのは、そういう理由がある」とみる。

「情が移るから、ほかの部屋の力士とは必要以上に親しくするな」。先代師匠、元鳴戸親方(元横綱隆の里)の生前の教えを守り、力士同士のなれ合いを避けてきた。

23日の記者会見。「(先代は)横綱は孤独だと言っていた。どういう意味かはまだわからないけど」と稀勢の里はつぶやいた。だが、もともと孤塁の人である。なれ合わず、いちずに真っすぐに。横綱になってもそれは変わらないのだろう。

19年ぶりに誕生する日本出身横綱、稀勢の里。その魅力や人気を集める理由に迫る。

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