/

侍ジャパンの伝統受け継ぐ 西武・秋山の覚悟

編集委員 篠山正幸

野球の日本代表「侍ジャパン」の魂は受け継がれるだろうか。「守りと走塁が、打つより大きなウエート(を占める)というか、日本というチームのなかでは象徴とされることだと思う」。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた西武・秋山翔吾(28)の抱負は世界一奪回のためのカギのありかを示しているようだ。

「今は1年間戦える体力づくり」

階段上りで足腰を鍛える

2011年のプロ入りから6シーズンを経て、日本代表の中心選手の1人となった秋山は初の大舞台を前にして落ち着き払っていた。

例年、西武第2球場で行っていた自主トレの場を静岡・伊豆に移した。

今月中旬、砂浜のダッシュや階段上りなどランニング中心の練習を公開し、「今は1年間戦える体力づくりを考えている。ここで慌てるくらいなら(打撃)マシンのあるところでやっている」と語った。

3月のWBCに合わせるには例年より1カ月ほど早く、実戦モードに仕上げる必要がある。しかし、秋山は調整を急ぐなら、マシンがある埼玉・所沢の本拠地でやればいいのだが、その必要はなく、体づくりからじっくり取り組む、という。

06年、09年と創設期のWBCを連覇した日本は、13年大会で準決勝敗退。日本は侍ジャパンの活動を恒常化、選手の代表への意識を高めてもらうことで、王座奪回を期している。

小久保裕紀監督もメンバーの大幅な入れ替えを極力避け、チームとしての一体感を第一に考えているようだ。

秋山の調整をみると、こうした意図は選手によく浸透していると見ていい。

2月に予定される代表の合宿を含め、さらにアピールが必要では、との質問にも秋山は「強化試合などこれまでにもうアピールは終わっていると思う。今までの経験を出してくれるだろう、ということで選ばれていると思っている」。

チームを引っ張っていくという意識が強くなった(右端が秋山)

この余裕は一昨年の国際大会プレミア12、昨年の強化試合などに招集され、WBC代表の第1陣として選出された「コア=核」となるメンバーに共通したものだろう。代表としての覚悟を決めたうえで、じっくりと選手は自分の調整に専念している。

落ち着きの背景を探ると…

秋山の落ち着きにはあの苦い記憶も生かされているのではないか、という気もする。

デビュー3年目の13年、全144試合に出場し、打率2割7分をマーク。しかし、いよいよ主軸へと期待された14年、ばってきされた3番の打順で打てず、調子を落としてしまった。フル出場はならず、打率2割5分9厘。

より厳しく自己を見つめ直した結果が、15年のシーズン216安打の日本記録樹立につながった。持ち前のバットコントロールに加え、「前の打席を引きずらず、新たな、すっきりした気持ちで次の打席に入る」といった気持ちの制御術を身につけた。

1つの壁を越えた人ならではの風格が出て、今季は「引っ張ってもらうだけの選手ではいけないと思うんで、選手を引っ張って、背負っていけるよう浅村(栄斗)と強力しながらやっていきたい」とチームの中での自覚も十分だ。

少年たちに打撃を指導

「伝統」という力は目にはみえないが、確実に存在するということも秋山の言葉は示唆していた。

日本の象徴は守備と走塁。その例として過去のWBCからは、06年大会の川崎宗則(カブス、当時ソフトバンク)の芸術的な滑り込みや09年大会決勝で左翼左への打球に果敢に突っ込み、二進を図った打者走者を刺した内川聖一(ソフトバンク、当時横浜=現DeNA)のプレーを挙げた。

「きれいに取る1点より重い1点」

さらに意識しているのは稲葉篤紀(日本ハム)や、今回も参戦する青木宣親(アストロズ、当時ヤクルト)がこなしていたヒット・エンド・ランだという。

「1つでも前の塁に行っておくと、次のバッターが打つときに全然違う。西武でも同じだけれど、1つ前の塁を狙うということは変わらない。そういう野球ができれば相手にもダメージになる。(同じ1点でも)きれいに取る1点より重い1点になる」

日本の伝統の守備と走塁を意識している

日本代表の伝統を意識しているのは秋山だけではない。06年、09年の優勝に貢献した青木は「先輩たちから教わったこともあったし、今度は僕がそれを後輩たちに伝えていけたら」。

13年大会から4年。秋山をはじめ、大谷翔平(日本ハム)、菊池涼介(広島)、鈴木誠也(同)ら、WBC初体験のメンバーも少なくないが、伝統というバックグラウンドがあるという意味で、まっさらの「初顔」ではない。

秋山のいう守りや走塁は記録には残りにくいが、それらを重んじる伝統や文化、いわば無形の力に日本の活路があるといえるだろう。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン