初心者の投信選び アクティブ型は運用成績確認を

2017/1/28 5:40
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「初心者の投信選び」の3回目は、運用担当者の腕で市場平均を上回る成績を狙うアクティブ(積極運用)型投資信託を取り上げます。ただし成績が不振な例も多く、慎重に選ぶことが大切です。発表者は屋久仁達夫さんです。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。
宗羽士郎(そうば・しろう、23=中)大学院1年生。中堅証券「宗羽証券」創業家の一人息子。IT好き。
屋久仁達夫(やくに・たつお、54)大手製造業の技術職。定年を控え年金・介護など老後資金に関心。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。
宗羽士郎(そうば・しろう、23=中)大学院1年生。中堅証券「宗羽証券」創業家の一人息子。IT好き。
屋久仁達夫(やくに・たつお、54)大手製造業の技術職。定年を控え年金・介護など老後資金に関心。

屋久仁 過去10年で好成績だった日本株のアクティブ投信の一覧をみて下さい。1位の「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」の基準価格は平均年率約12%で上昇し、10年で3倍強になりました。JPMザ・ジャパンも2.3倍です。同期間の東証株価指数(TOPIX、配当込み)は1.1倍なので大違いですね。

 上位の投信に共通点はあるのですか。

屋久仁 「☆」は目論見書で中小型株を投資対象として記載している投信です。☆以外でも組み入れ銘柄に中小型株が目立ちます。中小型株の主要指数の一つであるジャスダック指数が過去10年で1.4倍になるなど、中小型株はTOPIXに比べて堅調でした。また大型株と違って担当アナリストが少ないので、個性的な成長銘柄を独自に発掘できれば、差をつけやすい面があります。

宗羽 さすがプロに任せるだけありますね。

屋久仁 要注意なのは、アクティブ型は成績の差が大きいことです。例えば日興エボリューションは、急成長する企業をいち早く見つけて投資することを目指しますが、実際には同期間で基準価格が5割以上も下落しました。

宗羽 え?

屋久仁 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、2016年6月末までの5年間で日本株指数を上回った日本株アクティブ型投信は4割です。どの投信を選ぶかで大きな差がつきます。

宗羽 気になる投信がある場合、どう判断したらいいのですか。

屋久仁 まず運用会社のサイトで目論見書や運用報告書を見ることです。投資方針や組み入れ銘柄、過去の運用成績などがわかります。ただし最低5年は運用履歴があるものを選びたいですね。アクティブ型は成績を見ないと運用の腕が分からないからです。

宗羽 成績を見るポイントを教えて下さい。

屋久仁 同種の投信同士で比べることが大切です。例えば中小型株指数は過去10年堅調だったので中小型株投信がTOPIXに勝っていても、運用担当者の腕とは言い切れません。

宗羽 なるほど。

屋久仁 対象期間全体の成績だけでなく、各年の成績もチェックします。特定の年だけ大きく勝ったため全体がよく見えることがあるからです。投資情報会社モーニングスターのサイトで「累積収益」という項目を見ると、SBIのジェイリバイブは同種の投信の中で上位の成績を維持した年が多かったことがわかります。成績が同じくらいなら、運用コスト(信託報酬)が低い方を優先します。

宗羽 純資産総額は大きい方がいいのですね?

屋久仁 コストが最重要なインデックス型は規模の利益でコストを下げやすいので、純資産の大きさは重要です。しかしアクティブ型は運用内容がより重要です。規模が大きくなると個性的な成長銘柄などの組み入れ比率が下がり、成績が平凡になることがよくあります。例えば日本株アクティブ投信で最大の「フィデリティ・日本成長株・ファンド」の過去10年の成績は、配当込みTOPIXをやや下回っています。

 でもあまり規模が小さいと償還されるリスクがあるといわれますね。

屋久仁 はい。純資産で最低10億~20億円程度は欲しいですね。アクティブ型の場合、規模は小さすぎず大きすぎずというのがいいかもしれません。

宗羽 ほかに注意点は?

屋久仁 資金が入り続けているかも大切です。イボットソン・アソシエイツ・ジャパンが運営する「投信まとなび」など様々なサイトで確認できます。資金流出が続くと、運用担当者は本来持ち続けたい銘柄でも売却せざるを得ず、運用しづらくなりがちです。JPMザ・ジャパンは13年後半に利益確定売りなどで大量の資金流出が起きました。これが14年以降成績が鈍化した一因との見方もあります。ジェイリバイブも16年は資金流出が多かったのがやや気がかりです。

 買った後も継続的なチェックが必要ですね。

屋久仁 はい。長く成績が良かった投信が急に失速することは日本でも米国でもよく見られるからです。過去の好成績が将来もあてはまるとは必ずしも言えないのが、アクティブ型投信選びの難しさです。

宗羽 なぜ急に失速することがあるのですか。

屋久仁 (1)過去に成功した運用方針が環境に合わなくなった(2)規模が大きくなり自由に運用できなくなった(3)大量の資金流出で有望銘柄を売った(4)運用担当者が交代した――などが主な理由です。

宗羽 選ぶのは簡単ではなくても、アクティブ型で大きく値上がりする可能性を捨てたくないです。

屋久仁 資金の中心部分は低コストのインデックス投信で世界全体に幅広く投資して平均的な成績を確保し、理念や運用能力を信じられるアクティブ型投信があれば、資金の一部を投じて全体の成績の底上げを目指す手法も一案です。コア(核)・サテライト(衛星)戦略と言います。

■下落時の最大損失も考慮
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン最高投資責任者 小松原宰明さん
 投資信託を選ぶとき、相場下落時の最大損失率の目安も頭に入れておきましょう。投信情報サイトでは個別の投信ごとに「標準偏差(リスク)」という数値が表示されています。少し難しい言葉ですが、この数値の2倍が1年間の最大損失率のメドになります。統計学上、値動きが標準偏差の2倍の範囲でおさまる確率は95%なので参考になるのです。
 日本株全体、例えば東証株価指数(TOPIX)に連動するインデックス投信の標準偏差は20%前後です。つまり相場が大きく下げるとき1年間でこの2倍、40%程度の下落は見込んでおくべきだということです。アクティブ投信では標準偏差が30%前後の例も珍しくなく、この場合、最大下落率は60%前後とみる必要があります。リターンだけでなく、リスクも頭に入れた投信選びが大事です。
(聞き手は編集委員 田村正之)
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