帝人、社員の発想 新事業に

2017/1/20 6:30
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帝人は社員公募のアイデアをもとにした新規事業の育成に乗り出した。繊維事業から医薬・医療、IT(情報技術)事業など多角化を進めた同社は2014年度から社内の意識やノウハウの融合を目指し、ビジネスコンテストを開催。優秀アイデアについて事業性を判断することにした。次なる成長の柱を探す同社が、「ヒョウタンから駒」を狙えるか。

社員向けにアイデアの着想のためのワークショップも開いた

社員向けにアイデアの着想のためのワークショップも開いた

帝人が社内で開くビジネスコンテスト「ワンテイジンアワード」は、新しい事業につながりそうなアイデアを社員から募集する。社員の投票などで優劣を競う。優れたアイデアや面白いアイデアは、実際にプロジェクトチームを組織して実現させるという計画だ。14~15年度で合計900件の応募があった。

アイデアは何でもよいわけではない。既存事業の技術やノウハウを融合したものや、顧客や消費者の課題を解決するサービスなど、同社が目指す「ソリューション提供型」企業の実現につながるものが求められる。

過去2回のコンテストを経て事業化を検討しているのは、社員評価が高かった4案件だ。詳細は明らかにしていないが、1つは高齢者介護や呼吸器系の疾患に関するヘルスケア事業関連のアイデアだという。素材やIT(情報技術)の技術を活用し、患者の生活の質向上を目指す。素材技術を活用した宇宙産業領域のアイデアなどもある。

鈴木純社長を含めた帝人幹部が事業性を評価する「2次審査」を今春に実施。ゴーサインが出たアイデアは事業化を視野に人員配置などの対応を検討する。

帝人は現在、新事業推進本部で将来の柱に育てたい事業を手掛けている。16年には大麦を使った食品原料をオーストラリアのベンチャーと共同で開発。リチウムイオン電池のセパレーター(絶縁材)の加工なども始めた。だが、今回の取り組みは新事業推進本部の取り組みとは別に、新しい種をまく狙いだ。

もともとワンテイジンアワードは様々な事業領域を持つ帝人グループで、組織や地域などの垣根を越えて社員の一体感を醸成するための位置づけだ。ただ、アイデアを出すだけでは効果は限られる。優れたアイデアは埋没させず、真剣に事業化を検討することで一体感はさらに醸成されると判断した。

コンテストでは、実際の事業計画まで立てることは求められていない。そこで外部コンサルタントの力を活用して、「2次審査」へ収益性などを含めた事業計画の策定を進める。コンサルタント紹介のビザスク(東京・新宿)が展開する支援サービスを活用する。

帝人が新事業の立ち上げに力を注ぐのは、グループ内に持つ幅広い事業のノウハウを活用できる余地がまだ大きいとみるからだ。

炭素繊維やヘルスケアなど将来性の高い事業は手掛けており、1月には米国の自動車部品メーカー、コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックスを約840億円で買収するなど巨額投資も続けている。だが、既存事業の延長線上だけでは行き詰まるとみる。

シェア拡大に躍起になるより、社会の構造変化に対応して全く新しい事業を育成することで経営のポートフォリオを転換していくことで、打開を目指す。「帝人は変わり続けている」(鈴木社長)とボトムアップのアイデアにも関心を寄せるのはそのためだ。

社内イベント発の事業が育つか、成否は未知数。だが、イベントを通じて社員の意識を高められれば、一定の成果は得たということなのかもしれない。

(企業報道部 湯沢維久)

[日経産業新聞 1月20日付]

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