2019年5月23日(木)

[FT]トランプ新政権、「3T」に中国との衝突リスク

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2017/1/20 6:30
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Financial Times

トランプ次期米大統領とロシアの関係を取り巻く疑問は、ショッキングで興味をそそる。だが、こうした疑問は、もっと重要でもっと危険な物語から関心をそらしている。トランプ政権が中国との衝突――それも軍事紛争に発展する恐れさえある衝突――に向かっている兆候が増えているのだ。

最新の兆候は先週、トランプ氏が米国務長官に指名したレックス・ティラーソン氏の指名承認に向けた公聴会で出てきた。ティラーソン氏は、中国が南シナ海で建設している一連の人工島に対し、米国の態度がかなり硬化する可能性を示唆した。人工島建設プログラムをロシアによる違法なクリミア編入になぞらえ、トランプ政権は中国政府に対し、「これらの島に対する中国のアクセスは許されない」との明確なシグナルを送る意向だと述べた。

この発言は、中国が軍事施設を建設してきた人工島を封鎖する米国の脅しのように聞こえた。中国はほぼ確実に、海か空から、そのような封鎖を破ろうとするだろう。そうなれば、キューバ・ミサイル危機の近代版の舞台が整う。中国の政府公認メディアはティラーソン氏の発言に猛然と反応した。国家主義の新聞グローバル・タイムズ(環球時報)は「大規模戦争」について警告し、英字紙チャイナ・デイリー(中国日報)は「中国と米国の破滅的な対立」について論じた。

■台湾、ティラーソン、トレードの3T

ティラーソン氏が議会公聴会で、意図した以上に踏み込んだことは十分にあり得る。同氏の発言は、米国の唯一の関心事は太平洋における航行の自由であり、米国はこれらの島に対する中国の主権についてはどんな立場も取らないという米国の公式な立場と矛盾しているように見えた。だが、ティラーソン氏は自身の発言を撤回したり明確にしたりすることを一切していない。そして、同氏の証言は、トランプ政権が中国との対立を決意している唯一のしるしではない。台湾と貿易に関する米国の政策の変更は、同じ方向を指し示している。

米国と中国が国交を正常化させた1979年以降、米国は、台湾は単なる反抗的な一省だとする中国政府の「一つの中国」政策を尊重してきた。その結果、もう何十年も、米国の指導者は誰一人として台湾の指導者と話をしていない。だがトランプ氏は昨年12月、台湾の蔡英文総統から電話を受け、この前例を破った。トランプ氏のサプライズではよくあるように、次期大統領は単にうっかりミスを犯したのかもしれないと言う人もいる。しかし先週、トランプ氏はメディアのインタビューに応じ、中国政府が貿易に関して譲歩しない限り、トランプ政権は実際に一つの中国政策を捨てるかもしれないと強調した。中国は繰り返し、台湾の独立を受け入れるくらいなら戦争を始めると主張してきたことから、これもまたリスクの高い政策だ。

トランプ氏にとって、本当に肝心な問題は恐らく貿易だ。選挙戦の最中には、「我々は中国との貿易で5000億ドルの赤字を抱えている。(略)中国が我が国をレイプするのを許し続けるわけにはいかない」と非難していた。大統領の座を勝ち取った後に同氏が保護主義を捨てると期待していた人々は、すぐに失望させられた。それどころか、著名な保護主義者で「Death by China(中国がもたらす死)」と題した著書・映画の作者であるピーター・ナバロ氏が、ホワイトハウスを拠点とする新組織、国家通商会議のトップに任命された。すでに、米国が中国製品に関税を課したり、新たな輸入税が導入されたりすることが取りざたされている。

3つのT――台湾、ティラーソン、トレード(貿易)――を合わせると、トランプ氏の米国が中国との対立に向かっていることにはほとんど疑いの余地がないように思える。中国自身が習近平国家主席の指揮下で著しく国家主義的な方向へシフトしたことを考えると、なおのこと対立の可能性は高い。

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