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福井総裁「景気上振れ抑制」 06年7~12月日銀議事録

ゼロ金利政策の転換点

日銀は20日、2006年7~12月の金融政策決定会合の議事録を公開した。福井俊彦総裁(肩書は当時、以下同じ)は政策金利の引き上げを決めた7月の会合で「金利水準を維持し続けると、経済・物価が大きく変動するリスクにつながる」と述べ、景気の上振れを抑える目的で利上げを決断していたことが分かった。利上げを受け、日本経済には約5年4カ月ぶりに金利が復活し、金融政策の正常化が進んだ。

福井元総裁は量的緩和の悪影響を警戒していた

利上げはゼロ金利政策を解除した2000年8月以来。9人の政策委員が全員一致で利上げを決め、政策金利は年0%から年0.25%に引き上げられた。06年3月に決めた量的緩和政策の解除に続き、景気の底割れとデフレ対策で導入したゼロ金利政策に終止符を打つ転換点になった。

当時、直近5月の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率は0.6%。設備投資も高い伸びを記録していた。春英彦審議委員は会合で「デフレリスクが後退する一方、ゼロ金利による緩和効果が拡大する状況になっている」と指摘。岩田一政副総裁も「経済が正常に戻るプロセスにおいて、金利機能の回復は自然なことである」と続いた。

金融市場も7月の会合での利上げを織り込んでいた。福井総裁は「当面の政策金利の認識は我々と市場との間で齟齬(そご)がない状況」と主張。水野温氏審議委員も「政策変更を見送った場合、サプライズになり、市場が混乱する」と述べた。武藤敏郎副総裁は次の利上げについて「経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行う」と強調している。

これに対し、政府代表の赤羽一嘉財務副大臣は「インフレ懸念が見られない状況で、解除は必ずしも急ぐ必要はない。しかし解除される場合は今後の利上げが連続的ではないとメッセージを発信していただきたい」と要望。中城吉郎内閣府審議官も「当面の間、極めて低い金利水準による緩和環境を維持していただきたい」と続き、早期の再利上げにクギを刺した。

金利正常化に動き出した日銀だが、利上げ直後の8月に思わぬ落とし穴が待ち構えていた。総務省が5年に一度、家計の消費行動を正確に反映させるため、対象品目を見直すCPIの基準改定だ。新しい指数ではCPIの上昇率が1~7月平均で0.5ポイント下落した。

福井総裁は9月の会合で「新基準でみても物価は持ち直し傾向にある。先行きもプラス基調との見方を変える必要はない」と断言。ところがその後、新型携帯電話の値下げや原油安などで再び下落圧力がかかり始める。国内では家計部門が弱含み、海外でも米国景気を中心に変調の兆しがみられるようになる。

岩田副総裁は12月の会合で「CPIは消費の伸び悩みが続くことを想定するとマイナスもあり得る」と予測。実際、CPIは07年以降、水面下に再び沈み、デフレ状態に後戻りする。政府は7月の利上げ後にデフレ脱却宣言をいったん検討したが、先送りを余儀なくされた。その後、日銀は翌07年2月に再び利上げを実施したが、08年9月のリーマン・ショックで世界経済が深刻な状態に陥り、日銀は「利上げを急ぎすぎた」との批判を受けることになる。

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