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色とりどりの自主トレ 敵も味方も互いに刺激

スポーツライター 浜田昭八

 野球の新コラム「ネット裏から」を月1回のペースで連載します。担当はスポーツライターの浜田昭八氏。1956年から野球を中心にスポーツ取材ひと筋で60年になります。プロ、アマ、大リーグのタイムリーな話題を届けます。

12、1月は野球協約でいうところの「ポストシーズン」。プロ野球はチームぐるみの練習や試合ができない。長いペナントレースを戦ってきた選手をリラックスさせ、肉体を保護するためだ。それなりに意味のある休みだが、解き放たれたように遊びほうける不心得者が必ずいた。太り過ぎや体調不良のままキャンプインする。

ソフトバンクの新人合同自主トレでダッシュする田中正義(中央)ら=共同

そこで球団は「合同自主トレーニング」という名目で1月10日ごろから選手を1カ所に集め、球団の費用と管理のもとにキャンプ準備の調整をさせた。そこまで面倒を見てやらねばならないプロ選手がいたとは情けない。

ところが、これに対して選手会が野球協約違反だと申し立てた。合同自主トレという名の"管理トレ"は廃止されたが、困ったのは新人選手である。プロの厳しい練習、長期ペナントレースに耐える体をつくるトレーニングの方法がわからない。ということで、新人だけは「新人合同自主トレ」を球団の主導で行えるようになった。

ドラフト下位指名ほどキビキビ?

正月明け早々に各球団の新人が合宿所入りする。そして、キャンプインまで球団トレーナーの指導でトレーニングを積む。名前、背番号入りのゼッケンをつけたジャージー姿のプロ1年生が、戸惑いながら動く姿には個性がにじみ出て興味深い。心なしか、ドラフト下位指名組ほどキビキビと動いてアピールしているように見える。

新人以外の選手は文字通りの自主トレで、キャンプに備えねばならない。阪神・金本知憲監督のように、トレーニング不足のままキャンプ地の沖縄へやってきたら、早々に甲子園へ帰すと宣言している首脳陣もいる。西武時代の広岡達朗、森祗晶監督はベテラン、中堅でもおかまいなしに、動きの悪い選手をB班(2軍)キャンプへ追いやったものだ。

最近の自主トレは色とりどりだ。1人でやるのは寂しいし、効率も良くない。そこで仲のいいチームメートや他球団の知り合いを誘う。リッチな選手は暖かい海外へ向かう。巨人・阿部慎之助は小林誠司を伴ってグアムへ。自身のトレーニングと並行して小林に捕手術を伝授した。球界一の高給取りになったオリックス・金子千尋は投手仲間の比嘉幹貴とともにロサンゼルスへ向かった。

他チーム選手との交流も盛んだ。阪神・糸井嘉男はオリックス時代から、ソフトバンク・柳田悠岐と組んでトレーニングをしてきた。ほかにも、巨人・菅野智之とオリックス・西勇輝、ヤクルト・山田哲人と阪神・北条史也、ダルビッシュと日本ハム・大谷翔平、阪神・藤浪晋太郎らが一緒に汗を流した。

共通の友人を通して親しくなったり、オフのイベントで知り合って意気投合したりしたケースが多い。柳田が糸井から打、守、走のさまざまなヒントを得て、一昨年の「トリプルスリー」につなげたのは、よく知られている。西は「他球団の練習方法や、エースの考え方、細かい点ではグラブの使い方など、学んだことは多かった」と言っている。

グアムでトレーニングする柳田。糸井から様々なヒントを得た=共同

イチロー、目見張る仕上がり具合

その一方で、敵味方になって戦う者が、親しくなりすぎるのには弊害もあると見る向きもある。3球団で監督経験がある楽天・星野仙一取締役は、監督時代から敵味方の選手が親しくなるのを嫌った。情が移り、厳しく戦えないことがあるかもしれないからだ。

とはいえ、高校や大学の同窓がオフに集まったり、試合前に親しくあいさつを交わしたりすることまでは禁じられない。お互いに有益な情報交換もあるだろうから、そこは野球人の良識に任せるしかない。

それは別にして、自主トレの時期になるといつも、大リーガーのイチローの姿が思い浮かぶ。毎年のことだが、古巣オリックスの神戸の施設で自主トレを積む。昨年暮れからトレーニングしているが、その素晴らしい状態には目を見張るばかりだ。

キャッチボールひとつをとっても勢いが違う。1月10日に神戸で合同トレを開始したオリックスの新人たちが、その送球やバットスイングを見て、息をのんだ。明日にもキャンプインできそうな感じ。ライバルの多い大リーグで生き残るためというだけでなく、オリックス時代から、何事にも用意周到だった。衝撃を受けた新人たちが、どんな状態でキャンプインするかが見ものである。

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