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トランプ氏、ドル高に警告

「ドルが高過ぎて米企業が競争できない。It's killng us(我々を殺している)」

米主要経済紙とのインタビューで、トランプ次期米大統領が、ドル高に警告を発した。そもそも、ドル高は、コアのトランプ支持層が働く製造業の国際競争力を弱める。保護主義傾向が顕著なトランプ政権は、ドル安政策を採るのではないか、との観測は根強く市場内に流れていた。それゆえ、ついにドル安政策標榜か、と市場は注目している。

この発言に呼応するように、トランプ政権上級顧問に予定されているスカラムッチ氏がダボス会議で、ドル高は注視する必要あり、と語っている。トランプ政権には、低中所得層に寄り添う象徴的行動が多いが、その意味で、ドル高の米国内への影響には注意せねばならない、との文脈である。ただし、ドルが高くなっても、1980年代に見られたように、米国経済が力強く成長して、世界経済を引き上げたこともある、とも述べている。

市場内にも、トランプ政権の積極財政政策が利上げペースを加速させる結果、ドル高になりやすい、との指摘は根強く残る。

なお、NY連銀ダドリー総裁も、17日に、ドル高が国内物価を抑制する効果に言及している。この発言は、あくまで、米国金融政策議論の中で、インフレ率が上昇しにくい要因として、ドル高を挙げたものだ。

ドルインデックスは、一時103の大台を突破していたが、100台まで下落している。

トランプ氏のドル高けん制発言が、今後、通貨安戦争を招く可能性も無視できなくなった。米国貿易赤字に関して、同政権は神経質になっており、通商面の摩擦も懸念されている。

ダボス会議で習近平中国国家主席は、通商戦争に勝者はない、と警告を発してみせた。足元では、中国からのマネー流出に歯止めをかけるため、中国人民銀行は人民元買い介入を強いられている。しかし、強すぎる人民元は、輸出抑制要因となる。共産党大会を控え、経済成長目標達成も重要だ。中国人民銀行も危うい綱渡りを強いられているのだ。

そして、日本にとっては、米ドル安政策ともなれば、円高バイアスがかかりやすい状況になる。今後、18~19日に予定されているムニューチン財務長官候補とロス商務長官候補の議会公聴会での発言も注目される。さらに、ツイッターで、トランプ氏が、ドル高問題に言及する可能性もあり、市場は目が離せない状況である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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