失敗しないロボット掃除機選び 自宅の1台、最適解は?

ロボット掃除機を選ぶときに各モデルの違いとして知っておきたいことがある。それが次の3点。これを把握しておけば、使用環境に応じたベストなロボット掃除機が選べるようになる。
多様なロボット掃除機、選ぶなら生活に合った1台を
ロボット掃除機の市場が広がり、国内家電メーカーからも相次いでロボット掃除機が登場した。さらに海外勢やベンチャー企業も参入している。今回は、多くのロボット掃除機の中から、自分の生活にあった一台を選ぶためのポイントを考えていこう。そのポイントは、次の3つだ。
・本体の大きさ、形状によって個性が出る
・動きを決めるナビ機能は大きく2種類に分かれる
・価格帯は7万円前後と、10万円前後の2種類
では、ひとつずつ見ていこう。
【ポイント1】本体の大きさ、形状によって個性が出る
ロボット掃除機はあまり丁寧に掃除しないのでは、という声をよく聞くが、現在発売されている主要なロボット掃除機なら、基本的な掃除能力は一定以上をクリアしている。部屋の真ん中にゴミがたくさん残っているといったことはほぼない。
とはいえ、課題はある。たとえば部屋の隅や角、そして、家具の周りに汚れが残ることは少なくないのだ。アイロボット社(セールス・オンデマンド)のルンバは、本体前方がバンパーとなっており、家具に軽く当てることでギリギリまで掃除できる。古いモデルでは、当たりが強いこともあり、家具に傷が付いたり、軽い家具を動かしてしまったり、倒してしまうということもあった。最新モデルではそれほど強く当たることはないが、それでも貴重な家具を使っている場合など、ロボット掃除機が家具に当たるのがイヤな方も多いだろう。
センサーを利用して家具にぶつからないようにしているロボット掃除機なら、衝突の心配は少ないが、その分、部屋の隅や家具ギリギリまでの掃除ができないこともある。
そんな中、センサータイプでも、もっとギリギリまで掃除したいと考えるなら、パナソニックの「ルーロ」がおすすめ。他にはない三角形のフォルムを採用し、部屋の隅まで入り込んで掃除できる。実際に使ってみたが、確かに角の汚れがしっかりと取れていた。どうしても部屋の隅が気になるという人には、「ルーロ」がおすすめだ。

パナソニックのルーロは部屋の壁際などを回るラウンド走行とランダム走行を自動的に組み合わせて動作。角に強いほか、ハウスダスト発見センサーを搭載しており、汚れが残っていないか確認しながら掃除してくれる。
このほか本体サイズ(幅)を小さくすることで、より狭い場所に入れるロボット掃除機も登場している。例えば、日立の「ミニマル」は幅25cmと一般的なロボット掃除機よりも一回り小さいサイズとなっており、ダイニングチェアの隙間などにも余裕で入ることが可能。家具が多く、狭い場所の多い部屋で使い勝手がいい。

【ポイント2】動きを決めるナビ機能は大きく2種類に分かれる
ロボット掃除機を選ぶ上で考えたい2つめのポイントは、搭載するナビ機能だ。これは、掃除する空間によって向き不向きがある。
例えば、リビングや寝室などを1部屋ずつ掃除する場合は、1部屋をランダムに動き回るタイプがおすすめ。同じ場所を異なる角度から複数回通過することで、キレイにするという仕組みだ。AIが毎秒ごとに周囲の状況や汚れを見ながら、室内をランダムに動き回って掃除する。その代表格が、アイロボット「ルンバ 876」。シリーズ中堅機だが、清掃能力は上位機とほぼ同等と高いため、掃除機能も信頼できる。

ただし、価格が少し高めなので、部屋が小さい場合や、家族が少ないため部屋がさほど汚れないのであれば、下位クラスの600シリーズも狙い目だ。
例えばマンションのように、家の中に階段がなく、複数の部屋をまとめて掃除したい家庭には、上位機種のアイロボット「ルンバ 980」など、マッピング機能を搭載するロボット掃除機が向く。ルンバ900シリーズでは、カメラを使って自位置を把握し、複数の部屋を効率良く掃除してくれる。掃除できるエリアが最大118畳(185立方メートル)に拡大されたので、一気に複数の部屋を掃除できる。ただし、それだけ価格も高くなる。

なお、カーペットの部屋が多かったり、ペットを飼っていたりして汚れが気になる場合は、吸引力が強いダイソンの「Dyson 360 eye」も選択肢。同社が生み出したサイクロンテクノロジーを採用しているため、強力にゴミを吸い込む。実際に使った経験では、カーペットのように埃(ほこり)が深く入り込んでしまう場所でも、その吸引力の高さをしっかりと体感できた。本体幅が小さいため、小回りが効く点も魅力だ。

ダイソンも360°カメラを搭載し、周辺を映像で撮影しながら自位置を把握し、地図を書きながら掃除するナビゲーションタイプ。このため、複数の部屋の掃除にも対応できる。バッテリー駆動時間は短めではあるが、ソフトウエアのファームアップにより長時間駆動ができ、動作音も抑えた「静音モード」を搭載。また、必要に応じて自動的に充電して掃除を再開してくれるので、実用上の問題はない。
【ポイント3】価格帯は7万円前後と、10万円前後の2種類
最後に、価格帯で選ぶ場合のおすすめモデルを紹介しよう。ロボット掃除機の価格帯は大きく分けると、7万円前後と、10万円超の2ゾーンに分かれる。
7万円前後は、前述のパナソニックの「ルーロ」や、東芝の「トルネオロボ」、そして、アイロボットの「ルンバ876」などが選択肢となる。
東芝の「トルネオロボ」の特長は、充電台に大型のダストステーションを搭載すること。ロボットが集めたゴミはこのダストステーションが吸い込んでくれるため、ロボット掃除機本体のゴミ捨てが不要だ。ダストステーションでは、ゴミを圧縮して保存するので、ゴミ捨ては1カ月に1回でよくなる。なお、動作はルンバと同じく、毎秒状況判断をしながらランダムに走行するタイプを採用している。

各社のフラグシップモデルが並ぶ10万円ゾーンに入ってくるのが、アイロボットの「ルンバ900」シリーズ、ダイソンの「Dyson 360 eye」、ネイトの「ネイト Botvac Connected」、日立の「ミニマル」だ。
ルンバ、ダイソンと同様の海外勢である、「ネイト Botvac Connected」は、北米No.2のロボット掃除機メーカーの最新モデル。最大の特徴は、独自のD字フォルムを採用すること。そのフォルムのおかげで、床面を掃除してゴミを吸引するブラシが約27.6cmと大きく、部屋を効率良く掃除できるのだ。また、ブラシ面が直線なので、壁際にピッタリと寄せて掃除できるのも特長。

ナビ機能は、レーザーで位置測位を行いマッピングする、SLAMテクノロジーを採用。カメラではなくレーザーを利用しているので室内が暗くても動作できるのが特長だ。
著者イチオシの掃除機は?
以上、掃除機を選ぶ3つのポイントについて説明したが、個人的に「これはおすすめ」と思うものについて最後にまとめておきたい。
汎用性が高いと感じているのが、パナソニックの「ルーロ」だ。家具が多く、広い空間の少ない日本の家庭事情に最もマッチしており、隅の掃除にも強い。本体が小さいため、ダストボックスが小さいなどの小さなマイナス点もあるが、それ以外は文句なし。「ルンバ 876」も、掃除性能、使い勝手のバランスに優れているという点でおすすめできる。
予算度外視で最高のモデルとなると、「ルンバ 980」を選びたい。他機種と比べて、掃除性能、ナビ性能ともに優秀。特に上部のカメラと底面のセンサーを組み合わせることで、暗い場面でも掃除できるなど、欠点のない出来となっている。
正直、一部屋の掃除精度は、同じ場所を複数回掃除する800シリーズの方が上回る場面もある。しかし、ワンフロアを効率良く掃除できるという点は魅力。もし予算的に厳しいというのであれば、下位機種の「ルンバ960」でもいい。違いは、カーペット敷きの部屋の掃除だけなので、もしカーペットがない家ならこれで十分。しかも価格は、10万円でおつりがくる。
以上、条件別におすすめ掃除機をご紹介した。しかし、いずれの掃除機でもいえるのは、それ一台で完結させるのは難しいということ。ハンディーにもなるスティック掃除機を別途用意し、ロボット掃除機が取り逃がしたゴミや微細な汚れなどは、サッと掃除するとストレスにもならない。ロボット掃除機を使う最大のメリットは、ロボットが走りやすく、掃除しやすいように、床にものを置かなくなることだといえる。ロボット掃除機を導入すれば、結果として、部屋は一定のきれいさを必ず保てるようになるのだ。
(デジタル&家電ライター コヤマタカヒロ)
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