2019年8月20日(火)

そのED薬は本物?偽造品がネットで横行

2017/1/13 6:30
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インターネット経由で販売される偽造医薬品への対策が急務となっている。ファイザー日本法人(東京・渋谷)など勃起障害(ED)治療薬を扱う製薬4社の調べでは、ネット経由で販売されるED薬の4割が偽造品だった。影響は購入者の健康被害にとどまらず、製薬会社の経済損失や医薬品のネット販売など多岐に渡る。

米ファイザーの正規品「バイアグラ」(右)と偽造品(左)。偽造品には防犯シールがない

米ファイザーの正規品「バイアグラ」(右)と偽造品(左)。偽造品には防犯シールがない

年102億ユーロ(約1兆2千億円)の経済損失と、およそ37万人の雇用機会を損失――。

EU知的財産庁監査部は2016年9月、偽造医薬品が与える影響を試算した調査を発表した。損失額は欧州製薬市場のおよそ4%にあたる。

国境を越えて医薬品が流通するEUと比べ、日本は健康保険の存在や流通網の信頼性の高さから、こうした偽造医薬品問題は優先課題にはなってこなかった。

それでも厚生労働省が14年度から始めた不正サイトの摘発数は、昨年度までに計2千件に及ぶ。税関での摘発数も、15年に10年前の100倍となる約1千件まで膨らんだ。

ED治療薬はその筆頭だ。取り扱う製薬4社の調査では、国内及びタイの販売サイトで取得した計70サンプルのうち、40%が偽造品だった。

有効成分が通常の1.5倍配合された薬もあり、服薬すると低血圧などの症状が出かねない。

ED薬大手も独自の対策を急ぐ。国内ではファイザーが「バイアグラ」の箱に、見る角度によって色の濃淡が変わる加工を施したシールを貼っている。

同社は韓国では箱に記載した数字をサイトで入力すると、製造経路が分かる仕組みを導入している。他社も欧米や中国でシリアル番号による製品管理を実施する。

多くの製薬会社は米国に偽造薬の対策拠点を置き、地域ごとの防犯策を一括で決めている。

世界でも医薬品の安全性が高い日本では、欧米向けと異なり「シリアル番号など高度な処理は施していない」(ED薬大手)のが実情だ。対策も「薬価のある日本では転嫁できない」(同)と費用面から進まない。

偽造薬に詳しい金沢大学の木村和子教授は「欧米では正規ルートにまで偽造品が流入している」と指摘する。

米国では00年代に偽造された高脂血症薬が20万本も出回り、一部の正規品が回収される騒ぎまで起きた。

そこで米国では法律により、23年までに薬品包装に2次元バーコードを付け、流通過程を管理することになった。各段階で認証し、記録されたデータと合致しないと流通網から外される。EUも11年に偽造品に絞った指令を出し、類似した規制を打ち出す。

こうした規制に適応できないと、医薬品の販売に支障が出かねない。

薬の乱用防止でも、米食品医薬品局(FDA)が麻薬乱用を防ぐ特殊な加工を施した鎮痛剤を推奨。錠剤を潰し、薬物として吸引できないようにした医薬品の販売が伸びるなど、市場変化が起きている。

昨年10月に米中堅製薬から乱用防止策を施した鎮痛剤の販売権などを得た第一三共は、「将来は既存製剤に代わる可能性がある」と話す。

国内製薬各社の海外進出も進み、薬の流通網は世界に広がっている。その分、偽造薬の潜在的な流入リスクは増しつつある。偽造薬対策の必要性を、改めて考える時期にきている。

(企業報道部 山本夏樹)

[日経産業新聞 1月13日付]

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