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ホープフルSと大阪杯、G1新設の舞台裏

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2017/1/14 6:30
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2017年の中央競馬が幕を開けた1月5日、日本中央競馬会(JRA)は、ある数字を発表した。昨年末に行われた中央、地方の重賞などのレーティング(競走馬の能力を数値化した指標)である。注目の的は、12月25日の有馬記念当日、前座で行われたG2の第33回ホープフルステークス(芝2000メートル)。JRAは今年の同レースのG1昇格を目指していて、今回の数字に成否がかかっていた。上位4頭のレーティングを平均した「レースレート」が110を超えれば、G1昇格の条件を満たす状況で、出た数字は110.5。ギリギリで条件を満たした形だが、疑問の残る数字だった。

ホープフルSは今年からのG1昇格が有力となった=JRA提供

ホープフルSは今年からのG1昇格が有力となった=JRA提供

疑念呼んだレーティング

レーティングは原則として、オープン(最上級)競走の上位馬に与えられる。数字を決める際は、既にレーティングを持っている馬が上位に入った場合、その馬を基準に、着差に応じて前後の馬の評価を機械的に算定することが多い。数字はポンド表示(1ポンド=453グラム)で、着差が半馬身なら1ポンド差が一般的だ。全馬が同じ斤量のレースで、110の数字を持つ馬が3着に入り、2着馬と半馬身差、勝ち馬と2馬身差なら、勝ち馬は114、2着は111といった具合に算定する。

両新設G1のレーティング(過去3年)
大阪杯
2014年RRFR
1キズナ121121
2トウカイパラダイス111111
3エピファネイア115129
4カレンミロティック111116
119.25
15年
1ラキシス115115
2キズナ116116
3エアソミュール111111
4スピルバーグ112115
114.25
16年※
1アンビシャス115116
2キタサンブラック118123
3ショウナンパンドラ112112
4ラブリーデイ113117
117.0
ホープフルS
14年RR
1シャイニングレイ112
2コメート109
3ブラックバゴ109
4ソールインパクト108
109.5
15年
1ハートレー114
2ロードクエスト112
3バティスティーニ109
4ブラックスピネル108
110.75
16年
1レイデオロ114
2マイネルスフェーン111
3グローブシアター109
4ベストリゾート108
110.5

(注)RR=レースレート、FR=ファイナルレート。※は暫定値

ところが、ホープフルステークスでは過去に数字を持っていたのがアドマイヤウイナー(101=札幌2歳ステークス3着)と、サングレーザー(106=デイリー杯2歳ステークス3着)の2頭だけ。圧倒的1番人気を集めたレイデオロは2戦2勝だが、2戦とも数字のつく対象でなかった。レースはレイデオロが馬群をスイスイとすり抜けて楽勝。問題は2着以下で、2着マイネルスフェーンは初勝利に6戦を要し、当日は8番人気。3着グローブシアターは期待馬だが1戦1勝。4着ベストリゾートも2戦目に初勝利をあげたばかりで、3頭ともオープンで実績がなかった。数字を持っていたサングレーザーは5着。アドマイヤウイナーは11着と崩れた。

レイデオロは今春のクラシック候補と期待されるが、負かした相手の質は高くない。難しい判断となったが、今回はレイデオロに114という高い数字を与え、2着以下は111、109、108とした結果、上位4頭は平均110.5。G2の5着以下は非公式な数値となるが、106だった5着サングレーザーが107と1つ上がった。昨年の2歳世代最高が、G1の朝日杯フューチュリティステークス(FS)を勝ったサトノアレスの115だった点からも、レイデオロの114の高さがわかる。しかも、未勝利を勝ったばかりの2着馬が、G3を2勝したブレスジャーニーと同じ111となる不均衡も生じた。サングレーザーを106のままで基準にした場合、上位4頭の数字も1ずつ削られるが、この場合、4頭の平均値は109.5で、G1昇格の基準を満たせなくなる。「G1昇格を強行するための、"盛った"数字では」との疑念が生まれるのは、こんな事情ゆえだ。

朝日杯移設の"代償措置"?

JRAとしては、どうしてもホープフルステークスをG1に昇格させたい事情があった。今年は年末の開催日程を変更。有馬記念4日後の12月28日(木曜)に年間最後の開催日を組んだ。企業や官公庁は正月休み前。集客・売り上げ面の苦戦は必至だけに、せめてG1の看板をかけて興行的な目玉をつくりたい。しかも、同レースのG1昇格には、一種の苦情処理の意味もあった。

朝日杯FSは13年まで、中山競馬場で施行されており、有馬記念と並ぶ暮れの開催の目玉だった。ところが、中山の芝1600メートルは、16頭しか出走できない(多くのG1は最大18頭)うえ、枠順の内外による有利不利も大きく、「G1にふさわしくない」という意見が強かった。そのため、JRAは14年から同レースを阪神に移設(距離は同じ)。阪神は広くて直線も長く、同じコースで行われる2歳牝馬G1・阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)優勝馬から、ウオッカ、ブエナビスタ、アパパネなどの名馬を輩出した。その点で、移設は合理的な決定だったが、問題は中山にかかわる人々の不満だった。中央の10競馬場には場ごとの馬主協会があり、一種の利益代表として動く。朝日杯の阪神移設は、中山の馬主協会にすれば、G1を「奪われた」格好に映り、JRAとしても何らかの代償措置を考えざるを得ない雰囲気だった。12月28日の開催は、中山馬主協会が以前から積極的に進めていた案件で、28日開催実現とG1新設で帳尻合わせを図った形と言える。

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