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青学大、黄金時代到来の予感 勝てる組織の礎築く

史上6校目の箱根駅伝3連覇

今年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)は青学大が史上6校目となる3連覇を果たして幕を閉じた。昨秋の出雲駅伝、全日本大学駅伝と合わせて大学駅伝3冠も達成。他の追随を許さない圧倒的な強さは黄金時代の到来を予感させる。

4年生に甘さ、あえて突き放す

3年連続で総合優勝を果たし、喜ぶ青学大の選手ら=代表撮影

「13年間少しずつ積み上げてきた伝統が花開いた」。偉業を成し遂げた後の記者会見で原晋監督は万感の思いを口にした。3年連続で2区を走ったエース一色恭志でトップを奪えなかったが、3区秋山雄飛が今季不調だった不安を一掃する快走で首位に立ち、復路では脱水症状のアクシデントに見舞われた7区田村和希を8区下田裕太が区間賞の走りでカバー。一色が「一昨年は厳しさ、昨年は(個々の)走力、今年はチームの総合力で勝った」と振り返ったように、過去2年とはひと味違う王者の駅伝だった。

実は神野大地(現コニカミノルタ)らが抜けた今季は戦力の低下が懸念されていた。主将の安藤悠哉や一色らは先輩に引っ張られて成長してきた半面、最上級生になって甘さがあったという。そこで原監督は4年生をあえて突き放した。「彼らは強い世代にひっついて2連覇した。最強世代の後ろに隠れてやっていれば優勝できるという甘えを払拭したかった」。就職活動ひとつを取っても手を差し伸べることはせず、一般学生と同じように自分で勝ち取る意識を植え付けさせた。その結果、選手に自覚が芽生えて頼もしさが増し、チームの結束も強固になった。

中京大出身の原監督には箱根駅伝の経験がない。中国電力では営業担当としてサラリーマン生活を送っていた異色の経歴の持ち主だ。だからこそ2004年の就任以降、陸上界のあしき因習にとらわれることなく改革を進めることができた。当時の青学大は箱根駅伝の予選会で敗退続き。専用のグラウンドがなく、強化費も他大学より少なかった。そんな時代から一貫して続けてきたのは「私がいなくても未来永劫(えいごう)強くいられる組織づくり」だという。

選手と距離置き、自主性引き出す

雄たけびをあげてゴールする主将の安藤=柏原敬樹撮影

青学大には先輩後輩の厳しい上下関係がなく、寮生活でも雑用は学年関係なく分担。アットホームな空間は各学年の壁を取り払い、組織の風通しをよくしている。指導も一方的に上から押しつけるものではなく、「いい意味」で選手と距離を置き、自主性を引き出す。毎月各自が目標を定めて話し合うミーティングはその好例だ。

原監督が学生とともに寮生活を送っていることも強さを支える一つの要因だろう。選手が本番で実力通りの力を発揮できるのは、日ごろから食事や朝練習に欠かさず顔を出して、学生のささいな変化を読み取っているから。「これから調子が上がるか下がるかわかる。それが(本番で)ブレーキしないことにつながっていると思う」。寮母を務める妻の美穂さんも学生にとっては良き相談相手で、「監督の監督ですね。私以上に選手から信頼されている。彼女抜きで3連覇と3冠はありえなかった」と原監督は感謝の言葉を並べる。

09年に33年ぶりの箱根駅伝に出場を果たし、翌年から毎年シード権を獲得してきた。そして今回、史上初めて箱根3連覇と大学駅伝3冠を同時に達成。勝てる組織の礎を築いた。

エースの一色(中央)は3月のびわ湖毎日マラソンに出場を予定している=代表撮影

青学大は次に何を目指すのか。原監督にはもう一つの使命がある。それは東京五輪に一人でも多くの選手を送り込むことだ。青学大では箱根駅伝を終着点にせず、マラソンにも積極的に参加させている。「夏合宿の一番最初のミーティングでマラソンに挑戦したい選手は手を挙げろというところから始まる」

「学生から陸上界の流れ変えたい」

今年も2月の東京マラソンで下田と中村祐紀、3月のびわ湖毎日マラソンで一色が出場を予定する。どちらも今夏の世界選手権(ロンドン)の選考会を兼ねていて、一色は「マラソンでしっかり結果を残したい。(代表を)勝ち取りたい」と闘志を燃やす。

低迷が続くマラソン界は長距離・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏を中心に強化体制を整えた。それを支える覚悟だ。今まで通りのやり方ではマラソン復活はないと主張する原監督は「実業団はだらしない。意欲的にチャレンジさせて学生から陸上界の流れを変えていきたい」と語る。箱根を経由して世界へ。青学大を強豪に仕立てた指導者の野望は尽きない。

(渡辺岳史)

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