/

残業ゼロでも残業手当 効率勤務に報いる

求人広告のトーコンホールディングス(東京・中央、原田直史社長)は社員の残業時間がゼロでも、月に30時間分の残業代を支払う制度を導入した。残業時間の削減に取り組んできたが、単純な時間給だと、効率的に働いて残業を減らした社員の方が、残業時間が多い社員より給与が少なくなるという矛盾が起きるためだ。

「残業時間は以前の半分に減った」求人広告の営業を担当する大南優花さん(26)は嬉しそうに話す。昨年7月、神奈川県の企業を担当するチームに配属になったのを機に、週2回ほど同県にある自宅から営業先に直行する。外出先でパソコンで仕事をし、そのまま自宅に直帰するように働き方を変えた。

以前は自宅から東京・日本橋ある本社に1時間半かけて通い、日中に顧客企業を訪問。終わった後は再び本社に戻っていた。「会社で長く仕事をしてしまう」結果、帰宅は午後9時半~11時になることが多かった。

現在は前日か当日の朝に上司に連絡すれば、必ずしも会社に出勤する必要がない。大南さんは顧客訪問を特定の曜日に固めて、直行直帰できる日を増やすように自身のスケジュールを調整する。

こうした働き方は同社が残業時間削減に取り組んでいることで実現している。会社でしかできない仕事は他の社員にお願いするなど、チームで協力し合う風土も生まれつつある。

トーコンは昨年10月、月の残業時間が30時間以内に収まった場合、何時間働いたかに関わらず、30時間分の時間外賃金を支給する新制度を導入した。もちろん仕事が多くて残業が30時間を超えた場合は実際に働いた時間分を支払う。

しかし、もし残業時間をゼロまで減らしても30時間分の残業代がまるまる支払われる。「効率的に働けば働くほど得になる」仕組みだ。1年ほど前に結婚したばかりという大南さんは早く帰れるようになり、「夫に夜ご飯を作ってあげる機会が増えた」と笑う。

原田社長は新制度の狙いについて「効率的な働き方をする人ほど時間あたりの手取りが増えるようにしたい」と説明する。短い時間で効率よく働く社員の評価が高まるように人事制度も改めた。半年ごとに実施する人事評価の基準を5段階から11段階にきめ細かくした。最も低い「Cマイナス」「D]の評価になると翌期の賃金が減少する仕組みだ。評価指標として「時間当たり粗利益」も導入。生産性の高い社員ほど評価が上がりやすい。

残業をする際には、事前に上司にメールで仕事内容と時間を申請することを義務付けた。社員同士で知識やノウハウを共有するため社内SNS(交流サイト)も活用。かつて深夜残業も当たり前だった同社だが、一連の取り組みで平均残業時間は2年前の月40時間から25時間まで減った。

今回の賃金制度の改定は生産性の高い働き方をした社員を収入面でも報いる狙いがある。求人広告業界は顧客の要望に合わせて広告内容を考えたり、チェックしたりする業務があり、一般的に労働時間が長いとされている。

同社の従業員数は約230人。原田社長は「中小企業が優秀な人材を集めるには働きやすい職場環境が不可欠。社員の生産性が高まれば、結果として業績も上がる」と話す。同社の売上高は26億円で年10~20%ペースで伸びているという。

人事評価制度を手掛けるあしたのチーム(東京・中央)の高橋恭介社長は「電通の社員の過労自殺問題を受け、中小企業でも働き方改革が急務だ。同社のように人事評価に生産性指標を取り入れたり、賃金がマイナスとなる査定制度を導入したりすることは有効だろう」と指摘する。

(企業報道部 鈴木健二朗)

[日経産業新聞2017年1月6日付]

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません