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世界フィギュア女子代表、この3人ならやれる

フィギュアスケート選手にとって、クリスマスといえば全日本選手権。2018年平昌冬季五輪出場の枠取りがかかる世界選手権(来年3月29日~4月2日)の代表が決まった。初めてリンクの外から観戦して「この緊張感はいいなあ」と懐かしかった。演技前は緊張して怖い。ドキドキとワクワクが交差して、「僕も選手たちのように生き生きしていたんだろうな」とうらやましかった。けれど、現役に戻る気はないですが……。

女子で3連覇した宮原(中央)。左は2位の樋口、右は3位の三原=共同

全日本、女子の強さ変わらず

女子がすごかった。どうしてか、昔から全日本は女子の方がいい。今季は最終グループは3位の三原舞依(神戸ポートアイランドク)以外は皆、1つはミスをしたものの、全体を通してみればほぼミスをしなかった。世代が変わっても、女子の強さは変わらない。

最近の女子はスケーティングにスピードがある選手が増えた。やはり速いと見栄えがする。中でも、三原と4位の本田真凛(関大中・高スケート部)と7位の坂本花織(神戸ポートアイランドク)は、それだけで目を引く。三原はジャンプの安定感とスケーティングの速さが完璧だった。まだ表現面ではシニアに上がったばかりだなと感じるが、ここは伸ばしようがある。

今回も浅田を見たい人は誰よりも多かったと思う=共同

混戦模様だった女子。1位の宮原知子(関大)と2位の樋口新葉(東京・日本橋女学館高)は抜けていた。技と技のつなぎの部分のトランジションで、ただ滑るのでなく、難しいことをチョコチョコしている。一番難しいことをしていた知子は今季、難しいことをしてもスピードが落ちなくなった。こうしたところで点数を細かく稼げるから、強い。樋口も難しいトランジションを入れながら、ジャンプの質も高い。ただ、フリーはスピード感がやや落ちた気がする。

宮原、樋口、三原と10代3人で臨む世界選手権で、僕は平昌五輪の枠取りはそう心配していない。3人とも大きく崩れる感じがしないから。たぶんフリーで最終グループ6人に残っても、初出場の樋口、三原はそこそこまとめると思う。平昌五輪に最大の3選手を送るには、日本勢上位2選手の順位の合計が13以下であることが条件。ライバルはロシア勢を筆頭に、米国勢、カナダになることが予測される。この3人なら、やると信じたい。

高橋大輔氏=Seitaro Tanaka撮影

12位だった浅田真央(中京大)の心中はわからない。長年トップにいて、今年初めて世界選手権にいけない経験をして、ダメージは大きいと思う。ただ、彼女がどのようなスタンスでスケートをしているか? 僕は試合で勝てなくなって引退を決めたけれど、真央が「試合にチャレンジするのが好き」「納得いくまでやりたい」と思っているなら、競技人生に悔いが残らないよう続けた方がよいと思う。スケーティングは別格にうまくても、ジャンプが跳べなくなってきて試合が厳しくなっているのはわかっているはず。それでも戦う姿は見たい。

今回も真央を見たい人は誰よりも多かったと思う。これが、多くの指導者が「これを教えるのが一番、難しい」と口をそろえていう「華」。本田もそれを持っていると思う。昔も今も妖精のような魅力を振りまく真央はこの点でも異次元の選手。マネしたくてもできない。

中学生におもしろい存在がいる男子だが、今大会では、上位と中間層以下との差が大きかった。今、世界で勝負するには、4回転ジャンプを跳べた上で何ができるかという時代。特に、シニア男子はスケーティングに迫力がないと勝負にならない。パトリック・チャン(カナダ)を世界の頂点とする、迫力あるスケーティングは欠かせない。そんなスケートを見せたのが上位3人、宇野昌磨(中京大)、田中刑事(倉敷芸術科学大)、無良崇人(洋菓子のヒロタ)だった。

宇野のピーク、少し早すぎたか

宇野の良さはプログラムの流れが途切れないこと=共同

昌磨はピークがちょっと早すぎたかなと思う。「(大阪に)来る前の練習から調子がよかった」と言っていた。現地入りしてちょっと落ちたのかもしれない。羽生結弦(ANA)が欠場して注目を一身に集めたこともあるだろう。本人は「全く変わらない」と言っていても、周りの対応が違うから、肌では変化を感じていた可能性は大きい。公式練習からかみ合っていないように見受けられた。ジャンプを飛ぶ際のコースなど、周りの選手とのリズムが合ってなく、緊張からかいい流れじゃなかったように感じた。そういったときはうまく集中しきれていない場合がある。

昌磨の良さはプログラムの流れが途切れないこと。全日本では、4回転ジャンプはきれいに決まらなかったけれど、それでも流れが切れなかった。簡単そうで、非常に難しい。プログラムの隅々まで神経を巡らしているからできる。だからジャンプでミスしても、点が出る。

ジュニアからシニアに上がった選手は、イケイケの勢いで結果を残しても、シニア3年目あたりで一瞬、崩れることがある。その点も昌磨は大丈夫な気がする。結弦がいるから。追いかける対象がいるのは大きい。余計なことを考えなくていい。試合に臨むにしても「○○に勝ちたい」と「○○に負けないようにしなきゃ」では、メンタル的な負担がかなり違う。そう考えると、結弦の大変さがわかるでしょう?

来年の四大陸選手権、世界選手権ではアイスダンスの村元哉中、クリス・リード組(木下ク)も注目してほしい。クリスはアイスダンスで過去2度五輪も出場したが、哉中はもともとシングル選手。哉中はジャンプが苦手だっただけで、素晴らしく踊れる選手だった。清潔感のある色気があって、上位を目指して頑張ってもらいたい。

今大会、しみじみ再認識したのは、得点につながる表現のうまさと、心をつかむ演技は別物ということ。ジャンプがなくてもいい演技はいっぱいあった。真央、村上佳菜子(中京大)がそうだし、樋口、宮原、本郷理華(中京大)、昌磨のショートプログラム(SP)も僕は好き。得点に出ない部分を感じて楽しむのも、フィギュアの見方の一つです。

(バンクーバー冬季五輪銅メダリスト)

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