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アストロズ青木の心意気にみる「侍」の原点とは

編集委員 篠山正幸

日本人大リーガーとしていち早く、来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への参戦を決めた青木宣親(34、アストロズ)は日本の世界一奪還のカギを問われ「自信を持って戦うこと」と語った。新天地での地歩を固めたい時期にもかかわらず、代表に献身する心意気そのものが、侍たちの戦いのカギになるだろう。

ヤクルト時代の2006年、09年と創設当初のWBCに2大会連続で出場、日本の連覇に貢献した青木にとって、17年の第4回大会は2大会ぶりの出場となる。

この間、代表の顔ぶれはがらりと変わった。20日に発表された第1次発表の国内18選手はいずれも青木より年下で、目下最年長となる。

チーム内の立場も大きく変化するとみられ、加えて自身の"異動"という落ち着かない要素もある。マリナーズからアストロズへ。メジャー6年目の来季、新しいチームでのポジションを一から築き上げなければならない。

本来なら自分のことだけを考えていたいところ。にもかかわらず、侍ジャパンにはせ参じた真意はどこにあるのか。

日本人であること、米国で強烈に意識

「アメリカで5年間やってきて、なんかこう、すごく日本人だということを意識させられる。そういった場面がすごく多い。自分としても日本代表の話をもらったときにぜひとも出たい、力になれるようにやりたいと思った」

21日、古巣ヤクルトの本拠地、神宮球場のクラブハウスで会見した青木はそう語った。

メジャーでプレーしていると、確かに「国家」を意識せざるを得ない場面が多いようだ。

試合前の国歌斉唱はもちろん、試合中に歌われる「ゴッド・ブレス・アメリカ(米国に神の加護あれ)」にも、そこがアメリカであることを実感させられるばかり。メジャーでプレーする以上、当然のことで、米国の選手は意識すらしないだろうが、中南米、あるいはアジア出身選手ら「異邦人」にとっては自国・地域への思いを強くする時間になるかもしれない。

「アメリカで5年間やってきて、日本人ということを意識させられる」と青木=共同

始球式に退役軍人を含む軍関係者や、沿岸警備隊などの関係者らが招かれることも多く、ごく当たり前に国家色のある演出が挿入される。今年7月には初めて米軍基地のなかでメジャーの公式戦が行われ、ブレーブスとイチローの所属するマーリンズが戦った。

そうしたなかで、米国出身でない選手が「いつか自国の国旗のもとで、自国の国歌を歌ってプレーしてみたい」との思いを募らせたとしても不思議ではない。

今夏、米国出張の折にWBCへの参加の意向を尋ねたところ、米国出身選手が積極派、消極派まちまちだったのに対し、中南米系はおおむね意欲的だった。

「故郷を代表してプレーできる貴重な機会。選ばれたら出たい」(カルロス・ベルトラン=プエルトリコ出身、取材時はヤンキースだったが、17年はアストロズ)「おれにはドミニカ共和国の血が流れている。WBCに出るならドミニカ共和国しかない」(マニー・マチャド=オリオールズ)

マチャドはフロリダ出身で米国からも出られるのだが、ルーツを持つドミニカ共和国から出たいといった。

ひごろ、普通にプレーすればそれがそのまま国家への奉仕になりうる米国の選手と違い、外国人選手がその願いを満たそうと思えば、WBC以外にその場はない。

WBCが行われる3月はシーズン開幕前のキャンプ、オープン戦の期間に当たり、新人や移籍選手にとっては新天地での足場固めをしなくてはいけない時期だ。青木も例外ではない。しかし、不安はないかと問われてこう語った。

「日本代表で出ること」が重要

「全然ない。メジャー6年目だし、ましてや新天地も5チーム目。(トレードなどが活発な)メジャーで移籍することに自分も慣れたし、相手も移籍してくる人に対して慣れているので時間は必要ない。ある程度メジャーの流れはわかっているし、そんなに不安なく自分はやれると思っている。(チームと一緒に)いるにこしたことはないが、日本代表で出ることの方が自分のなかでは勝っていた」

青木の参戦が決まり、小久保裕紀・代表監督は「日本の野球界のために力になれるのであれば、喜んで参加しますといってくれた青木選手の思いを大変うれしく、心強く感じている」とのコメントを出した。

ここに侍ジャパンの「原点」が示されている。

06年の第1回WBCで日本代表を率いた王貞治監督(ソフトバンク球団会長)を悩ませたのは選手選考だった。海の物とも山の物ともわからない大会へ、選手を巻き込むことへのためらいがあったそうだ。自身、ホークスの現役監督の身でありながら指揮を執ることに対する迷いもあったという。

そこで選手招集の決め手になったのは「とにかく日本のためにプレーしたい」という気持ちだけだったそうだ。

気持ちはやまやまでも球団からストップがかかったとみられるケースなどがあり「不参加=選手の意向」でなかった点は強調しておくべきだろう。

ともあれ、第1回大会のあの絶望的とも思える状況からの決勝トーナメント進出、そして王者へという奇跡はひとえに選手の「思い」がもたらしたもの、といっても過言ではなかった。

とにかく日本のために……。そうした思いの総和で日本代表が成り立っているということを、青木の姿勢は思い出させてくれた。

すでに発表されている内川聖一(ソフトバンク)筒香嘉智(DeNA)秋山翔吾(西武)鈴木誠也(広島)という外野陣のなかでどういう起用になるかわからないが、青木の参戦の重みは戦力上の単純な足し算で計られるものではない。

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