球場が呼んでいる(田尾安志)

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非情トレード、今も昔も 出番つかむ難しさ

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2016/12/25 6:30
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お世話になった人たちに名古屋で連日送別会を開いてもらい、あっという間に2月1日のキャンプイン。高知・春野のキャンプ地に乗り込んだところ、たちまちカルチャーショックを受けた。さすがは広岡達朗監督率いる西武、全員が翌日開幕してもいいくらいに仕上がっている。勝手知ったる中日なら慌てず、徐々にペースを上げていくところだが、何せ西武では新参者。実力のほどを見せなければと、こちらもエンジン全開でいった。

これがよくなかった。送別会ラッシュで自主トレの仕上げがおろそかになったことが響き、体が対応しきれない。守備練習で右翼から内野に向かって思い切りボールを投げた際、左肘を痛めてしまった。影響は打撃にも及び、痛みが気になって思うように内角球を打てなくなる。結局、この年の打率は2割6分8厘。連続3割が途切れた背景にはこういうことがあった。

オリックスから阪神に移籍した糸井(右)の決断にはチームの成績も影響したかもしれない=共同

オリックスから阪神に移籍した糸井(右)の決断にはチームの成績も影響したかもしれない=共同

森祇晶監督が就任した86年も打率が伸び悩み、106試合の出場にとどまった。広島との日本シリーズは1分け3連敗からの4連勝で自身初めての日本一に輝いたものの、もっと出番が欲しかったので、根本陸夫管理部長に「トレードに出してくれませんか」とお願いした。いろいろと動いてもらった末に決まったのは阪神。女房が今度は「芦屋夫人って呼ばれたいな」と目を輝かせたのを覚えている。

現役生活の岐路で移籍選ぶか否か

85年に日本一、86年に3位だった阪神だが、私が在籍した87年からの5年間は6位、6位、5位、6位、6位。これはしんどかった。Bクラスのチームの選手は自分の存在価値がだんだん薄れていくように感じるもの。優勝争いをしているチームなら年間100打席でも大きな価値があると感じられるが、クライマックスシリーズがなかった当時、Bクラスのチームは早々に目標を失い、「自分の安打がどれだけの仕事になるのだろうか」と思うことがあった。今年FA宣言した糸井がいたオリックスは昨年が5位、今年は6位。阪神行きにあたっては、そのあたりも考えたのかなとも思う。

もっとも糸井のようなレギュラーはまだいい。問題は控えのベテラン。優勝の芽がなくなった時点で球団は若手を育てることに主眼を置き、年齢のいったベンチウオーマーの出番はみるみる減っていく。だからといって、ベテランが他球団に活躍の場を求めたところで試合に出られるかどうかはわからない。

桧山進次郎や関本賢太郎は力が衰えていく中で阪神にとどまり、やがて代打の切り札の地位を築いた。現役生活の岐路に立って移籍を選ぶのか、思いとどまるのか。現役を退くべきときはいつか。日々、決断を迫られる中で生き残りを懸けるベテランの姿を、来年も追っていきたい。

(野球評論家)

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