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プロジェクションマッピングでATM製造

OKIがATMの生産工場でIT(情報技術)を活用した生産改革をすすめている。作業内容の指示や部品管理にプロジェクターや監視カメラを使い蓄積したデータを分析、部品の置き場や動線を見直して生産効率を1.5倍に高めた。成長をけん引していた中国向けATMの販売が低迷するなか、生産現場の効率を改善しコスト圧縮を図る。

富岡工場(群馬県富岡市)ではATMの核となる紙幣認識装置のほか、釣り銭機や発券機を製造する。銀行や鉄道会社など顧客企業の要望に合わせた機器を納入するため、少量多品種の生産体制を整えている。OKIは5月に組み立て用の作業台ごとに新システムを導入。個別の台ごとに作業員の動きの無駄をなくして業務効率の改善につなげる。

IT機器の低価格化がすすんだことで工場への大量導入がしやすくなっているのも背景だ。利用するのはプロジェクターと監視カメラだ。組み立て作業中に、台の目の前にある部品棚で次に選ぶべき部品が入った区分けが点滅。机の上には組み立て順序を説明する動画や指示書、「ねじの方向注意」など注意事項が映し出される。

組み立て工程を一つ終えて手を注意事項のところにかざすと、次に選ぶ部品棚が点滅する。間違ったところに手を入れると赤信号がともる。手の動きをカメラが捉え、部品棚に手を入れたかを画像認識技術で検知する仕組みだ。物体に映像を投映する「プロジェクションマッピング」で、熟練した作業員でなくてもスムーズに作業できるよう指示を出す。

作業台の部品ピックアップシステムは富岡工場で3年前からつくってきた。だが今まで利用していたのはLEDライトやセンサーで、配線が複雑で費用も高い。5月から始めたプロジェクションマッピングは「4分の1程度のコストで導入できる」(生産技術部長の白崎吉則氏)という。16年度内には全体の4割にあたる作業台160台にプロジェクターやカメラを設置する予定だ。

動画を保存することで、どの作業に時間がかかっているか後で分析もできるようになった。同時に米マイクロソフト社の動作センサー「キネクト」を使い、骨格の動きを取得する検証を開始。手の動きを分析して部品を置く位置などレイアウトを変更した。部品を探す手間や移動量を少なくして1人あたりの作業効率を上げた。

富岡工場はATMの心臓部である紙幣認識ユニットを製造する。海外向けも含めて1日で最大200台程度の生産能力があり、ピーク時はフル稼働が続いていた。一方、近年は中国で国産メーカーとの競争激化で販売環境は逆風が吹く。17年3月期の売上高は前期比5%減の4650億円を見込み、踊り場を迎えている。作業工程の見える化など現場の生産改革が急務となっている。

(企業報道部 薬文江)

[日経産業新聞2016年12月22日付]

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